@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000578, author = {奥田, 正彦 and オクダ, マサヒコ and OKUDA, Masahiko}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {本研究は高周波同軸マグネトロンスパッタ法により作製したNb膜の特性(特に高周波残留抵抗の発生の原因となるNb膜の柱状結晶組織)と成膜条件の関係を明らかにしたものである。さらには、電鋳法を用いたシームレスCu空洞の開発により、電鋳銅空洞にNbをスパッタ成膜したLバンド(I.5GHz、l.3GHz)Nb/Cu超伝導空洞が有用であることを実証した。
 高周波空洞内に大きな電界をつくろうとすると、空洞壁をながれる高周波電流による損失が電界の2乗に比例して大きくなり、空洞壁を冷却することが難しくなるので、大きな高周波電力を供給できない。このために、常伝導空洞を用いたシンクロトロンでは最大加速電界が1.5MV/m程度に制限されており、リニアックでパルス運転を余儀なくされている。この問題を解決するために超伝導空洞が開発され、KEKでは1980年代後半にトリスタン主リング用508MHz超伝導空洞が世界にさきがけて実用化された。この超伝導空洞は、高加速電界が要求されるリニアコライダー、大電流のピーム加速が要求されるBファクトリーやニュートロンスパレーション用陽子リニアックなどに応用できる。また、高電界(大きな蓄積エネルギー)での運転により質の良いビームを得られることから、自由電子レーザーにも適している
しかし、理論から予測されるNb空洞の最大加速電界は、50~60MV/mであるのに対して、現状では10~30MV/mにとどまっている。この原因は、フィールドエミッシ∃ンや空洞壁での局部的な常電導転移による空洞のクエンチである。もう一つの問題点は製作コストが大きいことであり、製作コストそのものの削減に加えて、運転電界を上げることにより転位加速電界当たりのコストを下げることが要求されている。その対策として、表面処理の工夫により常伝導転移部の発生原因になる空洞表面の欠陥を少なくし、残留抵抗比が大きいNb材の使用により空洞壁の熱伝導度を大きくして発熱の放散を促す努力がなされている。もう一つの方法は熱伝導度が大きい銅を持ちいて空洞を作り、内面のスパッタ法を用いてNbを成膜する方法である。このNb/Cu空洞の利点は、以下のようにまとめることができる。
a)空洞熱の熱伝導率が大きいために局部的な発熱に対して安定である。
b)パイプ冷却が可能であるのクライオスタットの構造が簡単になる。
c)他の高Tc材料(NbTi,NbN,Nb3Sn,YBaCuO)にも応用が可能である。
 しかしながら、現状では残留抵抗が大きいためにQ値が低下するという問題がある。本論文では、これらの原因は膜中の不純物、ミクロな剥離、スパッタ膜特有の柱状結晶組織にあると考え、スパッタ法により作製したNb膜の特性と成膜条件の関係を把握することを主な目的とした。この試みは残留抵抗の発生源の究明につながり、Nb/Cu空洞の問題点の解決あるいは限界は見極める上で意義のあることである。
 まず初めに、スパッタ法の基礎に立ち返り、Nb/Cu空洞の成膜方法と成膜条件について基礎的な検討を行った。スパッタ法の特徴は(蒸発法に比べて)、スパッタ原子が数~数100eVの比較的大きなエネルギーを持ていること、膜が数~数100eVのイオンや電子の衝撃を受けること、雰囲気に0.1から10Paの比較的高い圧力のガス分子が存在することである。この特徴を活かして高純度Nb膜を製作するには、高周波マグネトロンスパッタ法が有利であり、バックグラウンド圧、Arガス圧、成膜速度、基板温度が膜質に影響を与えると判断した。またスパッタ膜の形態ゾーンモデルから、Nb膜では低Arガス圧高基板温度(0.1~1Pa、300~500℃)で柱状結晶組織が著名なゾーンlから緻密なゾーンTに遷移すると予想した。
 つぎに、上述の検討に基づき、高周波同軸マグネトロンスパッタ法を用いたNb/Cu空洞専用成膜装置を開発した。この成膜装置の特徴は、Lバンドシングル空洞に対して、低バックグラウンド圧(1X10-5~3×l0-5Pa、300℃)、高成膜速度(~1mm/s)で、広範囲の基板温度(100~450℃以上)、Arガス圧(0.1~15Pa)を設定できることにある。
 つぎに、空洞内面に厚さが一様で高い密着性を持つNb膜を作製する方法について検討した。高Arガス圧では一様なNb膜を作製することができるが、低Arガス圧ではピームパイプ部のグロー放電が不安定になり成膜ができない。そこで高Arガス圧でピームパイプ部の成膜を行ったの地低Arガス圧で空洞部の成膜を行う方法と、磁石を移動させながら低Arガス圧で成膜する方法をとることで問題を回避できることを示した。また、成膜前に200から300℃で空洞を加熱することにより、液体窒素温度と室温間のヒートサイクルに対しても剥離のない高密着性のNb膜を得ることができる。しかし、温度が高すぎると膜表面にCuが拡散することが明らかになった。
 つぎに、Nb膜の特性について調べた。到達圧カを10-5Pa以下にすると、Nb膜中の不純ガス成分量はNbバルクと同程度まで減少し、臨界温度はバルク以上の値を示した。この結果は、開発した成膜装置により不純物の少ないNb膜を作製できることを示している。高Arガス圧(1~10P)では膜の柱状結晶組織が著しくなりボイドが見られるのに対して、低Arガスでは膜が緻密になり、予想通り膜の形態がゾーンlからゾーンTに遷移することを確認した。柱状結晶組織の往の大きさが大きいゾーンlのNb膜ほど直流電気抵抗特性に優れており、柱が小さいゾーンTでは低下した。高周波特性は緻密で結晶粒界の結合が強いゾーンTの法が優れていると考えられるが、直流電気抵抗特性の測定結果は逆の傾向を示した。この結果から、直流残留抵抗と高周波残留抵抗の相違点に着目して、高周波残留抵抗の発生原因について考察した。ゾーンlでは基板のCu成分の表面拡散が多く、膜表面のCuが高周波残留抵抗の発生の原因になりえる。そこで、基板温度を上げることなしに電気特性に優れた緻密な膜を得る方法としてバイアススパッタを試み、空洞成膜への適用の可能性について検討した。
最後に、Lバンド(1.5GHz,1.3GHz)Cu空洞にNb成膜を行い、Nb/Cu空洞の高周波超伝導特性を調べた。Cu空洞の製作では電鋳法を用いることで空洞部の溶接継ぎ目をなくし、電界研磨により鏡面仕上げを行った。この電鋳銅空洞の適用により、表面の欠陥による特性劣化の因子を無視できるようになった。Q測定値の結果、残留抵抗は大きい(~120nΩ)ながらも、フィールドエミッシ∃ンなしに最大10.4MV/m以上の加速電界を達成し、電鋳銅空洞にNbスパッタ成膜したNb/Cu超伝導空洞が有用であることを実証した。, 総研大甲第115号}, title = {Study of Niobium Sputter-coating forSuperconducting Nb/Cu-cavities}, year = {} }