@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000446, author = {仙波, 智行 and センバ, トモユキ and SENBA, Tomoyuki}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {次世代の核融合装置のための大型超伝導マグネットにおいて、その信頼性に関わる重要な問題のひとつは、超伝導安定性である。本論文は超伝導導体、特に本論文で述べる大型ヘリカル装置に用いられている複合超伝導導体に対して、その安定性に関わる重要な指標のひとつである最小クエンチエネルギー(MQE)の評価法の確立を目指した研究成果と、この超伝導コイルとしての安定性/信頼性を最も要求される大型の超伝導ヘリカルコイルの先進的な開発方法について述べたものである。本研究は文部省核融合科学研究所(NIFS)の大型ヘリカル装置(LHD)を対象としているが、その結果は一般の超伝導マグネットに応用可能である。
 超伝導マグネットにおいては、たとえその一部分が常伝導状態にあっても、通電電流をある値以下にすると超伝導状態に復帰するという電流値すなわち回復電流値が定義できる。マグネットが回復電流以下で運転されているときには、導体が充分に冷却されている限り、完全な常伝導転移すなわちクエンチは発生しない。一方、回復電流値よりも高い電流値で運転されている場合、そのマグネットにクエンチを起こさせる最小の擾乱エネルギーが存在し、これは最小クエンチエネルギー(MQE)と呼ばれる。クエンチの原因となる各種の擾乱は、最終的には熱の形でマグネットの中で消費されるため、導体のもつ熱的な特性がそのマグネットの安定性を大きく支配する。したがって導体の熱的特性を知ることによりMQEを正確に評価することがマグネットの安定性評価の上で非常に重要になる。
 一方、マグネットの製作方法もまた安定性に大きく影響する。例えば導体と絶縁スペーサ間にギャップを生じた箇所ではマグネット励磁時の電磁力による導体変位に伴う導体歪が導体材料の抵抗率を増加させてその回復電流を低下させるおそれがある。更に導体の動きは導体と絶縁スペーサ間に摩擦発熱を引き起こしてクエンチの原因となる。したがってより高い性能のマグネットを製作するためには、高精度の製作方法が不可欠である。
 本論文ではこれら2つの項目について研究を行って、以下に述べる結果を得た。
 まずLHDのヘリカルコイルに用いられている複合超伝導導体の熱的特性を調べることにより、そのMQEに関する以下の結果を得た。
1.複合超伝導導体の2次元熱解析手法の開発
 一般に、通電中の超伝導導体に模擬的熱擾乱を与えてクエンチを起こさせる方法による導体安定性測定から得られたMQEの値は、主に加熱部の応答時間が導体材料の熱拡散時定数よりも長いことによって生じる誤差を含むが、この誤差を2次元熱解析を用いて取り除くことに成功し、この解析により得られたMQEの値が従来のMQEの値よりも1桁小さいことを示した。
2.複合超伝導導体の異方性の効果 
 LHDヘリカルコイルの導体のごとく、部材の幾何学的な配置において異方性を有する導体のMQEが、導体に対する熱流束の方向に伴い変化することを示した。これにより導体の異方性を考慮に入れて、MQEの値を従来よりも更に正確に評価することを可能にした。
3.擾乱が分布している場合の効果 
 マグネットの中での擾乱が分布している場合であっても、正確なMQEの値を評価する実験式を導出した。具体的には、導体の熱伝導率とヘリウムへの熱伝達係数および露出率より決まる導体長手方向の温度勾配の特性長が冷却チャンネル長と同程度の場合には、擾乱が近接して導体長手方向に分布しているときの加熱部位あたりのMQEは局所擾乱の場合の1/2に漸近し、全エネルギーは加熱部位の数にともない増加するということを示した。
 次に超伝導ヘリカルコイルの先進的な巻線方法の開発を行い、以下の結果を得た。
1.LHD用のR&Dコイルの製作による高精度巻線技術の開発 
 ヘリカルコイルの導体軌跡は磁場分布の最適化から決定されるため通常は測地線とならず、導体位置に伴い連続的に変化する2成分の曲率および捩率を持つ。このためその製作時に、円形コイルにおいて高精度巻線のために用いられている張力巻線の方法をとることは不可能である。LHD巻線手法開発のための複数のR&Dコイルの製作を通じて、ヘリカルコイル製作においては成形巻線機による導体への2成分曲率と捩率の連続的な付与が巻線精度を効果的に高め得ることを示した。
2.LHD用の実規模の巻線試作による新巻線技術の開発
 LHDと同じ規模の巻線試作を超伝導導体を用いて実施し、巻線機の採用に加えて新しく開発した巻線方法の有効性を示した。その方法とはヘリカルコイルの3次元形状を活用したもので、通常の巻線手続きの後に導体を軌跡と垂直な列方向に変位させることにより、軌跡の2成分の曲率の比で決まる層方向の変位量を得ることができるものである。この結果として導体に張力を発生させ、コイルの巻線精度を向上させることを可能にした。この方法はどのようなへりカルコイルの製作過程にも応用できるが、導体間に冷却チャンネルを有する超伝導ヘリカルコイルにおいて特に有効である。
 以上の結果をもとに、論文の結論ではLHDヘリカルコイルの安定性についても評価した。
1)定格までのコイル電流領域においては、以下のように考えられる。新しく開発した巻線方法によってコイルの巻線精度が大幅に改善されていること、および導体のヘリウムへの露出率が導体評価試験時のそれよりも大きく設定されていることが、安定性を更に向上させ、定格電流までの励磁は順調に行われると考えられる。
2)更に進んだプラズマ性能を得るための定格電流以上での運転の可能性については以下のように判断するに到った。運転電流が定格電流を越え、回復電流を上回ると、MQEの値は数10mJになる。これは導体の許容変位量として数μm~数10μmの値を与える。巻線の達成精度の値はこれよりもやや大きいが、定格電流までの励磁の間に働く電磁力が導体間のギャップを効果的に低減し、巻線の機械的剛性を向上させて励磁時の導体の動きをMQEの観点から許容できるレベルに抑える可能性がある。しかしながら、回復電流以上の運転ではより進んだ冷却方法すなわち超流動ヘリウムを用いた冷却方法の採用が望まれる。
 以上の通り、本研究は超伝導マグネットの設計・製作・運転に大きく寄与するものである。今後の課題であるが、本研究を更に進め、有限なクーリングチャンネルにおける液体ヘリウムとガスヘリウムの挙動が超伝導マグネットの安定性に及ぼす効果を明らかにすることが重要となると考えている。, application/pdf, 総研大甲第196号}, title = {Thermal Behavior of Composite Superconductors and an Advanced Winding Method for Large Superconducting Helical Coils}, year = {} }