@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000531, author = {川越, 明史 and カワゴエ, アキフミ and KAWAGOE., Akifumi}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {超伝導現象が発見されてから1世紀近くが経過した今日、超伝導技術を
応用した様々な機器が開発されている。核磁気共鳴画像診断装置や半導体
引き上げ装置、磁気分離装置などはすでに実用化され実際に稼動している。
またリニアモーターカーは、いくつもの技術課題を順次克服し、実用化の
一歩手前まできている。さらに、核融合実験装置用の大型超伝導マグネッ
トや高エネルギー物理実験用の加速器も稼動している。この他、トランス、
電力貯蔵装置、発電機、搬送装置など、超伝導技術を産業へ応用するため
の研究開発も進められている。
 すでに実用化されている超伝導機器は、主に直流用途のものであるのに
対し、産業用に使用されよう とする機器のほとんどは、交流運転やパルス
運転を行うものである。そのような機器の運転中には、一般に大きな交流
損失が発生し機器の効率を低下させるため、その低減が必要である。さら
にクエンチ(超伝導機器内の一部が超伝導状態から常伝導状態に移り、そ
の領域が制御不能な状態で広がること)が起きないように、安定性の向上
も必要である。しかしながら、交流損失の低減と安定性の向上を目指す設
計指針は本質的に相矛盾するものであり、低いコストでこれらを両立する
ことは非常に難しいとされている。
 一方、超伝導機器の冷却に液体ヘリウムや液体窒素などの冷媒を使用す
る場合、取り扱いの煩雑さに加え、冷却システムのトラブルが起こる可能
性があるため、その対応には高度の専門性が要求される。したがって、実
用化のためには、機器の運転に伴うユーザーへのこのような負担を軽減す
ることも必要である。
 以上のように、産業分野で使われよ う とする超伝導機器の開発の成否は、
(1)安定に稼動するかどうか、(2)経済的に成り立つかどうか、(3)
ハンドリングが容易かどうか、にかかっている。
 これまでに開発されている超伝導パルスコイルのうち、材料費の安い低
温超伝導線材を用いたものは、冷媒を使用する浸漬冷却型や強制冷却型で
ある。ユーザー への負担を劇的に低減できるとされている冷媒を使用しな
い伝導冷却型の超伝導パルスコイルは、材料費の高い高温超伝導線材を用
いたものしか開発されていない。以上のような理由から、コストの安い
NbTiなどの低温超伝導線材で作製する伝導冷却型の低温超伝導パルスコ
イルの実現が望まれている。しかしながら、低温超伝導線材の臨界温度が
低いために、パルス運転時に発生する大きな損失によって短時間でクエン
チに到るという不安定性の問題を解決できず、その実現には到っていない。
 本論文は、革新的な伝導冷却型低温超伝導パルスコイルの開発と、その
性能評価を行った一連の研究をまとめたものである。まず、低損失で高安
定な伝導冷却型の低温超伝導パルスコイル開発のための要素技術として、
新しいコイル巻線方法とそれに適した導体構造の提案を行った。この巻線
方法は、撚り線構造を持つ導体の素線間接触抵抗を非常に小さくおさえて
安定性を高めても、損失が低減できるという画期的なものである。しかも
この導体構成をとることによって、従来から制御が困難とされてきた素線
間接触抵抗の影響を排除し、導体を設計どおりに作製することを可能にし
た。また、ダイニーマ®FRPとリッツ線をコイルスペーサーとして使用す
ることで、低コストでありながら、伝導冷却に必要な高い伝熱特性を確保
した。これらの結果、世界で初めて伝導冷却型の低温超伝導パルスコイル
の開発を行い、そのパルス運転に成功した。さらに、開発したコイルの性
能評価まで行った。まず、交流損失特性の評価を行うために、冷凍機の冷
却能力からコイルの交流損失が評価できることを見出した。次に、伝熱特
性の評価を行うために、ANSYSを用いて、2次元有限要素法を用いた解析
モデルを作成した。これらの性能評価手法を用いて、本研究で提案した導
体構造やコイル巻線方法の効果と、ダイニーマFRP®やリッツ線の効果を
明らかにした。つづいて、以上の結果から、開発したパルスコイルの安定
性裕度を明らかにした。その結果から、本パルスコイルが安定に出力でき
る限界を示した。
, application/pdf, 総研大乙第156号}, title = {伝導冷却型低温超伝導パルスコイルの開発と特性評価及び最適設計に関する研究}, year = {} }