@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000410, author = {本田, 敏志 and ホンダ, サトシ and HONDA, Satoshi}, month = {2016-02-17}, note = {宇宙や銀河そして我々を構成する様々な元素はいつどこで創られ、どのように進化してきたのか?現代の天文学で元素の起源とその進化の歴史を探ることは重要なテーマである。これまでの研究で水素やヘリウムはビッグバンで、鉄族までの元素については星の内部での核融合反応によって合成されることが明らかになっている。一方、鉄より重い元素は中性子捕獲によって合成されると考えられているが、それを引き起こす起源については未解決の課題が多い。中性子捕獲元素は主にsプロセスとrプロセスという2つのプロセスによって合成されると考えられているが、特にrプロセスがどういった天体現象のもとに起こっているかはいまだに明らかにされていない。  このような問題を調べるには、金属欠乏星の化学組成を調べることが有効な手段である。鉄の組成比が太陽の1000分の1程度の超金属欠乏星は、単一、もしくは少数の元素合成過程を反映していると考えられるためである。これまでの超金属欠乏星の観測により、中性子捕獲元素が過剰に見られる天体が、少数ながら発見されてきている。それらの星は詳しく観測され、56≦Z≦72の元素については、その組成パターンが太陽のrプロセス組成パターンとよく一致することが示された。このことは銀河系が誕生してまもないころは,sプロセスの影響はほとんど無く、すべての中性子捕獲元素はrプロセスによって合成され、その合成される組成比は常に一定で、太陽のパターンと同じであると考えられるようになった。  さらにこれらの星では放射性元素であるTh(Z=90)も検出された。Thは半減期が14Gyrと宇宙年齢に匹敵するほど長く、すべてrプロセスで合成されるため、安定なrプロセス元素であるEuとThの組成比から星の年齢を求め、銀河の年齢に下限を与えることができる可能性があり、これまでに複数の天体に対して約15Gyrという年齢が得られている。ただし、このThを使って年齢を求めるときに、安定な元素もThも太陽の初期rプロセス組成パターンと完全に一致するという仮定を用いている。この仮定はまだ十分確認されておらず、Thまで含めて、rプロセス元素合成による組成パターンの詳細な研究が必要である。  我々は、すばる望遠鏡高分散分光器(HDS)を用いて、超金属欠乏星22天体を、高い波長分解能と高いS/Nで観測し、その組成を調べた。その結果、多数の中性子捕獲元素が観測され、その組成比はα元素や鉄族などの軽い元素と比べて大きな分散が見られることが確認された。これはrプロセスをおこす天体現象は、α元素や鉄族元素を合成する過程に比べて限られた場所でおこっており、しかもその結果が銀河初期の星間ガスの中では十分に混合されていないことを示している。  我々のサンプルの中では11天体でEuが検出されたが、観測されたBaとEuの比はどれも太陽のrプロセス値に近いものであった。このことから、これらの金属欠乏星では、重元素合成過程としてはrプロセスが卓越していると考えられる。特に中性子捕獲元素が多数検出できた7天体についてその組成パターンを調べると、ほとんどの星で56≦Z<70の元素については太陽のrプロセスパターンとほぼ一致した。特に5天体では観測誤差の範囲内で一致し、これは過去に6天体に対して示された結果と一致する。しかし、2天体については太陽系の組成のrプロセス成分からのずれが誤差よりもやや大きい。このことは、rプロセスによってつくられる組成パターンにもある程度の分散があるか、あるいは超金属欠乏星でもわずかながらsプロセスの寄与があるという可能性を示している。  38≦Z<56の軽い中性子捕獲元素については、太陽のrプロセスパターンとまったく一致しなかった。この結果は過去にもいくつかの星で確認されており、このことはZ<56の軽い中性子捕獲元素は重い中性子捕獲元素をつくるrプロセスとは別の過程が存在する可能性を示している。  上述の7天体ではThも検出することできた。Thは放射性元素であり、時間とともに減少するので仮にこれらの超金属欠乏星の重元素の初期組成が太陽系のrプロセス成分の初期組成と同一であるとすれば、太陽の値よりはるかに減少している(Th/Eu比が小さい)と期待される。しかしながら、ThとEuの組成比には分散が見られ、その平均値は予想される太陽系のTh/Eu比の初期値に比べてさほど小さくない。この値をそのまま用いると非常に短い年齢が得られることになる。これらの超金属欠乏星が太陽と同じ程度の年齢とは考えにくいので、少なくとも一部の金属欠乏星については太陽に比べて高いThの初期値を持っていたと考えられる。この結果から、金属欠乏星の中性子捕獲元素の組成パターンは、ThのようにZの大きな元素については、必ずしも太陽のrプロセスパターンに一致するとは限らず、星ごとに違ったパターンを持つことが示唆される。金属欠乏星の初期組成比を求めるには太陽で観測される組成比のパターンから単純に推定することはできず、天体ごとに組成パターンを推定する必要がある。, application/pdf, 総研大甲第589号}, title = {Spectroscopic studies of R-Process Elements in Extremely Metal-Poor Stars with SUBARU/High-Dispersion-Spectrograph and Cosmochronometry}, year = {} }