@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000526, author = {若林, 英紀 and ワカバヤシ, ヒデノリ and WAKABAYASHI, Hidenori}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {非中性プラズマは高エネルギー、高密度粒子の閉じ込めや異種粒子の同時閉じ込
めなど、宇宙物理から先進的核融合炉にいたるまで広い範囲への応用が期待される
基礎学理である。また、非中性プラズマは本質的に自己電場を有し、それと外部磁
場との相互作用によりExBドリフト流を必ず伴うため、近年核融合プラズマなどに
おいて注目されている[流れのあるプラズマ」の視野を広げるものとしても期待さ
れている。
 非中性プラズマを閉じ込める方式には、磁場と電場を外部から印加する直線型、
非中性プラズマの自己電場によるドリフトを実効的な回転変換として利用する純ト
ロイダル型、そして磁気面を利用する磁気シア型などがある。その中でも、トーラ
ス磁気面配位における非中性プラズマの生成は、任意の非中性度のプラズマを閉じ
込めることができるなどの利点があるため、上記の応用への第一歩として近年注目
されている方式である。磁気面配位には大きく分けて内部導体系(軸対称系)と外
部導体系(非軸対称系・ヘリカル系)がある。本研究では、核融合科学研究所のコ
ンパクトヘリカル装置(CHS)中に非中性プラズマを生成し、その特性を調べた。
 閉じた磁気面内に電子プラズマを生成する際には、粒子の入射方法が一つの重要
な研究テーマとなる。そこで、本研究ではヘリカル磁場配位の外縁部に存在するス
ト力スティック領域に注目し、その領域に電子を注入することにより磁気面内部へ
の侵入を引き起こす方法を試みた。
 実験セットアップは以下の通りである。導電性セラミック素材であるLaB6を熱
陰極とし、平行平板型の電極を持つ電子銃を、ヘリカル磁場の最外殻磁気面外側に
あるスト力スティック領域内に挿入する。熱陰極に~28Aの電流を流して熱電子を
生成し、電極間に印加した~1kVの電位差により加速して、電子ビームとして空間
内に射出する。CHS装置の磁場強度は最大900Gを用いており、内部の真空度は5
×10-8Torr程度、磁気面内にプラズマの存在しない真空磁気面配位に対して電子ビ
ームを注入する。一方、磁気面内に侵入した電子の電流や空間電位分布等はプロー
ブにより測定する。プローブはTh-Wのコイル型フィラメントを先端の電極とし、
電極と電源を結ぶ導入線はコルツの絶縁鞘で包まれている。このプローブのフィラ
メントを交流電流により加熱し、高インピーダンス(100MΩ)の抵抗を接続すると
エミッシブプローブとして使用できる。また、フィラメントを加熱せず、バイアス
電圧を印加した状態でプローブに流入する電流を測定すると、シングルプローブと
しての使用が可能である。
 上述のプローブを用いて磁気面内部における電流分布を測定した結果、ビームの
射出を開始してから100μs以下程度の時間で磁気面深部まで電子が到達しているこ
とが確認された。上述の真空度においては、これは中性衝突などの時間スケールよ
りも有意に短い。また、CHS磁場配位をシミュレートした電子の軌道計算を行った
ところ、1kV程度の運動エネルギーを有する電子がスト力スティックから磁気面内
部へ侵入するような軌道が存在しないことも確認している。そのため、この侵入現
象は単なる単一荷電粒子の軌道運動では説明がつかず、何らかの無衝突侵入機構が
働いて磁気面外部から内部への電子輸送力弓1き起こされたものと考えられる。また、
入射電流を増加させると、それに伴い内部に生成される非中性プラズマの密度は増
加する。しかし、その密度には上限があり、その上限は主に電子の加速エネルギー
により決定されることがわかった。内部に生成された非中性プラズマの密度は磁気
面全体の平均で1012~13-3程度、空間電位の最大値は1kV程度である。
 上述の侵入現象により磁気面内部に生成された非中性プラズマの特性を調べるた
め、空間電位の分布をエミッシブプローブで測定した。基本的に、空間電位は磁気
面内部へ行くほど大きく、加速電圧と同程度となり、外縁部では小さい。これは電
子注入により磁気面内に径方向電場(~ポロイダル方向の流れ)が生成されたこと
を直接的に示している。
 また、プローブ駆動機構のストロークを伸ばし、プローブが磁気面を貫通する形
で、各磁気面上の2点で空間電位を測定することにより、磁気面の上で空間電位が
一定になっていないという結果を見出した。具体的には、加速電圧が1kVのとき、
磁気面上で最大200V程度の電位差が生じる。
 磁気面と等電位面のずれ(=磁力線に平行な方向の電場の存在)は、核融合プラ
ズマなどの中性かつ高密度な状態では極めて考えにくい。しかし、以下の考察によ
り、有限温度、低密度な非中性プラズマではそのようなずれが生じうるということ
がわかる。まず、単一荷電粒子群などの非中性プラズマが温度を持たない場合、磁
気面のような有限領域に閉じ込めると互いに反発し、系全体の静電エネルギーを最
小にする静電平衡の状態に達する。この状態で磁気面上の電場はOである。しかし、
非中性プラズマが有限の温度を有すると、熱運動によって静電平衡の状態から外れ
て電荷が再分布するため、磁力線に沿った方向の電場が発生することになる。これ
は自己電場による斥力と圧力勾配による力の平衡状態であり、このように、分布を
偏在化させる自己斥力という効果が存在するのが、非中性プラズマの大きな特色で
あると言える。
 以上のとおり、本研究ではヘリカル磁気面内に非中性プラズマを生成し、その特
性を調べた結果、有限温度の非中性プラズマならではの[磁気面と等電位面のずれ」
という状態が存在することを実証した二これは粒子閉じ込めの観点から言えば、粒
子のドリフト面と磁気面のずれにより閉じ込め悪化に繋がるものである。磁気面配
位において非中性プラズマの長時間閉じ込めを試みる際には、有限温度の効果や、
プラズマと壁との配置(=鏡像電荷の影響を左右する)等に関して十分に注意する
必要がある。, application/pdf, 総研大甲第930号}, title = {ヘリカル系における非中性プラズマの生成と空間電位の磁気面上不均一分布}, year = {} }