@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000524, author = {松下, 啓行 and マツシタ, ヒロユキ and MATSUSHITA, Hiroyuki}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {磁場閉じ込め装置を用いて核融合発電を実現するためには、プラズマを一億度以上に加
熱して核融合反応を起こし、 D-T反応によって生成される高エネルギーのa粒子による高
温プラズマの維持が必要である。現在の高温プラズマ実験ではプラズマを加熱する手法と
して中性粒子入射(NBI)加熱が広く用いられており、これまでに多くの成果をあげてい
る。 NBI加熱ではプラズマ中に高エネルギー粒子を入射し、衝突緩和過程を通してその運
動エネルギーを背景プラズマに移行させる事によりプラズマを加熱している。そのため高
エネルギ-粒子が衝突緩和する過程の途中で損失すると、十分にプラズマを加熱する事が
できない。プラズマを加熱するためには、高エネルギー粒子の閉じ込め時間が減速時間よ
りも十分長いという条件が必要となる。

 トカマク装置においては磁場酎位に軸対称性が存在するため、角運動量保存による良好
な粒子閉じ込めが保証される。そのためトカマク装置においてはMHD不安定性に起因す
る異常損失が存在しない場合、高エネルギー粒子の閉じ込めは概ね古典的な解釈で説明で
きる。一方へリカル装置においては非軸対称リップルの存在により粒子軌道は軸対称系に
比べて複雑になり、高エネルギー粒子のリップル輸送とロスコーンの存在が閉じ込めに関
して大きな影響を及ぼす。これまでのCHS実験において、接線入射された高エネルギー粒
子の振る舞いは東山サイトにおける重水素ビーム入射実験等により調べられ、概ね古典的
であるとの結果を得ている。一方、垂直入射された高エネルギー粒子についても実験が行
われており、 へリカルリップル捕捉粒子のドリフト軌道と磁気面が一致する配位(磁気軸
位置87・7cm)において重水素ビーム入射実験が行われた。垂直入射された36keVの重水素
イオンの粒子閉じ込め時間は0・2ms程度であり、減速時間の35msに比べて著しく短いと
いう結果を得た。実験結果よりロスコーンの存在が示唆されるが、その空間構造までは調
べられていない。

以上の結果を受け、本実験ではロスコーン構造を実験により明らかにする事を目的とし
た。ロスコーンは粒子のエネルギーとピッチ角に依存するため、これらのパラメータを制
御できる計測用ビーム(Diagnostic Neutral Beam: DNB)をCHS装置に設置した。 DNBはト
ーラス中心より1・58mの位置にあるピボット点を中心に、ビームラインを赤道面上で水平
方向に走査する事が可能である。ビームラインを走査しDNBのプラズマへの入射角を変化
させる事により、入射された高エネルギー粒子のピッチ角分布の制御を行う。ビームの発
散角は0・9°、焦点位置でのビーム半径は5cmとなっており、加熱NBI (発散角1.2°、ビー
ム半径10cm)よりも収束したビームを入射できる。

DNBによって入射された高エネルギー粒子に対し中性粒子分析器(Nautral Particle
Analyzer : NPA)を用いてエネルギー分布の計測を行った。 NPAもDNBと同様に水平方向
の走査ができるように設計し、検出する粒子のピッチ角を測定できるようにした。DNBと
NPAはヘリカル捕捉粒子を観測するために、トーラスの赤道面上で180°離れた位置に設置
している。そのため軌道損失しトーラスを周回できない粒子はNPAで観測されない。
 DNBとNPAを用いた計測によりロスコーン境界の検証実験を行った.実験に先立って
無衝突の軌道計算を用い、高エネルギー粒子の閉じ込め領域と損失領域の境界を確認し
た。計算結果より、磁気軸87.7cmの配位において28keVの高エネルギー粒子は、ピッチ角
90°付近を中心にロスコーン領域が存在し、ピッチ角が970付近に閉じ込め領域と損失領
域の境界が存在する。閉じ込め領域への入射から損失領域への入射となるように、 DNB
の入射角を接線から徐々に垂直に変化させてECHプラズマに入射する実験を行った。損
失領域においては、軌道損失にいたる特性時間は数μ秒程度であり、これらの粒子はNPA
の視線に届く前に損失すると考えられる。このことからNPAで観測される中性粒子束の変
化から、閉じ込め領域と損失領域の境界が実験によって確認できる。 NPAの視線を放電毎
に走査することにより、 DNBによって入射された高エネルギー粒子のエネルギースペク
トルをピッチ角分布も含めて詳細に計測した。その結果NPAで観測される粒子束はDNB
の入射角に依存し、計算で求めたロスコーン境界を境に観測される中性粒子束が急激に減
少する様子が観測された。 HFREYAコードを用い粒子の電離点を求め、閉じ込め領域に入
射された粒子の数をDNBの各入射角について比較すると、実験で得られた中性粒子束の
DNB入射角依存性とほぼ一致した。 DNBの入射エネルギー成分(28keV)に対応する
高エネルギー粒子に関してはロスコーン損失が確認されたが、 1/3エネルギー成分
(9.3keV)の粒子は閉じ込められている様子が観測された。

 同様の実験を磁場配位を変えて行う事により、ロスコーン境界の違いを観測できるか確
認した。 CHS装置では磁気軸96.2cmの配位では軌道計算により求められたロスコーン境界
がピッチ角105°付近になり、磁気軸87.7cmの配位よりも損失領域が広くなる。磁気軸
96.2cmの配位においても観測される中性粒子束のDNB入射角依存性は計算と一致し、内寄
せ配位よりも広いロスコーンが実験によって観測された。磁気軸96.2cmの配位では1/3エ
ネルギー成分の粒子に関しても軌道損失している事が確認された。

次に観測されたエネルギースペクトルの傾きから、高エネルギー粒子の閉じ込め特性を
調べた。エネルギースペクトルの傾きは高エネルギー粒子のエネルギー減衰と損失時間の
比で決まるため、 Fokker-Planck方程式の定常解におけるエネルギー減衰の項の表式を用い
てエネルギースペクトルにフィッティングを行い磁気軸87.7cmの配位における粒子損失の
特性時間を見積もった。粒子損失の特性時間はDNBを閉じ込め領域に入射している時は
6ms程度であったが、損失領域に近づくにつれて徐々に短くなっていった。これは損失領
域近傍の粒子ほどわずかなピッチ角散乱によって容易に損失する事を示している。

以上のようにDNBとNPAを用いた計測を行い、高エネルギー粒子の閉じ込め領域と損失
領域の境界近傍に存在する粒子の閉じ込め特性を実験的に調べる事が可能となった。実験
的に観測した高エネルギー粒子のロスコーン境界は軌道計算によって求めた境界とほぼ一
致し、磁気軸を変えてロスコーン形状を変化させた場合、実験によってその変化分が観測
された。エネルギースペクトルの傾きから高エネルギー粒子損失の特性時間を見積もる
と、垂直入射された粒子に関しては内寄せ配位においても1ms以下となる事からCHS装置
においては30keV程度の高エネルギー捕捉粒子を閉じ込める事が困難であると考えられ
る。 10keV程度のエネルギーを持っ粒子に関しては内寄せ配位による閉じ込め改善が観測
されており、ラーマー半径の影響が閉じ込め特性に大きな影響を与えていると考えられ
る。, application/pdf, 総研大甲第928号}, title = {計測用ビームと中性子分析器を用いた高エネルギー粒子閉じ込めの研究}, year = {} }