@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000611, author = {来島, 裕子 and キジマ, ユウコ and KIJIMA, Yuko}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {本研究は、超伝導空洞へ大電力を入力できるカプラ開発を行い、超伝導空洞の大電流加速応用への道を開くことを目標とする。大電流を安定に加速・運転できるよう、カプラ内でのマルチパクタリングや放電の要因を解明するとともに、表面処理方法、コンディショニング方法についてその手法を確立する。
 大電力用のカプラの開発を進めるにあたり、KEK B-factory(以下、KEKBと略す)の超伝導空洞用入力カプラの実用化をそのターゲットとした。KEKBは、8GeV電子(HER)と3.5GeV陽電子(LER)の衝突型リングを加速器でB中間子の大量発生が目的であり、電子は1.1A、陽電子は2.6Aの大電流をリングに蓄積する必要がある。超伝導空洞は、1.1Aの電子加速に使用され、300kW級のパワーをビームに供給することになる。超伝導空洞用のカプラにおいて、KEKB以前には200kW以上のパワーを入力し安定にビーム加速を行った例は無く、KEKBでは全反射300kW級の大電力用カプラの開発が必要であった。さらに、窓破損などの事故を防止することに加え、トリップの少ない長期安定な運転を実現することが望まれる。特に4K低温運転中は空洞がクライオポンプの役割を果たし、カプラ近傍で真空圧力が上昇するとその放出ガスが空洞Nb表面に凝縮し、空洞性能を劣化させる可能性がある。また空洞のウォームアップ時には逆に空洞Nb表面の凝縮ガスが放出されカプラ含め空洞内は10-2Pa台の高い圧力となり、カプラ表面のコンディショニングが必要になる。このように、表面状態が空洞性能に及ぼす影響が大きく、低温であるという超伝導特有の問題が発生する。したがって、安定な運転のためには放電やマルチパクタリングによる放出ガスを抑え、表面を清浄に保つことが要求される。そこで、マルチパクタリングや放電のメカニズムを解明するとともに、表面処理、コンディショニング方法を確立することが重要になる。
 以上のような要請をふまえて本論文は以下の研究内容番こついて述べている。
 まず大電力カプラの開発を行いそのパワー試験を実施した。加速の運転条件からカプラの結合係数、運転時の入力パワーなどの基本パラメータを設定し、トリスタン用のカプラを出発点とし、電界および発熱について検討、その形状を決定した。また、カプラのコンディショニング用スタンドを整備しハイパワー試験を行い、最大870kWまで入力できることを確認すると共に、発熱、表面処理とコンディショニング状況等の基礎実験を実施した。その結果、開発したカプラは大電力用カプラとして運転可能であると判断し実運転に採用した。
 次に、安定なビーム運転を目標として、カプラ形状に起因するマルチパクタリング現象をシミュレーション解析より評価した。KEKBの同軸構造では300kW以下の入カパワーでマルチパクタリングの発生するパワーレベルがある事がわかった。また窓部でも低いパワー領域でマルチパクタリングが発生する可能性がある。
 大電力のパワーを入力した時のカプラ内の現象を研究するため、超高真空でモニタを強化したカプラのテストスタンドを新たに製作し、シミュレーション結果と概ね一致する結果を得た。窓付近での放電現象はセラミック窓表面でのマルチパクタリングにより誘起され、放電の光発生と同時に大きなエネルギー吸収が起こり、破損につながる可能性のあることがわかった。
 マルチパクタリングの発生するパワーレベルが存在することから、表面状態を把握するためカプラに使用した内表面の二次電子放出係数の測定を行い、マルチパクタリングを抑制する方法について考察する。カプラのコンディショニングでは電子発生後に真空悪化が観測されることから、電子による表面のクリーニング効果があると考えた。そこで、金属表面に電子を照射したときの二次電子放出係数の測定を行い電子の照射量10-3C/mm2で二次電子放出係数が70%に減少する結果を得た。二次電子放出係数の大きいセラミック窓はTiNコーティングにより二次電子放出係数が2以下に下がることを確認し、またその後のロウ付け工程で表面が汚染され、その除去のためにはオゾン水洗浄が効果的であることを示した。
 さらに、マルチパクタリングの抑制とコンディショニング方法について検討を進めた。電子照射によるコンディショニングの効果を利用し、マルチパクタリングを誘起するバイアス電圧を印加したコンディショニング方法を考察した。これまではCERNでマルチパクタリングを抑制するのに用いていたが、これをコンディショニングに利用するものである。シミュレーションの結果から全反射状態では、マルチパクタリングを発生するのは軸上の節と腹の狭い領域に限られており、バイアス電圧を印加することにより広い領域が電子照射される事がわかった。カプラ内の全領域にマルチパクタリングを誘起し効率的にコンディショニングするにはバイアス電圧印加した方法が効果的である事が明らかになった。このようなコンディショニングを行った後は、カプラ内の真空圧力上昇は見られず安定に運転することができる。
 本研究結果よりカプラの製作、表面洗浄およびコンディショニングを実施し、KEKBのビーム運転を行っている。KEKBの超伝導空洞は安定にビームを加速し、ビーム電流870mA、ビーム運転での最大入力パワーは380kWに達している。これは超伝導空洞用のカプラとしては、世界でも最高の水準であり、安定なビーム運転を実現すること番こ成功している。, application/pdf, 総研大甲第572号}, title = {超伝導空洞用大電力入力カプラに関する研究}, year = {} }