@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000561, author = {佐伯, 宏 and サエキ, ヒロシ and SAEKI, Hiroshi}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {本文は、電子貯蔵リングにおいて、ビームダクト内のマイクロパーティク
ルが電子ビームへ吸収され、ビーム寿命を急激に短縮させる現象について述べ
たものである。
 高エネルギー物理学研究所のトリスタン電子・陽電子衝突リングの入射蓄積
リングARでは、電子貯蔵運転中にビーム寿命が突然短縮し、そのまま復帰し
ない現象ならびに短時間のビーム寿命の短縮がしばしば観測され、ビームダク
ト内に残留するマイクロパーティクルのトラップによると思われるビーム電流
値の微少現象がしばしば観測されている。 こうした現象は、精密化した物理実
験やシンクロトロン放射光利用実験にとって大きな障害となり、世界各地の電
子貯蔵リングで大変な問題となっている。 しかしながら、マイクロパーティク
ルのトラッピング現象の本格的な観測や実験、その理論的考察などについては
ほとんど行なわれていなかった。 そこで、 ビーム寿命が短縮する現象は、トラッ
プされたマイクロパーティクルがビーム軌道周辺で運動するためと推測し、 A
Rにおいてその機構解明を試みた。
 ビームダクト内に残留するマイクロパーティクルは、光子の散乱照射による
光電子放出で正電荷を与えられ、電子ビームがつくる電場の吸引力によりトラ
ップされると考えられる。また。トラップされたマイクロパーティクルと電子
ビームとの衝突では、残留ガスによる制動放射に比べてはるかに多量の制動放
射(ガンマー線)を観測することができると期待される。さらに、数秒間程度の時間範囲
での制動放射を観測することで、ビーム軌道周辺でのマイクロパーティクルの
運動が推測できると考え、鉛ガラスカウンターを使用した制動放射の観測を行
なった。 その結果、観測例は2例であるが、ビーム寿命が短縮し持続した状態で、
電子ビームのバンチ信号に対応した高エネルギーの制動放射の信号、マイクロ
パーティクルがビームを上下に通過したと考えられる時間幅0.1-0.2ms
の信号と特徴的な2連の1-2秒周期性のある信号を観測した。 また、観測
された信号の電圧は6.5GeV (ビームエネルギー)のガンマー線のそれよ
りはるかに高いものであった。 さらに、観測結果からマイクロパーティクルが
0.05-0.2m/s の速度で電子ビームの進行方向に移動していることが
観測された。
 一方、ARにおけるマイクロパーティクルのトラップする条件、トラップさ
れうる大きさとそのビーム軌道周辺での運動の解析をMarinの式を用いて
行なった。 ビーム直下にマイクロパーティクルが存在し垂直上方に電気的に吸引
されると仮定して解析した。 それらの電荷をQ(Coulomb)、質量をm
(Kg)、電子ビームにより作り出されるビームダクト底面における電場を
E(V/m)とした場合、 ARにおけるマイクロパーティクルのトラップする
条件として得られたQE/mの値は1.85×105(Newton/Kg)となっ
た。パーティクルの表面に現れる電荷は光子エネルギーに依存する。 ビーム
ダクト内で採取されたマイクロパーティクルの多くはアルミニウム系とチタン
系で、吸収されうるパーティクルの大きさを試算した。 それらの形を球形とし
た時の計算では、材質がアルミニウムの場合、最大粒径は約100ミクロンで、
チタンの場合は約70ミクロンであった。 マイクロパーティクルのビーム軌道
周辺での運動を単純な垂直振動とした計算で、その運動周期は約0.7秒とな
り、2例の観測結果とほぼ一致した。
 ARにおいて、実際のビームダクトとイオンポンプ内で採取したサンプルの
マイクロパーティクル(サイズ50-100ミクロン)を挿入してのトラッピ
ング実験を行なった。 9回の実験で4回、サンプルのいくつかが電子ビームにト
ラップされたと考えられる短時間のビーム寿命の短縮とビームのバンチ信号に
対応した高エネルギーの制動放射の信号、マイクロパーティクルがビームを通
過したと考えられる信号を観測した。ビーム寿命の短時間の短縮は、トラップ
されたマイクロパーティクルが、ビーム損失による発熱で破壊されるためと推
測する。 また、 ARにおいてビーム寿命が回復しない場合は、マイクロパーテ
ィクルが発熱により破壊されずビーム軌道周辺を運動し続ける為と考えられ
る。
 ARにおいてビーム寿命が短縮した場合、2連の周期1-2秒の高エネルギ
ーの制動放射を観測した。 マイクロパーティクルのビーム軌道周辺での運動周
期は観測値とほぼ一致した。 また、トラップを考慮してビーム寿命を計算した
ところ観測値とほぼ一致した。 従って、ARで発生するビーム寿命が短縮し持
続する現象はマイクロパーティクルに起因していると結論できる。, application/pdf, 総研大甲第30号}, title = {電子貯蔵リングにおけるマイクロパーティクルのトラッピング現象の観測と解析}, year = {} }