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ため、金属粉体に対して有限要素法による電磁場解析を行った。その結果、マイクロ波
が金属粉体の試料内部へ浸透して電流を誘起し、そのジューヲレ損失を通して金属粉体が
加熱されることを理論的に初めて実証した。
マイクロ波による金属粉体の焼結や冶金は、従来の外部からの熱伝導による加熱と比
較して物質のバルク発熱を利用するため、短時間で加熱できる。物質を加熱するために
はマイクロ波が物質中に浸透する必要がある。バルク金属では表皮効果のためマイクロ
波は表皮にしか浸透しないため、表面だけ加熱される。1999年になって金属を粉体にす
ることでマイクロ波により完全焼結できることが報告された。その理論的な解釈として
2004年にRybakovらが導電性粉末材料のマイクロ波加熱をMie散乱により説明を試み
た。
本研究では有限要素法による電磁波伝播の理論解析において、微小な領域で電磁場を
計算する方法を構築した。これをMie理論で扱える1μm~10μm径の単粒子の場合につ
いて計算を行い、Mie理論と比較してその精度が定量的に十分であることを検証した。
続いて多体系の金属粉体をモデル化して、マイクロ波が浸透する様子を計算して、浸透
現象と発熱量を定量的に求めた。
具体的には、まず導波管の中に置かれた金属粉末を想定して導波管モードの電磁場解
析を検討したが、導波管モードと微小な物質では空間スケールが異なるため、有限要素
法を用いると多くのメモリと計算時間がかかる。他方、導波管のサイズを小さくすると
カットオフが発生して電磁波が伝播しない。この困難を克服する計算方法として平行平
板モードを用いることで、ミクロンサイズの試料について定量的な加熱過程の解析が可
能となった。
有限要素法の誤差は要素分割の細分化の程度による。特に表皮効果のように非常に短
い距離で指数的に電磁場が減衰すると粗い分割では大きな誤差が生じる。このため要素
の種類とサイズを変えてジュール損失を計算し、結果が要素サイズによらない条件を求
めた。
実験では金属粉体が電場より磁場のほうで速く加熱されることが確認されている。こ
の現象を理論的に調べるため、反射壁付近での定在波を用いて電場と磁場を分離するこ
とで、電場と磁場の効果を論じることができる。半径が1μm~10Fmの金属球を1個だ
け配置して、有限要素法とMie理論の両方で計算を行い、数四の金属球に対して磁場
が誘導電流を励起してこれがジュール損失して加熱が起きることを証明した。また、ジ
ュール損失は球半径が表皮深さの2.5倍で最大になることを見出し、加熱に最適な粒子
径があることを示した。
つぎに、金属粉末に電磁波が浸透する問題を調べるため、100μm×100μm×216μmの
領域に半径6μmの銅粒子を4μmの間隔で475個配置して有限要素法で計算した。この
ときマイクロ競は金属粒子の内部まで浸透し、その減衰長が約50cmになることを求め
た。マイクロ波が試料内部まで浸透しない条件は金属粒子間が接触することであり、そ
の場合は遮蔽電流が生じ表面で反射する。実験で金属粉体が電気的に接触しない状況は
表面が酸化膜で覆われている場合である。この様子を亜鉛の球、その粒界を酸化亜鉛で
埋めてモデル化した計算で、大きなエネルギー損失が発生し、マイクロ波の粉体への浸
透距離が短くなることを定量的に求めた。
ところで、単体球のMie理論計算と実験計測において、銅の場合では直径3μm以上
で理論値より実験値が大幅に少なくなる。我々はMie理論計算が単体の損失を体積比
でN倍して評価する方法に問題があると考えた。つまり金属粉体が多数存在すると金属
粒子間の電磁場が単体球のときと比べて変化する。この推測のもと、粉体の密度を変え
て計算することにより、密度が大きぐなると体積当りのジュール損失が少なくなること
を証明した。
有限要素法による電磁波解析のさらなる応用として、東北大学からの依頼を受けて、
粉末試料を圧縮焼結する電場加熱用アプリケータと磁場加熱用アプリケータの装置に
ついて電磁場解析を行い、その装置の改良方法について提言を行った。
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