@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000599, author = {筒井, 裕士 and ツツイ, ヒロシ and TSUTSUI, Hiroshi}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {ほとんどの線形加速器や円形加速器では、陽子や電子などの粒子を加速するために大電力の高周波(RF)を用いる。そのRF電力源として主にクライストロンが使われている。クライストロンは電子銃、高周波入力部、集群部、出力部、コレクタ、集束磁石からなっている。電子銃で作られた電子ビームは高周波入力部で速度変調を受ける。集群部は速度変調した電子ビームを集群化する部分で、そこにはいくつかのRF空洞と呼ばれる金属製の空洞があり、それらは集群化を助ける作用がある。集群化した電子ビームは出力部を通る。出力部もRF空洞であり、そこにはカプラーというアンテナもしくは穴があり、それを通じて大電力のRFが外部に取り出される。出力部を通りすぎた電子ビームはその後コレクタによって捕獲される。また、電子同士の反発力(空間電荷力)で電子ビームが途中で広がってしまうのを避けるために電磁石もしくは永久磁石で軸方向の集束磁場を作る。
 現在、TeV領域の高エネルギー物理学実験のために、電子と陽電子を線形加速器で加速して衝突させる装置(JLC/NLC)の研究が日本の高エネルギー加速器研究機構(KEK)や、米国のStanford Linear Accelerator Center(SLAC)で進んでいる。今までの電子線形加速器ではS-Bnad(2.856GHz)が使われており、これに使われるクライストロンは主にSLACで開発された。周波数を高くすると単位長さあたりの電子や陽電子の加速電圧を高くすることが出来ることが知られているので、JLC/NLCでは敷地面積やコストを下げるためにS-Bandより4倍の周波数のX-Band(11.424GHz)の線形加速器の研究がなされており、それに使われるX-Bandクライストロンの開発が進んでいる。
 X-BandではS-Bandと同程度の電流の電子ビームを数分の1のサイズでコレクタまで通さなくてはならないので、より強くなった空間電荷力で電子ビームが広がるのをどう押さえ込むかが大きな問題となる。さらに、X-Bandでは電界強度も高めになり放電の可能性も高い。S-Bandでの設計は主に1次元のシミュレーションコードを用いられており、微妙な部分は経験で補ってきたが、X-Bandでは電子ビームの振る舞い、電界強度や出力を精度よく見積もる2次元ないし3次元のシミュレーションが求められる。3次元のシミュレーションは2次元に比べて計算時間がはるかにかかるので、現在は2次元のシミュレーションが現実的である。2次元のシミュレーションコードはいくつかあるが、それらは軸対称性を破っているカプラーをモデル化するために‘ポート近似’という手法を用いている。X-Bandのクライストロンの出力空洞は電界強度を下げるために多セル構造になっておりポート近似では取り扱うことができないので新しい手法が必要になる。われわれはその手法を開発した。この論文は多セル構造を2次元モデル化するその手法を述べたものである。
 まず、近似的にカプラーが空洞のモードと出力する矩形導波管のTE10モードとのモード変換器と考えて、その変換係数としてS行列を定義した。空洞のモードは動径方向に広がっていくモードでありポートの断面が一定でないため、HFSSなどの通常のシミュレーションコードでは直接S行列を計算することができない。そのため、周波数領域で解く方法を考え出した。
 その方法は、進行波は2つの定在波の重ねあわせで書け、逆に定在波は2つの進行波の重ねあわせで書けることを用いている。元々進行波に関する変換係数であるS行列に関する式を定在波に関する式に書き直した。矩形導波管内の定在波は、ある面でショートすることによって得られる。定在波の位相はショート面の位置を変えることにより変化できる。空洞のセル内の定在波はセル間の穴を閉じてセルの中心部に無損失の誘電体を入れることによって得た。位相は誘電率を変化させることにより変化できる。周波数領域のシミュレーションコードを用いて定在波を立たせ、その共振周波数を用いてS行列を求めた。
 次に、S行列に対応する2次元構造を抵抗体を配置することにより作った。シミュレーションでの出力は抵抗体の手前でポインティングベクトルを使って計算した。
 現存するKEK8、9号機のシミュレーションでは、電子銃から出力部まですべてMAGIC2Dという2次元のシミュレーションコードを用いて計算し、飽和出力に関して最大で10%の精度で測定と合うことが確かめられた。ロシアの1次元シミュレーションコードでは数10%ずれていたので、シミュレーションの精度がかなり上がったことになる。SLACのXL-4のシミュレーションも行ったが、この場合も5%の精度で実験と合った。
 次に、このシミュレーション方法を用いて10号機の設計を行った。集群部と出力部を9号機から変更することにした。集群部に関しては、RF空洞をひとつ増やして集群化がさらに進むようにした。さらにRF空洞の共振周波数を振ることによってクライストロンのバンド幅を100MHz程度に広げた。出力部に関しては8号機、9号機やSLACのXL-4ではπ/2というモードを使っていたが、10号機では2π/3というモードを使うことにした。こうすると出力空洞の体積を大きくすることができて最大電界強度が小さくなる。MAGIC2Dのシミュレーション結果では10号機は出力120MW、最大電界強度が85MV/mであり、SLACのXL-4の75MW、100MV/mより出力が高く最大電界強度が低い。この通り動作すれば世界で最大出力のX-Bandクライストロンができることになる。, 総研大甲第365号}, title = {Two Dimensional Modeling of Klystron TravelingWave Type Output Structure and its Empirical Justification}, year = {} }