@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00004070, author = {三井, 真吾 and ミツイ, シンゴ and MITSUI, Shingo}, month = {2016-02-26, 2016-02-17}, note = {スイスのジュネーブにあるCERN ( 欧州原子核研究機構 )では、2009 年より陽子-陽 子衝突型加速器のLHC ( Large Hadron Collider )が稼働している。現在、重心系エネルギ ーは8 TeV、瞬間最高ビーム輝度は7.73×1033 cm-2s-1 を達成しており、2021 年頃までの 積分ビーム輝度は350 fb-1 となる予定である。2022 年以降は、瞬間最高ビーム輝度をLHC の5 倍に上げ、2030 年までに3000 fb-1 を蓄積するHL-LHC ( High Luminosity - LHC ) が計画されている。LHC の汎用検出器の一つとしてATLAS ( A Toroidal LHC ApparatuS ) があり、ヒッグス粒子や超対称性粒子の探索などを目的としている。ATLAS の内部飛跡 検出器は内側から、ピクセル検出器 ( PIXEL )、シリコンマイクロストリップ検出器 ( SemiConductor Tracker、SCT )、遷移放射ストローチューブ型飛跡検出器 ( Transition Radiation Tracker、TRT )で構成されている。HL-LHC では、最内層のピクセルセンサー は最大で約2×1016 1-MeV neq/cm2、マイクロストリップセンサーは約1×1015 1-MeV neq/cm2 の放射線照射が見込まれる。本研究では、HL-LHC のような高頻度高粒子密度で も運用可能な、高度放射線耐性を持つn-in-p シリコンストリップセンサーとピクセルセン サーを設計開発し、放射線損傷の評価を行った。また、TCAD を用いてn-in-p シリコンセ ンサーの放射線損傷のシミュレーションを行った。 n-in-p シリコンセンサーは、FZ 法の6 インチウエハーを用いて浜松ホトニクス社で製 造した。ストリップセンサーは、9.75×9.75 cm2 の大面積メインセンサーで、高粒子密度 環境用に2.39 cm のショートストリップを持たせ、4 つのセグメントに分けた。上部2 つ のセグメントはセンサーエッジと平行な”axial” ストリップで、下部2 つは40 mrad の角 度を持たせた”stereo” angle ストリップである。ピクセルセンサーは、ATLAS PIXEL セ ンサーのFE-I3 用のバッチ#1 と大型のFE-I4 用のバッチ#2 がある。バッチ#1 の320 μm 厚のウエハーでn-in-p とp-in-n センサーを作り、いくつかのn 型ウエハーは200 μm に 薄型化した。それらウエハーの周辺にはミニチュアセンサー・ダイオードを置き、1×1016 1-MeV neq/cm2 まで陽子線を照射して放射線損傷によるセンサー特性の変化を調べた。 試験サンプルは、4×4 mm2 ダイオード (Slim Edge、Multi Guard)と10×10 mm2 ミニ チュアセンサー (新型Punch Through Protection (PTP)、p-stop 電位評価用)で、厚さが 150、200、320 μm となる。ミニチュアセンサーには電極間分離構造が施されており、ス トリップ間にp+をインプラントしたp-stop と、表面にp+をスプレーしたp-spray がある。 センサーのエッジには、電場の上昇を抑える目的でp+ ( p-edge )またはn+ ( n-edge )をイ ンプラントした。 試験サンプルの陽子線照射試験を東北大学のCYRIC において、2010 年7 月と2011 年 2 月に行った。陽子線のエネルギーは70 MeV で、最大1×1016 1-MeV neq/cm2 まで照射を 行った。これらのサンプルを用いて放射線損傷の評価を行った。 まず、センサーサンプルの静電容量を測定し、全空乏化電圧を評価した。1×1015 1-MeV neq/cm2 におけるアニーリング後の全空乏化電圧が約-600 V となりn 型のoxygen rich FZ と同様となった。そのため、6 インチのFZ 基板はoxygenated と同等のoxygen が入って いる可能性がある。次に、暗電流の放射線量依存性から、損傷係数を評価した。アニーリ ング前において、4.6 (± 0.1)×10-17 A/m となり、n 型の値と大きく異ならない。暗電流の 温度依存性よりエネルギーギャップEg を評価すると、Eg=1.21 eV となりn 型の値と一致 した。これらの結果から、バルク部の放射線損傷は、p 型とn 型は同様であると言える。 シリコンセンサーの不感領域を減らすために、1000 V に耐え得るエッジ幅を調べた。バ イアスリングからダイシングエッジまでのインプラントを除いた距離をField width と定 義し、耐電圧との関係を調査した。その結果、p 型、n 型サンプルともに1000 V 以上の耐 圧を得るには約450 μm 以上のField width が必要であると結論付けた。 1000 V の耐圧を得るために必要なGuard Ring の数や幅を調べた。測定の結果、Single Guard Ring は非照射時においても十分な耐圧を示し、照射後は最良となった。またField width を最大に稼ぐためにもSingle Guard Ring 構造が望ましいと言う結論を得た。 ホットエレクトロン撮影を行ってマイクロ放電が起きている位置を特定した。赤外線に 感度のある背面入射型冷却CCD カメラを用いて撮影を行った。その結果Guard Ring の 数や幅、放射線量に関わらず、全てバイアスリング ( n インプラント )でマイクロ放電が 起きている事が分かった。これは表面電荷によるものと考えられ、TCAD シミュレータの 結果と比較する事により評価した。 Punch Through Protection (PTP)は、ビームロスなどによる大電流からAC 結合キャパ シタを保護する機構である。バイアスリングと同電位のAl を延長した5 種類の構造につ いて評価を行った。延長Al の最も長いフルゲート型は、抵抗値がバイアス抵抗の半分と なるテスト電圧Vpt が-100 V 未満、達成抵抗値が20 kΩ 以下となり最も良い結果を示し た。照射後は、Vpt、達成抵抗値ともに上昇したが、この変化は、TCAD により評価した。 電極間分離の評価のために、ストリップ間抵抗の放射線量依存性を測定した。照射量が 増加するとストリップ間抵抗は減少した。これは、ストリップ間の暗電流の増加により、 実際のストリップ間抵抗が減少するためである。 p-stop 構造での電場強度を評価するために、p-stop 電位の放射線量依存性を測定した。 放射線量が増えるとp-stop 電位は表面電位に近付いた。これは、放射線損傷による表面電 荷の影響であると考えられる。また、この時の電場強度はTCAD による見積もりを行った。 さらにβ 線を用いた収集電荷量の測定を行った。低放射線量では、320 μm 厚センサー は150 μm 厚のセンサーよりも多くの電荷を収集するが、3.5×1015 neq/cm2 以上の放射線 量では同程度となった。これらの現象を理解するためにTCAD シミュレーションを行った。 TCAD による放射線損傷評価において、アクセプタとして振る舞う準位の増加はバルク 抵抗の低下として組み込み、暗電流の増加はSRH モデルで再現し、表面電荷の増加は+ のFixed oxide charge の増加としてシミュレーションを行った。放射線損傷によるストリ ップ間抵抗の低下は暗電流の増加で再現でき、p-stop 電位が表面電位に近づくのは+の表 面電荷の増加によることが分かった。放射線損傷によるVpt の変化は、バルク抵抗の低下、 暗電流の増加、+の表面電荷の増加から説明出来た。n インプラントでのブレークダウン は、バイアス電圧が表面電荷に引き寄せられた電子層を排除する効果で理解出来た。 以上の結果から、本研究において1×1015 neq/cm2 の放射線量レベルでも使用可能な、 n-in-p シリコンストリップ・ピクセルセンサーの基本構造に関し見通しを得る事ができ、 今後の開発に於ける設計指針を示す事が出来た。, 総研大甲第1591号}, title = {p型シリコンストリップセンサーとピクセルセンサーの設計及び放射線損傷評価}, year = {} }