@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000491, author = {笹尾, 一 and ササオ, ハジメ and SASAO, Hajime}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {ヘリカル型核融合炉を実現するためには、世界最大のヘリカル装置LHD(Large Helical Device)においてヘリカルプラズマにおける熱・粒子の輸送特性を明らかにし、より高い閉じ込め特性を得る事が必要である。電子サイクロトロン放射(Electron Cyclotron Emission,ECE)計測は高空間/高時間分解能を持つ電子温度計測として静的な輸送現象の解析ばかりでなく、過渡的な輸送現象の解析にも用いる事ができ、LHDの輸送を解明するためには必要不可欠である。しかしLHDのような3次元構造を持つ磁場配位におけるECE特性はこれまで詳細には議論されておらず、トカマクのような単純な磁場配位との違いがECE計測に影響を及ぼす可能性がある。ECEによる電子温度計測をLHDプラズマの輸送研究に適用するために、本研究では3次元構造を持つ磁場配位においてECE特性を明らかにし、LHDにおけるECEによる温度計測可能領域の特定と拡大を行なった。
 LHDの磁場強度分布は鞍部点構造をしており、赤道面上には、一つの電子サイクロトロン周波数に対して共鳴層がトーラス内側、外側と2個所存在する。これはトカマクとLHDとの最も大きな違いである。プラズマが光学的に厚い場合は内側の共鳴層から放射されたECEは外側の共鳴層で吸収されトーラス外側に設置されたアンテナまで伝播できない。このためトーラス外側に設置したアンテナだけでは二つの共鳴層によるECE伝播モード(XとO)の混合の影響は無視できるが トーラス内側領域のECE計測を行なう事ができない。そこでECE計測領域の拡大のためトーラス内側にアンテナを設置し内側共鳴層からのECEを用いた電子温度分布計測を可能とした。
 LHDでは磁力線が赤道面に対してなす角度は径方向位置に強く依存する(磁力線のシアが大きい)。ECEの電場ベクトルは主に磁力線に対して垂直である(Xモード)が、磁気シアが存在する場合プラズマの中心部と周辺部で放射されたECEの電場ベクトルは異なった角度をもつ。中心部から放射されたECEは磁力線が回転するのを感じながら伝播する。この時,波の電場ベクトルは磁力線と共に回転する事が理論的に示されている。この偏波の回転特性を実験的に明らかにするために、LHDにおけるECEの偏光特性を測定した。実験結果としては以下の4つが挙げられる。
 1. 観測されたECEの偏光角は、放射された径方向の位置によらない。
 2. トーラス内外の計測から観測されたECEの偏光角は、最外殻磁気面での磁力線の傾きに対応している。
 3. 観測されたECE強度のXモードに対するOモードの比率は70%と力)なり大きり)。
 4. XモードとOモードの強度比はECEの放射される径方向の位置によらない。
実験結果の1と2により磁気シアがあるプラズマでのモード変換の理論と矛盾がないことを示した。また、3と4の実験結果と本研究で提案した反射、壁におけるモード変換、モードの混入、二つの共鳴層の影響を考慮した1次元の放射輸送モデルとに矛盾がないことがわかった。特に4はLHDで観測された非常に大きなOモードの強度の要因として壁における反射とモード変換が重要であることを明らかにした。
 次に高密度領域におけるECE強度のふるまいを実験的に調べたところ、密度の上昇につれてECE強度が減少する現象が観測された。この減少はプラズマが光学的に十分厚い場合にも生じ、小半径方向、集光系、周波数、伝播モードによらずカットオフ密度よりもかなり低い密度で生じる。これらの実験結果は、トカマクプラズマにおけるカットオフ近傍でECE強度が急激に減少するという実験結果とは大きく異なり、ヘリオトロン型実験装置においてもLHDプラズマではじめて観測された現象である。ECE強度の密度増加に伴う減少は偏光角特性の解析で用いた反射、壁でのモード変換、モードの混入、二つの共鳴層の影響を考慮した拡張放射輸送モデルでは説明できなかった。そこで磁場配位の3次元構造の影響を明らかにするために、有限な大きさを持つアンテナに集光されるECEビームをマルチレイにより模擬したレイトレーシング解析法を適用した。LHDとアンテナの視線方向の密度分布が同じで、共鳴位置が同じとなるような円断面トカマクについてもレイトレーシング解析法を適用した計算を行い これを参照データとした。レイトレーシング解析の結果は以下のとおりである。波が共鳴層を通過するまでの軌跡について着目すると、両者ともカットオフ密度直前ではカットオフ面を形成する点では共通である。両者の違いはLHDでは、密度が高くなるにつれ徐々に波の曲がりが大きくなるのに対し、トカマクではカットオフ密度近くまで波の曲がりはLHDと比べて非常に小さいことである。この違いを定量的に評価するために入射レイの内、共鳴層の径位置でアンテナの視野の拡がりを通過するレイのパワーの密度依存性を調べると、トカマクでは密度に対する依存性は現れなかった。このことはこれまでのトカマクの実験結果と矛盾しない。一方、LHDでは密度の増加と共に通過パワーは徐々に減少する。この結果は、定性的にはLHDの実験結果と良い一致を示す。更に、LHDとトカマクでECEのふるまいに違いが生じる原因を調べるために、トカマクの断面形状を縦長、円、横長としてレイトレーシングを行った。ここで、3種のトカマクともアンテナの視線方向の密度分布、磁場分布は共通にしてあり、異なるのは垂直方向の密度分布のみである。レイトレーシングの結果から縦長、円、横長の順に密度が上昇するほど、共鳴層の径位置でアンテナの視野の拡がりを通過するレイのパワーは小さくなる事がわかった。これら3種のトカマクにおけるレイトレーシングの結果とLHDのレイトレーシングの結果からLHDとトカマクで屈折に違いが生じる主因は、波の進行方向に垂直方向の聰度勾配が、一般的なトカマクに比べてLHDでーは大きいためである事が分かった。
 上記の研究に基き、LHDにおいてECE計測を電子温度計測に適用できる領域を特定した。適用範囲において得られたECEによる電子温度計測結果を輸送特性解析に用いた。長時間放電中の新古典熱輸送係数と径電場の振る舞いを調べるため、ECEの実験データを用いて、新古典論による径電場及び熱輸送の予測を行ったところ、LHDのヘリウムガスパフNBI長時間放電において、実験的に観測されたプラズマ周辺領域での径電場の正から負への遷移が理論的にも再現できた。また、正の径電場生成時,イオンの新古典輸送が減少することが数値的に示された。しかし、その振る舞いは密度、温度だけでなく水素とヘリウムの量の比率に依存し、ヘリウム放電におけるNBIによる水素の増加は径電場分布に重要な影響を与え、径電場の極性には水素の量に閾値があることを示した。, application/pdf, 総研大甲第522号}, title = {LHDにおけるECE計測とそのプラズマ輸送解析への適用}, year = {} }