@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000442, author = {星野, 昌幸 and ホシノ, マサユキ and HOSHINO, Masayuki}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {超伝導コイルの要件に安定性と安全性がある。安定性は超伝導コイルがクエンチし難いこと、安全性は、もしクエンチが発生してもコイルが健全に保護されることである。コイルが大型化すれば、蓄積エネルギーが増大するため両要件とも重要度が増すことは明白である。本研究では、安定性に関して素線間電流転流現象、安全性に関して極低温ヘリウムの絶縁特性を明らかにすることによって大型コイル開発の促進に役立てることを目的としている。
 本論文は5章からなり、それぞれの章においては、以下のような点について述べている。
 第1章は序論で、本研究の目的について述べる。大型超伝導コイルには、安定性および製作性より撚線導体が用いられる。撚線導体の場合には、撚線内の数本が常伝導転移した場合に、常伝導転移した超伝導素線から電流および熱が残りの超伝導素線に移動する。このような現象のためモノリシック導体と異なる安定性を待つ。従来、電気回路解析や数値解析によって、素線間接触コンダクタンスの必要性が指摘されている。しかし、通電の行なわれる極低温では物性値が非線形に大きく値を変え不明確点が多く、実験による研究が各所で行なわれている現状にある。素線問電流転流現象を明らかにすることは大型超伝導コイル安定性の観点での急務である。
 また、同じ超伝導線を用いて高磁界化、安定性の向上が行なえるため、超流動ヘリウムによる冷却が大型ヘリカル装置のような大型超伝導コイルで検討されている。飽和超流動ヘリウムは、パッシェン曲線より絶縁破壊電圧が低いと予想されるガスへリウム状態に容易に気化する。しかし、このような極低温低圧力状態のガスヘリウムの絶縁破壊電圧を調べた例はない。また、沿面絶縁破壊電圧は一般に絶縁媒体の絶縁破壊電圧に比べて小さくなり、沿面絶縁を含む極低温低圧力状態のガスヘリウムの絶縁破壊特性を調べることはコイル安全性の観点より重要である。このように本研究の目的は大型超伝導コイル開発の重要課題である。
 第2章では、超伝導2本撚線による実験によって、素線問転流現象の基本特性を明らかにした。電流測定素子には、素線問の電流分配を変えずに電流測定できるピックアップコイルを用いた。また、常温でピックアップコイルの較正を行なった場合、冷却による無収縮のためピックアップコイルの形状および位置が不明確になる。これを避けるため、液体ヘリウム温度でピックアップコイルを較正する方法を開発し実施した。
 直流大型超伝導コイルとしての実用性を考えて、鋼マトリックスNbTi超伝導線用いて実験を行ない、表面は自然酸化状態とし素線問に接触コンダクタンスを持たせた。実験により、ヒーターを入力した超伝導素線から隣接超伝導素線に電流が移るより、熱が素線間で伝わる方が遅いことを見いだした。また、電流転流が完了した後に隣接線が常伝導転移するため、ヒーター入力前の素線問の偏流によって安定性マージンが変わらないことを示した。電流転流現象を説明する数値解析コードを開発し実験と比較することによって、隣接線への熱伝達の遅れが準定常核沸騰熱伝達で説明できることを示した。素線間の接触抵抗、超伝導線の常伝導抵抗、素線間インダクタンス等の電気回路特性に限らず、素線問の熱伝達特性とヘリウム熱伝達特性によって電流転流が変わることを明らかにした。
 第3章は、撚線の安定性について電流転流実験および数値解析によって明らかにしている。ヒーターパルス幅を変えて安定性マージンを調べた結果、撚線においてもヒーターパルス幅が短い場合には入力したエネルギーによって、ヒーターパルス幅が長い場合にはヒ一夕一電力によってクエンチの発生が決定されることを確認した。接触コンダクタンスが5×104Sと大きい場合には、ヒーターパルス幅を短くしてもクエンチ発生までの遅れ時間が短くならず、20msecと長いことがわかった。このため、均一に加熱された場合に比べ液体ヘリウムに対して熱伝達している時間が長くなり、均一擾乱に比べ局所擾乱の安定性マージンが高い可能性を示した。数値解析によって超臨界ヘリウム冷却による安定性の変化を調べた結果、超臨界ヘリウム冷却では、大きな過渡熱伝達により安定性マージンは大きいが、超伝導素線がお互いに全長に渡って接触している1次撚線では、電流および熱が迅速に隣接する超伝導素線に移動するため電流転流が安定性を向上する現象とならないことがわかった。実導体において、熱伝導が小さいことが予想される撚線間での電流転流現象を調べる必要性を指摘した。
 第4章は、極低温ヘリウムガスの絶縁破壊特性について述べる。飽和超流動ヘリウム状態は容易に最小破壊電圧状態近傍のガスヘリウムに変わる。そこで、圧力を1.33から101kPaの問で変えて、飽和状態より幾らか温度の高い状態のヘリウムガスについて絶縁破壊電圧を測定した。測定を行なった範囲において、絶縁破壊電圧はパッシェンの法則に従い、ヘリウムガス密度とスペーサ厚さの積のみの間数となることを明らかにした。密度×厚さの小さい領域では、放電は沿面でなく気中ギャップで起こり、絶縁破壊電圧も同じギャップ長のヘリウムガス絶縁破壊電圧に一致する。これに対して、密度×厚さの大きい場合には、沿面で絶縁破壊して、破壊電圧もヘリウムガス絶縁破壊電圧よりも小さくなることを示した。誤差の範囲で、スペーサの直径や厚さによる絶縁破壊電圧の違いが無いことを確認し、本研究の結果が実際の超伝導コイルの設計に適用できることを示した。
 第5章は、本研究で得られた結果についてまとめ、今後の研究課題について記述している。まず、超伝導撚線の電流転流現象の基本特性を明らかにし、超伝導撚線安定性設計の指針を示した。次に、ヘリウム絶縁破壊特性を調査し超流動ヘリウム冷却超伝導コイルの絶縁設計の基準を示した。今後の課題として、実機サイズでの確認の必要がある。, 総研大甲第135号}, title = {大型超伝導コイルの安定性と絶縁に関する研究}, year = {} }