@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000432, author = {工藤, 智幸 and クドウ, トモユキ and KUDO, Tomoyuki}, month = {2016-02-17}, note = {我々の地球や木星のような惑星はどのようにして誕生したのだろうか。惑星系形成過程の解明
は、天文学において最も重要なテーマの一つである。惑星誕生の様子を知るためには、太陽以外の恒星とその星周構造を観測することが必要である。若い星に円盤状の星周構造が伴うことは、1980年代のミリ波や赤外線における観測などから知られていたが、1983年に打ち上げられた赤外線天文衛星IRASは、分子雲に付随した若い星に普遍的に(円盤に起因する)赤外超過が観測されることを示した。1990年代には、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)による可視光における直接観測により、太陽系スケール(100AUのオーダー)での円盤が直接観測されるに至った。これは、惑星誕生の現場と考えられ、原始惑星系円盤(Protoplanetary Disk)と呼ばれている。
 原始惑星系円盤(以下、円盤)は、星の形成過程において、母体となる分子雲が角運動量をも
つことから必然的に作られると考えられる。これまでの研究では、いくつかの直接観測を除いて
は、様々な波長における天体のエネルギー分布(SED)を再現するように円盤のモデルを構築す
るという間接的な方法がとられてきた。しかし、このような間接的方法のみでは構造を一意に決
めることは難しく、円盤内の詳細な構造を推測するのは困難である。例えば、もし中心星の近傍
に惑星が形成されていくならば、形成場所によって円盤の空間的な物質分布の様子が変化するはずである。つまり、円盤における惑星系形成を調べるには、円盤からの熱放射量の測定のみでなく、円盤を空間的に分解する直接撮像観測が不可欠である。しかし、円盤のサイズはせいぜい数100 AUであり、空間構造を分解するには近傍分子雲(d=120~200pc)で0.1 秒角(12~20AU)程度の高解像度が必要となる。これを直接撮像で実現できるのは今のところ可視光と近赤外線を用いた観測だが、この波長帯では中心星が円盤に比べて明るすぎるという問題が生じる。そこで、中心星の寄与を軽減できるコロナグラフの利用が不可欠になる。すばる望遠鏡は、大気揺らぎを抑える補償光学(AO)とコロナグラフカメラ(CIAO)というユニークな装置を備え、地上の8mクラス望遠鏡における撮像観測をいち早く可能にした。そこで我々は、円盤を検出してその形態を探ることを目的とし、主に前主系列段階にある低質量星(0.1~2.0 MΘ)を観測対象として、近赤外線コロナグラフ撮像観測を行った。
 本研究における観測は、年齢105~107年の前主系列段階にあるT Tauri型星について行った系統的観測のサブサンプルである。高解像度と統計的議論のため、近傍(d=140pc)にあるおうし座の低質量星形成領域を対象としている。結果、計15天体の撮像観測を行い、3天体で円盤を分解した。うち2つ(FN Tau, CoKu Tau/4)は世界で初めて検出できた原始惑星系円盤である。また、HLTauの円盤も現在のところ世界最高の解像度で描くことができた。観測で得られた解像度は平均約0.1 秒角(距離140 pc の天体で約14AU)である。
 HL Tau は、Class I からII へと進化する途中段階にある、年齢約105年の天体と考えられている。これまでの観測から、CO輝線による円盤状星周構造が半径2000AUにわたって存在することがわかっており、ミリ波干渉計のデータから半径150AUの円盤が見つかっていた。 HSTの可視光観測では,星本体は星周ダストの吸収により直接見ることができなかった。近赤外線での観測は、可視光と同じく、ダストによる散乱光を捉えることができるが、可視光より波長が長いため、長波長では星本体まで見通すことができる。本観測は近赤外3色による最も高解像度の撮像結果であり、これまでで最も長い観測波長(L'-band: 3.7μm)のデータである。その結果、中心星の周囲に大きさ500AUのエンベロープ構造、さらに北東側には、アウトフローによって引き起こされたと考えられU字型の空洞の壁(cavity)が星の光を散乱して明るくなっているのを捉えた。南西側の赤いカラー構造は、ミリ波の円盤とほぼ同じサイズであることから、降着に伴う集積したダストによって赤化している円盤領域に対応すると考えられる。
 FN Tau は非常に低質量(0.1 MΘ)の古典的T Tauri型星(Class II天体)である。これまでに高解像度撮像は無く、SEDから間接的に円盤の存在が示唆されていたのみであった。我々はコロナグラフを用い、この天体の周囲に半径r =260AUのほぼface-on円盤を初めて検出した。M型星における円盤の最初の直接観測である。この円盤の表面輝度はr-2.5で減少しており、他のTTauri型星と比べ散乱光の寄与が大きいことから、フレアした円盤であることが示唆される。直接観測から得られた半径と傾きを用い、過去の可視光~ミリ波に至る測光から、円盤のモデルを用いて質量を推定すると0.007MΘ(主星質量の6%)となった。これは数木星質量の惑星を形成するに十分な質量だが、面密度分布から惑星形成理論をもとに推定される、形成されうる惑星の質量は、巨大ガス惑星よりもかなり小さいと推定される。本結果は、最も軽い天体(~0.1MΘ)に付随する唯一の撮像例であり、M型星における惑星形成を調べる上で、今後最も重要な天体となるだろう。
 CoKu Tau/4 は弱輝線T Tauri型星(Class III天体)に分類されている。我々の近赤外(JHKバンド)によるコロナグラフ撮像観測の結果、大きさ約800AUのエンベロープ、長軸方向が約230AUの傾いた円盤という星周構造を分解した。各バンドにおける長軸方向のプロファイルをとると、r-1.0r -1.8 で減少している。通常、中心星からの輻射はr -2で減少するはずであり、これは視線方向に奥行きをもつ星周物質を通った散乱光でなければ説明できず、球形状のエンベロープに囲まれていることを示唆する。また、円盤のカラーが極端に青いことから、より進化の進んだ残骸円盤の性質に近いことも伺える。非対称性も大きく、既に形成されつつある伴星の影響を受けている可能性も否定できない。
 一方で、近赤外線では円盤を検出できなかった天体もあり、その星周構造の明るさの上限値を求めることができた。観測的には、近赤外散乱光のコントラストは密度構造を直接反映しているわけではないため、サブミリ波干渉計などによる多波長観測により、密度や温度情報を得て円盤の理解を深める試みも必要だろう。我々の結果は、これまで4段階に分類されている進化段階のうち、3つの各段階(Class I ~ Class III)における円盤を直接分解した点で大きな意義を持つ。今後、観測例を増やすことで、星形成領域ごとの差違についても議論できるようになるだろう。本研究を展開することで、実存する円盤形態に基づいた惑星系形成の理解が進み、次第に我々の太陽系の「立ち位置」が見えてくるものと期待される。, 総研大甲第1121号}, title = {Near-Infrared Imaging Observations of Protoplanetary Disks around T Tauri Stars in Taurus}, year = {} }