{"created":"2023-06-20T13:20:03.006758+00:00","id":53,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"e5dd7b44-23f8-49a4-9374-914484367bbc"},"_deposit":{"created_by":1,"id":"53","owners":[1],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"53"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:ir.soken.ac.jp:00000053","sets":["2:426:4"]},"author_link":["7447","7448","7446"],"item_1_creator_2":{"attribute_name":"著者名","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"野元, 美佐"}],"nameIdentifiers":[{"nameIdentifier":"7446","nameIdentifierScheme":"WEKO"}]}]},"item_1_creator_3":{"attribute_name":"フリガナ","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"ノモト, 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金銭に関する従来の人類学的研究は、金銭の取引には個人の欲求を満たすための短期サイクルと、社会秩序や道徳を再生産するだめの長期サイクルが一つの文化内に存在し、その社会が短期サイクルと長期サイクルを金銭のコンバージョンを通してうまく接合させていることを明らかにしてきた。しかしその静態的モデルがいかなる場合に可能となり、いかなる場合に壊れ、変化するのかについては十分に論じられていなかった。こうした問題意識にたって、本論文では、首都ヤウンデに暮らすバミレケ都市移住民の金銭をめぐる諸活動を中心に考察した。\n まず、第1、第2章では、バミレケ都市居住者の背景について記述した。第1章では、バミレケの首長制社会の構成について述べ、多くの人がなぜ故郷バミレケ・ランドを離れたのか、故郷の側から考察した。高度にヒエラルキー化したバミレケ首長制社会の構造は、若者や貴族以外の者たちに犠牲を強いてきた。ヒエラルキー下部の者達のバミレケランドから都市への「空間的移動」は、彼らに自由な商業空間を与え、農民から商人へという「社会的移動」をも生んだ。第2章では、都市の側から移住について論じた。バミレケは、ヤウンデの人口の約3割を占めると言われるが、多くのバミレケはそこでの生活を一時的な出稼ぎとは考えず、そこで自分の暮らしの基盤を立てようとする。彼らは資金を貯め、自分の家や賃貸用の家をヤウンデに建てる。彼らが不動産取得に積極的なのは、故郷バミレケ・ランドの土地が稀少であり、土地の価値を知っているからである。このようにバミレケは、流入人口の多さと経済力によりヤウンデの都市化に大きく貢献してきたと言える。その反面、彼らは政治的に力をもたず、またその経済力故に、他のエスニック・グループからは疎ましい「よそ者」としてみられがちである。しかし彼らは「よそ者」であるがゆえに、「自由に」商売ができるという側面もある。このような両義的な存在であるからこそ、都市居住者バミレケの金銭の動きには独自性があるのである。彼らの金銭の回し方をまとめると次の三つに大別できる。\n 一つは、金銭の量の変化、つまり金銭を増やすことを目的とした回し方(短期サイクルでの金銭の循環)である。これは第3章で論じた、商売を通して行われる投資である。バミレケの大企業家や富豪は、貧乏な家に生まれながらも、自らの才覚で零細企業から出世したと言われる。つまり、露天商から大富豪へというステップアップは不可能ではない。バミレケはわずかな資金を元手に小規模自営業をはじめ、時間や金銭の無駄を最小限にくい止め、増やした金銭は常に次の新しい計画へと投資する。彼らは、幼少期より商売を経験することで、金銭への態度や価値観、資本主義的性向を身につけてきた。その商売と価値観は「バミレケ=商売の民」という偏見を生みだしてきたが、バミレケ商人たちはこの偏見を商売への高い資質と読みかえ、肯定的な自己イメージをつくる。一方、他のエスニック・グループ事業主は、バミレケのエスニツクな商才を否定し、誰でも獲得できる一般的なものとして、手法や姿勢を学び取ろうとする。バミレケは他のエスニック・グループとの関わりのなかで、バミレケ・アイデンティティを再生産させている。\n 二つ目の金銭の回し方は、金銭の意味を変える目的で行うもので、第4章で論じるトンチン(頼母子講)を通して行われる貯蓄である。バミレケのトンチンは主に、資金蓄積という経済的側面が注目されてきたが、金銭支払いを義務づけるそのシステムが人を連帯させるという社会的側面もある。トンチンへの参加は都市のバミレケ同郷者組織において義務である。この参加の強制は、金銭を稼ぐという個人的行為を集団的行為とし、義務化、奨励することでもある。つまりトンチンは、金銭獲得をひとびとに要求し、個人が獲得した金銭を一時集団のものとすることで、「利己的」に稼いだ金銭を共有化された金銭へと変化させる。金銭獲得行為を正当化することで、トンチンは商売の場を保証するのである。\n 三つ目の金銭の回し方は、金銭の価値を変える目的で行うものである。第5章で論じるように、バミレケ都市居住者は死者祭宴に時間や労力、金銭を費やす。死者祭宴は死者への義務を果たすことであると同時に、自分の成功や財を顕示するだめの機会である。また都市居住者は故郷に家を建てるが、そこに居住する者は数少ない。経済的価値のない村の家を建てることは、都市における成功の証明と村の発展への貢献という象徴的価値をもつ。同様に、象徴的価値を持つ貴族の称号は、都市の成功者たちから望まれ、購入される。これら一連の彼らの行動は、高い社会的地位を得るだめの投資である。しかしこれらの投資は時として、村のヒエラルキーを混乱させ、土地問題を引き起こすなど、村の秩序を変形、破壊する方向へと作用する。バミレケ都市居住者は、都市の商売で獲得した金銭(つまり短期サイクルで得た金銭)を村の伝統維持(長期サイクル)のために回そうとする。しかしそれが、村の社会的秩序や道徳性の再生産・維持ではなく、時として破壊を導くのは、彼らの故郷が、実際の村そのものではなく、彼らが都市で作り出した括弧付きの「故郷」だからである。つまり、彼らは確かに短期サイクルから長期サイクルへと金銭を回しているが、その長期サイクルは、村の長期サイクルとリンクしていない。そのリンク先は、「故郷」という都市の長期サイクルだったのである。\n これをみれば、バミレケ都市居住者の金銭の循環は、都市における短期と長期サイクルが接合した静態的な図式を描いているようである。しかし彼らの得た短期サイクルの金銭は、いったん「実際の」村で回り、そこから都市の長期サイクル「故郷」へ戻るという手続きを踏んでいる。その迂回を省くことができないのは、都市の「故郷」が、「実際の」村への投資によってしか維持されないからである。その複雑な構造は時に暴力性を持ち、村に残るひとびとに作用し、都市の共同体を揺るがせる。その暴力性は、都市で生きること、金銭を稼ぐことの過酷さを反映している。しかし、このような都市居住者の持ち込む金銭による村の秩序・道徳性の破壊は、これまで言われてきたような貨幣経済化による伝統の破壊とは異なる。彼らは金銭を自在に操ることができるわけではないが、だからといって金銭に操られるばかりでもない。金銭を回すことには創意工夫する余地があるのである。","subitem_description_type":"Other"}]},"item_1_description_18":{"attribute_name":"フォーマット","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"application/pdf","subitem_description_type":"Other"}]},"item_1_description_7":{"attribute_name":"学位記番号","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"総研大甲第565号","subitem_description_type":"Other"}]},"item_1_select_14":{"attribute_name":"所蔵","attribute_value_mlt":[{"subitem_select_item":"有"}]},"item_1_select_8":{"attribute_name":"研究科","attribute_value_mlt":[{"subitem_select_item":"文化科学研究科"}]},"item_1_select_9":{"attribute_name":"専攻","attribute_value_mlt":[{"subitem_select_item":"02 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