@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000489, author = {小渕, 隆 and コブチ, タカシ and KOBUCHI, Takashi}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {LHDプラズマにおいてC5+イオンと基底準位にある水素原子との低エネルギー衝突における荷電交換反応による線スペクトルが観測された。C5+ n=4準位からの遷移に対応するスペクトル線強度の異常は、原子衝突分野が与える低エネルギー衝突でのC5+ n=4準位への強い選択的捕獲性に対応している。また空間分布計測によって、この荷電交換反応が生じている領域が最外殻磁気面の近傍にあることが見いだされた。

 中性粒子ビームとイオンとの荷電交換反応は、イオンの高励起準位への電子捕獲断面積が大きいことを利用し、ドップラープロフィール測定によるイオン温度計側、プラズマ回転速度計測に使用されている重要な計測法である。本研究は高エネルギービームの中性粒子ではなくプラズマ中に存在する低エネルギー水素原子と不純物多価イオンとの荷電交換反応を分光法によって検出し、低エネルギー水素原子、周辺プラズマでの多価イオンについての知見を得ることを目的としている。プラズマ中の中性粒子は荷電交換による粒子損失や放射によるエネルギー損失などに深く関わるため、閉じ込め特性やエネルギーバランスの研究において磁気閉じ込めプラズマ中の中性粒子の挙動を知ることは必要である。特にNBI加熱においてはNBI加熱の吸収パワーの増加と共にプラズマ中の水素原子密度が増加するという報告がある。これらは入射された高エネルギー粒子が一度は電離されるが、再度荷電交換により中性化しプラズマの外へ高いエネルギーを持って飛び出し、その粒子が内壁で反射されFrank-Condonよりも高いエネルギーを持ってプラズマ内に侵入するものとされている。このプラズマ中へ侵入水素によってプラズマ中心部での水素原子密度は10 8cm-3に及ぶことが多くの実験やシューミレーションで示されており、この水素原子が荷電交換反応によって不純物イオンの電離バランスに大きな影響を与える可能性にも興味がもたれる。
 プラズマ中における原子素過程を考慮した衝突輻射モデルを利用し、ここで対象とするスペクトル線の強度分布を比較のために求めた。モデル計算ではCOLRADコードを用いてC5+イオンにおけるライマン系列の発光強度分布を求めた。電子密度範囲ne = 10 12~10 17 cm-3、電子温度範囲Te = 100~1000 eVで求めたC VI Ly α(1s-2p)、C VI Ly β(1s-3p)とLyγ(1s-4p)の比は、neそしてTeおける依存性は非常に小さくほぼ一定となり、それぞれの強度比はI(Lyβ)/ I(Lyα)= 0.09±0.03、I(Lyγ)/ I(Lyβ)= 0.26±0.03が得られた。
 実験では対象としたライマン系列のスペクトル線(特にC VI Lyα、Lyβ、Lyγ)を18-41 Åの波長領域において同時に観測を行った。NBI加熱時に観測された強度比I(Lyγ)/ I(Lyβ)は0.6-1.0となりCOLRADコードから求められた値と大きくくいちがった結果が得られた。一方、I(Lyβ)/ I(Lyα)= 0.06-0.12はCOLRADコ一ドの予想する値によく一致したことから、C5+ n=4準位のポピュレーションが増加していると判断される。またこれは原子衝突の分野で与えているC6+イオンと基底準位にある水素原子との荷電交換反応によって電子が捕獲される選択的準位n=4と一致することから、ここで観測されたC5+ n=4準位のポピュレーションの増加は低エネルギー衝突によるものと結論される。
 次にライマン系列の各スペクトル線の空間分解計測を行った。さらに観測された結果をアーベル変換することによりスペクトル線強度の空間分布を調べている。まず観測されたLyαとLyβの発光強度分布を観るとよく類似した分布であることが確認され、規格化半径ρ = 0.9近傍にピークした分布が得られた。一方Lyγはこれらと大きく異なった分布が観測された。これは低エネルギー荷電交換反応の影響が表れているものと判断され、荷電交換反応領域とC5+イオンの存在領域が大きく異なっていることを示唆している。さらに反応領域をより明確にするために、衝突輻射モデルから予想されるLyγとLyβの関係を利用して、観測されたLyγから荷電交換反応の成分Lyγ CXを見積もり、その分布を調べた。その結果Lyγ CXはLyα、Lyβよりも外側の最外殻磁気面近傍にピークを持った分布を示した。これは最外殻磁気面の内側寄りの領域で荷電交換反応が起きていることを示唆している。また、LHDプラズマの特質である電子温度の急峻な立ち上がりが上述の反応領域とほぼ一致して観測される場合に、強度分布の異常が多く観られることからこの特質との関係が考えられる。
 分光器の感度較正を行い観測されるLyαの発光強度がらC5+イオンの基底状態のポピュレーションを見積もった。感度較正は遷移の上準位が同一である二本のスペクトル線を一組とし、異なった波長領域にある数組の強度比を利用することにより感度曲線を求め、標準光源より較正された可視分光器を利用して絶対値を与えた。次にCOLRADコードを利用して基底準位とn = 2のポピュレーション分布を求めると、ne = 10 13 cm-3、Te = 300 eVの条件下で約10 9の分布比が得られた。これからC5+イオンのほとんどが基底状態にあることが分かる。ここでこの分布比と先の絶対感度曲線を利用するとLyαから2p準位のポピュレーションとC5+イオン密度を求められる。その結果ne = 10 13 cm-3に対して1.5%程度のC5+イオン密度を得た。つぎにCOLRADコ一ドに荷電交換反応の効果を追加し、ライマン系列線スペクトルの強度分布の変化を調べた。モデル計算の初期条件としては実験条件であるne = 10 13 cm-3、Te = 300 eV、他の測定から得られた水素原子密度nH =10 10 cm-3と先で求めたC5+イオン密度を与えた。最後にC6+イオン密度を自由変数として強度分布の変化を調べると、10 11 cm-3の場合に観測結果に近い強度分布が得られた。これからより詳細な計測を行うことにより、C6+イオンの密度分布が得られる可能性が示された。, application/pdf, 総研大甲第520号}, title = {LHDプラズマにおける真空紫外域でのCO6+イオンと水素原子の低エネルギー荷電交換反応の研究}, year = {} }