@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000414, author = {中川, 克也 and ナカガワ, カツヤ and NAKAGAWA, Katsuya}, month = {2016-02-17}, note = {与えられた運動方程式の一般解を既知の関数で書き下すことは,天体力学研究における重要な問題である。しかし,そのように「解ける」問題は稀であり,大部分は「解はない」と言ってよい。例えば,2体問題は,その解が円錐曲線で表されるので,「解ける」問題である。それに対して,3体以上の多体問題は, 「解はない」問題である。一般に,微分方程式が「解ける」か「解けない」かは,十分な数の第一積分(保存量)が存在するかどうかにかかつている。2体問題が解けて,3体問題が解けない理由は,その点にある。ハミルトン系の場合,互いのポアソン括弧の値がすべて0になるような独立な第一積分が自由度の数だけ存在すれば,求積法によって運動方程式の一般解を求めることができる。このとき,ハミルトン系は可積分であるという。系のノへミルトニアン自身が第一積分であるから(エネルギー保存),自由度1の系は常に可積分である。自由度2のハミルトン系は,ハミルトニアンと独立な第一積分が1個存在すれば,可積分となる。したがって,自由度2の系が問題となり得る最も簡単な系である。与えられたハミルトン系が可積分か否かを判定することは,天体力学の基本問題であるが,最も簡単な自由度2の場合でさえ,万能の判定条件は知られていない。本論文では,自由度2のハミルトン系である2次元同次多項式ポテンシャル系を扱う。研究の目的は,ハミルトニアンと独立な多項式第一積分を持つ2次元同次多項式ポテンシャル系を分類し,そのリストを作ることである。  ある関数がハミルトン系の第一積分になるための条件は,系のハミルトニアンとのポアソン括弧の値が0になることである。2次元ポテンシャル系の場合,この条件は,ポテンシャルと第一積分を未知関数とする偏微分方程式で与えられる。本論文では,同次多項式ポテンシャルと多項式第一積分を考えるので,偏微分方程式は代数方程式に変換される。最終的には,同次多項式ポテンシャルと多項式第一積分の係数を未知数とする多元連立代数方程式を解く問題に帰着する。さらに,ポテンシャルの同次性を仮定することにより,多項式第一積分をあらかじめ簡略化しておくことができ,計算労力を大幅に節約することができる。また,非同次ポテンシャルの可積分性は,その最高次部分と最低次部分の可積分性を必要とするので,同次式ポテンシャルについての結果は,一般の非同次のポテンシャル系を考える上での基礎となる。このこともポテンシャルの同次性を仮定する動機のひとつである。  さて,上述のポアソン括弧の条件から導かれる偏微分方程式は,第一積分が運動量について1次・2次の場合には,解析的な一般解が知られている(Hietarinta 1987)。よって,それらを多項式の範囲で表すことによって,運動量について2次までの多項式第一積分を持つ2次元同次多項式ポテンシャル系のリストを得ることができる。ところが,第一積分が運動量について3次以上になると,偏微分方程式の一般解を求めることは困難である。ただ,特殊な仮定の下においては,いくつかの解が知られている。そして,同次多項式ポテンシャルと多項式第一積分という範囲内で知られていたのは,1980年代前半に発見された3つの場合であった。そのうち2つは3次の同次多項式ポテンシャル系であり,残りの1つは4次の間次多項式ポテンシャル系である。また,これらはすべて運動量について真に4次の多項式第一積分を持つ。ここで, 「真に4次」とは,その第一積分が運動量について3次以下の第一積分の積で表せないという意味である。例えば,ハミルトニアンを二乗したものは,運動量について真に4次ではなく,見かけ上4次というわけである。Hietarinta (1983)は,同次多項式ポテンシャルの次数を5次以下に限定すれば,運動量について4次までの多項式第一積分が存在するのは,既知の場合に限ることを示した。本論文では,その自然な拡張として,同次多項式ポテンシャルの次数についての制限を取り払った場合を考えた。つまり,任意次数の2次元同次多項式ポテンシャルに対して,運動量について真に3次・4次の多項式第一積分が存在するかどうかを調べた。  まず,次のように多項式第一積分の簡略化を行なった。系の時間反転に対する対称性から,第一積分は運動量について偶関数か奇関数かのどちらかであると仮定できる。さらに,ポテンシャルの同次性から導かれる系のスケール変換に対する不変性により,多項式第一積分の重みつき同次性を仮定することができる。これら2つの仮定により,一般の多項式第一積分を,より簡単な形に場合分けして考えることができる。ここで注意しなければならないのは,可積分系は座標回転しても可積分なままであるということである。つまり,見た目は異なるが,実質的には同一の可積分系が存在する。このことから生じる可積分系の重複カウントを避けるため,同次多項式ポテンシャルを,座標回転に対する性質によって分類した。そのうちの1種類は,ある特殊な形をした複素ポテンシャルであるが,Hietarinta (1983)の計算では最初から除外されていた。また,出版済みの論文(Nakagawa and Yoshida 2001)においても研究対象から外していた。本論文では,分類されたポテンシャルすべてを考慮に入れて計算を行ない,次の結果を得た。運動量について真に3次・4次の多項式第一積分は,ただ1つの例外を除いて,既知のものに限ることを証明した。1つの例外として,今まで除外してきた複素ポテンシャルの中に運動量について真に4次の多項式第一積分を持つものを発見した。  本論文の主結果である前半部分は,Nakagawa and Yoshida(2001)において既に証明を与えてあるが,本論文では,可積分ポテンシャルを決定する過程に新しい手法を導入し,見通しのよい計算を実現した。その新しい手法は,「系が第一積分を持つならば,運動方程式を直線解の周りで線型化して得られる変分方程式も第一積分を持つ」という事実(Ziglin 1983)に基づいている。この事実を用いて,多項式第一積分が存在するための必要条件を求める。これは,同次多項式ポテンシャルの(ある特定の)係数に対する条件として得られる。その条件を満たすポテンシャルを可積分系候補とする。次に,選ばれた可積分系候補のポテンシャルに対して,ポアソン括弧の条件から導かれる多元連立代数方程式を解き,実際に多項式第一積分を持つかどうかを調べる。ここでは,得られた多元連立代数方程式から同次多項式ポテンシャルの係数に関する漸化式を求め,ポテンシャルの係数を決定した。その過程で,既知の可積分ポテンシャルを表す解以外の解が存在するための条件として,ポテンシャルのある1つの係数についての連立代数方程式を導いた。そして,ポテンシャルの次数が5次以上ならば,この連立代数方程式が解を持たないことを示した。この解の非存在証明には,多項式の共通根存在条件を与える終結式の計算が本質的な役割を果たした。  こうして得られた結果により,運動量について4次以下の多項式第一積分を持つ2次元同次多項式ポテンシャル系の完全なリストを得た。なお,運動量について5次以上の多項式第一積分は,現在のところ発見されていない。その存在・非存在を明らかにすることが今後の課題である。, application/pdf, 総研大甲第669号}, title = {Direct construction of polynomial first integrals for Hamiltonian systems with a two-dimensional homogeneous polynomial potential}, year = {} }