@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000612, author = {斎藤, 究 and サイトウ, キワム and SAITO, Kiwamu}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {希ガスは絶縁性がよい、放射線損傷に強い、密度・形状を自由にできるなどの理由から放射線検出器媒体として用いられ、電離・ジンチレーション過程について研究がなされてきた。しかしながら、検出器からの出力の大きさの評価、エネルギー分解能の評価と言った実用の面ばかりではなく、放射線のエネルギー消失過程を電離とは別の側面から理解するという放射線物理学的見地からも重要である絶対蛍光効率に関しては、発光が真空紫外領域にあるという測定の困難さからほとんど知られていない。本研究の目的は希ガスシンチレーションの光子数測定から絶対蛍光効率を求めその圧力依存について明らかにすること、イオンと電子の再結合を起源とする発光と励起原子を起源とする発光を分離測定し、おのおのの光子数を求め、放射線の物質中でのエネルギー分配機構に対する知見を得ることである。
 常圧以上での希ガスシンチレーションでは励起状態の2原子分子が基底状態の原子に解離するときに放出される光子が主となる。励起状態の2原子分子が生成される過程には2つある。一つは励起原子が起源となり、2つの原子との3体衝突によって励起状態の2原子分子が生成される過程であり、もう一つはイオンと電子が再結合を経て励起原子となりその励起原子から2原子分子が生成される過程である。励起原子を起源とする発光と電子・イオン対の再結合過程による発光の波長は同じであり、発光をみるだけでは区別が付かない。そこで、希ガス媒体中に電場を印加し、再結合過程を排除することにより励起原子を起源とするシンチレーション光子のみを測定することが可能となる。
 実験はアルゴン、クリプトン及びキセノンについて行い、α線源として241Amを用いた。ジンチレーション強度の圧力依存性を解明するために、1気圧から10気圧まで圧力を変えて実験を行った。絶対蛍光効率を示す値としてはWs値を用いた。Ws値とは1シンチレーション光子を生成するのに必要な平均エネルギーとして定義される値である。
 シンチレーション光子数測定実験では、光子の波長に対する量子効率が既知の光電管を用いた。ジンチレーション光子数を求めるためには光電管の光電面からの光電子数、光電面における光子の収集効率、希ガスの発光スペクトルに対する光電面の平均量子効率を求める必要がある。
 光子の収集効率を正確に決定するために、発光点の周囲から反射を経て光電面に入射する光子数が、直接発光点から光電面に入射する光子数より無視できるほど小さければ、収集効率は光源の光電面を見込む立体角より求まると考え、発光点から見る光電面以外の壁に黒アルマイト処理を施した光吸収体を設置した実験装置を製作し実験を行った。電子数で校正した水銀パルサーとチャージターミネー夕から電荷有感型前置増幅器に一定量の電荷を供給することにより、波高値は電子数に変換することができ、光電面からの光電子数を求めることが出来る。平均量子効率は光電面の波長に対する量子効率と希ガスの発光スペクトルより計算する。希ガスの発光スペクトルについては古くから測定されてきたが真空紫外領域の発光のために波長に対する測定系の検出効率の標準化は困難であり、発光スペクトルの正確な強度分布の測定は行われてこなかった。平均量子効率を正確に決定するためには発光スペクトルの強度分布を正確に知る必要があるため、波長に対して検出効率が既知の分光器、検出器を用い、独自に発光スペクトルの測定を行った。
 イオンと電子の再結合を起源とする発光を排除し、励起原子を起源とする発光のみを測定するためにグリッド型電離箱を導入し、電離電子とジンチレーション光子の同時計測を行った。
 アルゴン、クリプトン及びキセノンの発光スペクトル測定の結果、真空紫外領域に単一のピークをもつスペクトルであり、紫外領域にはほとんど発光が無いことを明らかにした。また、可視光領域にのみ感度を持つ光電子増倍管を使用しシンチレーションを観測したところ光電子増倍管からの信号はなく、可視光域にも発光は無いことを確認した。以上より、常圧以上での希ガスシンチレーションは励起状態の2原子分子からの発光が主であると結論づけられる。
 アルゴン、クリプトン及びキセノンのジンチレーション光子数測定からWs値を求めた結果、Ws値は圧力に依存し、圧力の増加と共に減少して行くことを明らかにした。希ガスの蛍光効率は液体希ガスに比べて高くないと言われてきた。しかしながら7気圧のキセノンのWs値は報告されている液体キセノンのW5値とほぼ同程度の値を示し、更に圧力が増加すると液体キセノンより小さい値となることを明らかにした。10気圧のキセノンにおけるWs値は14.6eVである。
 電離電子・ジンチレーション光子同時測定において、放射線によって発生する電子数(Ni)の絶対測定よりアルゴン、クリプトン及びキセノンの1気圧から10気圧の圧力範囲では、発生する電子数は圧力に依存しないことを明らかにした。放射線によって発生した電子を完全に収集したときの発光は励起原子を起源とする発光であるが、その発光量に圧力依存はないことを明らかにし、圧力の増加に伴う発光量の増加は電子・イオン対の再結合発光過程によるシンチレーション光子数が圧力と共に増加していくためであることを明らかにした。励起原子が全て発光に寄与したとするならば励起原子を起源とする発光の光子数は励起原子数(Nex)である。Nex/Niは放射線のエネルギーの電離と励起への分配機構を明らかにする上で重要であり、Nex/Ni,をアルゴン、クリプトン及びキセノンにおいて、それぞれ実験的に求めた。アルゴン、クリプトン及びキセノンにおけるNex/Niについて実験的に求めた報告例はほとんどなく、アルゴンについて理論的に計算で求められているのみである。本実験より得たNex/Niから励起原子が全て発光に寄与し、電子・イオン対が全て差結合し発光した場合のWs値(Ws,min)が求まる。その値は報告されている液体アルゴン、液体キセノンの消光過程が無い場合のWs値と良く一致した結果となった。あるエネルギーの放射線によって生成される電子・イオン対の数は気体状態と液体状態の希ガスでは異なり、Nex/Niの値も気体状態と液体状態では異なる。また、液体希ガスはバンド構造を示すと報告されている。このように気体状態の希ガスと液体希ガスでは放射線のエネルギー分配機構が異なるにもかかわらず、Ws,minと液体希ガスのWs値が一致するという結果を得た。, application/pdf, 総研大甲第573号}, title = {希ガスの絶対蛍光効率のその圧力依存性}, year = {} }