@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000555, author = {吉田, 和生 and ヨシダ, カズキ and YOSHIDA, Kazuki}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {Cu(In,Ga)Se2(CIGS)は、半導体の中でも高い光吸収係数を持つ材料のひとつであり、この材料を光吸収層として用いたCIGS太陽電池は、変換効率において19.5%を達成している。CIGS太陽電池のセル構造は約3μm程度の厚さであることから、金属箔、ポリィミドフィルムを基板とすることでフレキシブルな太陽電池を得ることができる。また、近年の研究成果において、CIGS太陽電池は、Si、GaAs電池よりも高い耐放射線性を有していることが報告された。これらCIGS太陽電池の高効率、軽量、高い耐放射線性は宇宙用太陽電池として、期待される特性である。地上における電子線照射試験では、CIGS太陽電池の電気特性が劣化しないことが明らかとなっており、陽子線照射によって劣化した電気特性は低温の熱処理を行うことで回復することが報告されている。これまで、CIGS太陽電池内の陽子線照射によって誘起される欠陥準位は、アドミッタンススペクトロスコピー、過渡容量分光法、光音響分光法によって解析が行われたが、明瞭な結果は得られていない。また、この太陽電池は、CIGS光吸収層、CdSバッファー層、ZnO窓層からなる複雑なヘテロ接合構造であるため、各層の陽子線照射による劣化と熱処理による回復のメカニズムの解析は困難となっている。そのため、CIGS太陽電池の陽子線照射による電気特性劣化はホール効果測定による多数キャリア濃度の変化から議論されてきた。しかしながら、ホール効果測定では、CIGS薄膜試料の形態に対してのみ適用可能であり、太陽電池セル構造を評価することはできない。フォトルミネッセンス(PL)測定は、太陽電池を構成する半導体中の欠陥準位を非破壊、非接触、高感度にて検出することが可能であり、多層デバイス構造の解析に有効な評価法である。
 本出願論文では、PL測定における励起波長を調整し、CIGS太陽電池のCIGS、CdS、ZnO層を選択的に励起し、各層からのPLを分離して観測することに成功した。CIGS層では、陽子線照射により、バンド端近傍の発光帯強度が大きく減衰し、深い準位に起因する0.8eV発光帯が誘起された。それに続く熱処理では、0.8eV発光帯が減衰することを見出した。また、太陽電池セル構造となったCIGS層でも薄膜と同じ陽子線照射、熱処理回復効果が起こっていることを示した。未照射のCdS層から135eV、ZnO層からバンド端発光帯を捉えることができた。陽子線照射により、CdS層からの発光帯は減衰し、ZnO層からの発光帯は検出限界以下となった。これら発光帯は、熱処理によって、照射前と同程度まで回復することが明らかとなった。このようにCIGS太陽電池の各層において陽子線照射劣化、熱処理回復効果があることを見出した。
 陽子線照射したCIGS層からの0.8eV発光帯の起源となる欠陥準位は、太陽電池の電気特性の劣化と回復に大きく影響していると考えられる。そのため、CIGS薄膜における0.8eV発光帯強度と多数キャリア濃度を比較した。これより、0.8eV発光帯の起源は、ドナー型の欠陥準位であり、p型キャリアの補償センターとして働いており、同準位の発生と消失がCIGS太陽電池の劣化と回復のメカニズムに寄与していると結論された。更に測定波長帯域を0.5eVまで拡張した熱処理前後のスペクトル形状解析では、0.8eV発光帯の起源は、複数の欠陥準位であることを解明した。
 PLマッピング測定では、CIGS太陽電池における各層の結晶性の均一性評価を行った。これにより、CIGS、CdS層の作製プロセス中に発生した不均一性を非破壊にて明らかにした。更にPLイメージングによって、CIGS、CdS層における均一性の測定時間を大幅に短縮し、簡便にCIGS太陽電池が評価可能であることを実証した。
 近年、CIGS太陽電池は量産、販売されるまでに至った。しかしながら、この太陽電池の作製プロセス技術は完全には確立されておらず、不均一性による問題等から発展途上である。本論文では、選択励起PLによる評価が、CIGS太陽電池の高品質化とともに、放射線照射効果の解明を通じた耐放射線性の向上において、極めて大きく貢献できる解析手法であることを明らかにした。, 総研大甲第1133号}, title = {フォトルミネッセンス法を用いたCu(In,Ga)Se2太陽電池の陽子線照射誘起欠陥準位の解析}, year = {} }