@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000497, author = {山本, 則正 and ヤマモト, ノリマサ and YAMAMOTO, Norimasa}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {プラズマからのスペクトル線解析及び実効的な電離、再結合、励起速度駅数を求める為に衝突輻射モデルが広く用いられている。衝突輻射モデルについては藤本[1]やGreenland等[2]によって調べられているが、主に1電子励起状態についてのモデルである。2電子励起状態から放射されるサテライト線は、プラズマの電子温度測定に用いられている。また2電子再結合の密度効果は、プラズマ中のイオン密度費に影響する。レーザー生成プラズマで発生するサテライト線に対しての簡単な衝突輻射モデルに関する議論はされているが[3]、2電子励起状態を含んだ衝突輻射モデルに対しては、まだ十分に調べられていない。
 本論文では、高温高密度プラズマにおける2電子系イオンに対する2電子励起状態を含んだ衝突輻射モデルの構築を行い、構築したモデルを用いて体系化を試みた。体系化の一つとして、高密度プラズマで直接遷移の速度係数に対して重要になる実効的な速度係数の電子温度・密度依存性について調べた。実効的な速度係数は、高密度プラズマにおいて間接的な寄与が直接遷移よりも大きくなることで重要になる。実効的な速度係数は、藤本と加藤により2電子系イオンに対する2電子励起状態を含んだ衝突輻射モデルにより調べられた[4]。彼らは、1s-28励起/脱励起に対して2電子励起状態2snlを、1s-2p励起/脱励起に対して2pnlを取り入れた衝突輻射モデルを各々構築した。その結果、実効的な速度係数に対して、2電子性捕獲一梯子様励起・電離過程による間接的な寄与を示した。また彼らは、Griemの限界レベル(critical level)[5]を用いて実効的な速度係数の近似式を与え、衝突輻射モデルによる結果との一致を示した。
 本論文では、2電子励起状態2snl、2pnlと3l'nl状態、更に1電子励起状態1snlを取り入れた衝突輻射モデルの構築を行った。構築した衝突輻射モデルを用いてref.[4]の実効的な速度係数の計算には取り入れられていない、1snl-2lnl遷移、2snl-2pnl遷移や3l'nl状態の、1s-2l励起/脱励起の実効的な速度係数への寄与について調べた。その他に1s-3l励起/脱励起や2l-3l勧起/脱励起、そして1s2-1s、1s2-2lと1s2-3l電離/再結合の実効的な速度係数についても調べた。また、構築した衝突輻射モデルを用いて、最近Rosme j等によってGSI-Darmstadtで測定された、レーザー生成プラズマによる水素様Mgイオンのn=2,3,4からのサテライト線[6]の解析を行った。
 本論文における衝突輻射モデルは、ヘリウム様準位の基底状態1s2、水素様準位の1s、2l(2s、2p)と3l(3s、3p、3d)の他に1電子励起状態1snlと2電子励起状態2L7nl、3l'nl(n≦20)の準位を考慮している。また原子過程としては電子衝突による励起/脱励起、電離・三体再結合、放射遷移、自動電離・2電子性捕獲、そして放射再結合を考慮している。上述のエネルギー準位と、準位間の遷移過程を取り入れている。ここで、2電子系の励起状態(1snl、2l'nlと3l'nl)の占有密度を1s2、1s、2l、3l状態からの寄与を独立に求め、1s2、1s、2l、3l状態の占有密度の線形和として取り扱い、2電子系の励起状態の速度方程式を、準定常状態を仮定して解くことで求めた。1s2、1s、2lと3l状態の間の実効的な速度係数は、求めた2電子系の励起状態の占有密度を用いて定式化することが出来る。こうして定式化された実効的な速度係数に対して次の2つの性質を持つことが期待される。1つは粒子保存則から得られる速度係数和に対する等式、もう1つは、直接遷移だけでなく間接的な遷移に対しても、高密度プラズマで、詳細釣り合いが成立するということである。今回構築したモデルは、数値計算の結果、この2点の性質を満たす結果が得られ、計算機コードの信頼性が確かめられたといえる。
 1s-2lに対する実効的な励起速度係数は、高密度で間接的な寄与が直接励起より重要になる。ref.[4]で、この間接的な寄与は、2電子性捕獲一梯子様励起・電離過程1s→2l'nl→2l'n"l"→…→2l'に相当することが示されている。本論文で、1snl状態を取り入れた衝突輻射モデルの構築により、2電子性捕獲一梯子様励起・電離が直接遷移を超える高密度領域では、1s→1snl→2l'nl→2l'n"l"→…→2l'という間接的な遷移が重要になることが分かった。この寄与は、1s状態から1電子励起状態1snlへの再結合した後、2電子励起状態へ励起し、梯子様一励起・電離が起こるためである。この間接的な寄与により実効的な速度係数は、高密度で密度増加に従い、電子密度に比例して増加する。2電子励起状態3l'nl18-21励起に対する共鳴の寄与は、低中密度で直接励起の10%程度(Z=6,T e=3.5×10 5 K)になり、高密度で梯子様励起・電離過程が、自動電離確率の高い低励起状態まで影響する為に減少することが確かめられた[7]。またこの減少は、1s-3lに対する実効的な励起速度係数の増加になることが確かめられた。
 実効的な2l-1s脱励起速度係数は、ref.[4]から高密度で2l'->2l'nl->2l'n"l"->…->1sという間接的な寄与が重要になると考えられる。しかし、今回構築したモデルから、中高密度で1電子励起状態1snlから1s状態への電離が重要になることが分かった。また2s-1s脱励起に対しては、中間密度領域で2snl-2pnl間のl-changing遷移も重要になることが分かった。即ち2s-1s脱励起に対する間接的な寄与は2s-2snl-2pnl-1snl-1s、2p-1s脱励起に対する間接的な寄与は、2p-2pnl-1snl-1sである。3l-1s脱励起への2電子励起状態3l'nlからの寄与は、低中密度で直接脱励起の30%程度(Z=6,Te=3.5×10 5 K)である。特に、3l-3l'nl-1snl-1sという2電子励起状態3l'nlを経由した1電子励起状態1snl殻の電離は、中間密度で直接脱励起と同等の間接的な寄与を与えることが分かった。実効的な再結合速度係数に対しては、2電子性再結合が重要となる温度領域では、2電子励起状態間の衝突よりも1電子励起状態間の衝突による密度効果がより影響することが分かった。
 Rosme j等[6]によるレーザー生成プラズマからのH様MgイオンのX線スペクトルには、2電子励起状態からのサテライト線が測定されている。本論文で構築した衝突輻射モデルを用いて、スペクトル線解析を行った。その結果2l2l'状態からのスペクトルは比較的一致の良い結果が得られた。電離平衡プラズマを仮定することにより、実験結果をよりよく再現できた。2l3l'と2l4l'状態からのスペクトルについては、更に詳しく調べる予定である。
 衝突輻射モデルで高リドベルグ状態から連続状態へ遷移する領域のエネルギー準位の取り入れ方はまだ完全に解決していない。また固体密度に近い高密度領域では、圧力電離によるエネルギー準位の低下、高リドベルグ状態と連続状態との関係などが、上記で得られた実効的な速度係数へどのように影響するかが問題となる。今後これらの問題を解決する予定である。, application/pdf, 総研大甲第593号}, title = {2電子励起状態を含んだ衝突輻射モデル}, year = {} }