@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000620, author = {藤野, 武夫 and フジノ, タケオ and FUJINO, Takeo}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {超伝導空洞は高周波電流による表面発熱が少ないので大電力を供給して高加速電界が得られる。また連続運転が可能で効率の良い加速器利用ができる。1965年に初めてスタンフォード大学で超伝導空洞を作り電子を加速して以来、超伝導加速器に対する多くの研究がなされた。その結果、これまでに超伝導空洞はKEKのTRISTAN、CERNのLEP-II、DESYのHERA等の大型ストレージリングに応用された。そして現在では大量のB中間子を生成するために大電流のビームを加速してルミノシティーを高めた装置のKEKBや新粒子探索のために500GevからTev領域の高エネルギー化を目指した線形加速器を建設するTESLA計画のためのテストファシリティー等に超伝導空洞が採用されている。このうちのTESLA計画は全長33kmの電子と陽電子の超伝導リニアコライダーで、25MV/m以上の加速電界と8x10 9以上のQ値が得られる高性能な1.3GHzの9セル空洞を2万台以上使う大規模な加速器建設である。このような大計画に、二オブ板を深絞りしてハーフセルを作り、電子ビーム溶接で組立てる従来の空洞製作法では、多量の二オブ材消費と多くの煩雑な電子ビーム溶接工程により、材料費と製作費が高額になり莫大な建設費用を必要とする。TESLAのような大規模な加速器の建設計画を実現させるためには高性能で安価な空洞を開発することが課題となる。このような背景から、筆者は高性能を保証しながら、材料費と製作費の削減が可能な空洞として、二オブ・銅クラッドシームレス空洞の実現を提案した。これは厚内鋼材に薄肉二オブ材を接合したクラッド材を一体成型してシームレス空洞を作るもので、クラッド材とシームレス構造を組み合わせた新しい発想によるものである。本研究では、その製作方法として、1)板状のクラッド材からスピニング法を用いてシームレス空洞を作る方法、2)管状のクラッド材からハイドロフォーム法でシームレス空洞を作る二つのアイデアを提唱し、その早期実現のためにスピニング成型についてはイタリアのINFN-LNL研究所、またハイドロフォームについてはドイツのDESY研究所と共同研究を行った。そしてそれらの空洞の性能評価については米国Jefferson Lab研究所と共同研究を行った。KEKで測定したスピニング法によるクラッド空洞の加速電界は30MV/mが達成された。またハイドロフォーム法で製作したクラッド空洞は、KEKで測定した空洞が32MV/m、Jefferson Labで測定した空洞は40MV/mの加速電界に達した。これらの性能は従来の溶接構造の二オブ・パルク空洞と同等なものであり、このように早期に高性能性が達成されたことは、本研究で提案したクラッド材からシームレス空洞を製作する方法は高性能性が保証されることを実証するものである。次に筆者は、空洞の量産に向けた新しいクラッド管の製作法を提案し、製作実証試験を行った。TESLAタイプの9セル・クラッドシームレス空洞の製作に必要な長尺クラッド管の製作方法としてHIP接合によるCu/Nb(溶接管)/Cuの厚肉サンドイッチ構造のクラッド素管を製作し、その素管を引き抜き技術を使って伸管するアイデアを実験した。この実験では、670mm長さの素管を約3000mmの長さまで伸管した。こうして9セル空洞のハイドロフォームに必要な2000mmの長さのクラッド管を作ることに成功した。クラッド管の試作から管の製作コストを算定し、9セル空洞一台当り94万円以下の材料コストに抑えられることを示した。これは従来の溶接構造のニオプバルク空洞の製法に比べて、材料費を約1/3に低減でき、非常に画期的方法と言える。更に、HIP以外のクラッド方法の検討として爆発圧接法により溶接ニオブ管と銅管の爆着試験を試み、460mm長の爆着クラッド管を試作した。これらのHIP及び爆着クラッド管から1.3GHz単セル空洞をハイドロフォーム法で成型し、成型性の確認試験を行った。ここで提案したクラッド管の製作法による材料品質については、このクラッド管から成型した空洞を低温性能試験をして評価する必要力くあり、HIP引抜き管から成型した空洞を低温測定した。また比較として、引抜き工程を含まないHIPのみで作ったクラッド管及び爆着クラッド管から製作した各空洞を低温測定した。この結果、二オブ管の溶接欠陥と表面欠陥が原因と思われる低い性能であった。先に示したように、シームレスな二オブ管を用いた爆着管から成型した空洞の性能が良いことと、同じ爆着管でも溶接二オブ管を使用した場合に性能が悪いことから、性能向上に向けて二オブ管の溶接法を改善し、二オブの肉厚を増量して十分な表面処理を行えるクラッド管を現在準備中である。しかしこの管を成型した空洞性能の評価は本論文提出時にはまだ結論を出せず、溶接二オブ管を用いたHIP引抜きクラッド管の品質については残された課題である。これら一連の研究成果は、TESLAのような将来の大規模な加速器建設に応用することで、性能を低下することなしに経済的な加速器建設を可能にする。本研究はこの点に意義がある。
 以下に本論文の構成とその概要について述べる。本論文は13の章で構成し、第1章ではTRISTAN以降の超伝導高周波加速器の動向を述べ 時代とともに高性能化且つ大型化しつつある現状を紹介した。そして性能的にも、経済的にも大規模な加速器の建設に対処できる超伝導空洞として、筆者は銅と二オブのクラッド材から成るシームレス空洞を提案し、この空洞の正当性を早期に実証するためにKEK、INFN-LNL、DESY、Jefferson Labの4研究機関と国際共同研究を行ったことを述べた。また本研究の目的及び意義について述べた。
 第2章では空洞を製作するに当り、重要な空洞のパラメータを理解するために、共振振動数が1300MHzの場合のTM010波に於ける解析から、円筒空洞の半径を8.83cmに、長さを11.54cmに決定し、この形状に関するQ値、表面抵抗(Rs)等、この形状に関するパラメータを計算して求めた。これらの値はSUPERFISHプログラムを用いた計算機による計算結果と良く一致することを確認した。また共振振動数について、解析値と測定値及びSUPERFISHで求めた値がほとんど一致することを確認した。SUPERFISHに関して、メッシュサイズを0.3cmに選ぶと共振振動数の変動は、銅空洞のQ値を求める際に測定する共振振動数の半値幅程度の量になることを調べた。また、Lバンドの単空洞の各パラメータの値をSUPERFISHで計算して示した。
 第3章は空洞製作の立場からマイスナー効果や完全導電性超伝導等の一般知識をまとめた。また、超伝導高周波空洞の加速電界を制限する原因は臨界磁界であることを述べた。
 第4章では空洞製作技術に欠かせない空洞の表面処理の方法について述べるとともに、空洞の性能を制限する現象を説明して、これを取り除くための表面処理の方法を示した。
 第5章では超伝導空洞の性能測定法を説明し、空洞の低温試験方法について詳細に述べた。
 第6章では筆者が提案した空洞の優位性を示するために、深絞りと電子ビーム溶接で製作する従来法、スパッタリング法、スピニング法、ハイドロフォーム法の各空洞の製作法を紹介し、それらの製作上の問題点を指摘した。そして、これらの方法で製作したニオブバルク空洞(スパッタリング法を除く)の典型的なQ値と加速電界の例を示した。なを本論文では空洞製作とその性能評価は不可分と位置付けており、この章で示したニオブ・バルク空洞の性能(スパッタリング法を除く)は筆者がKEKで低温測定した。
 第7章ではKEK、INFN-LNL、DESY、Jefferson Labの共同研究に於いて、二オブと銅の爆着クラッド材からスピニング法及びハイドロフォーム法で製作したシームレス空洞の性能測定の結果を示した。爆着クラッド管をハイドロフォーム法で製作した空洞(INC2)は加速電界が40MV/m、Q値が2x10 10を得て、筆者の提案する空洞が高電界に達することを立証した。また、スピニング法によるクラッド空洞(KENZO-2)の外部磁場による影響は1mGauss当り0.56nΩの表面抵抗の増加であることを測定で求めた。
 第8章は将来の9セル空洞に必要な長尺クラッド管の量産を目的として、HIP接合によるCu/Nb/Cuの3層構造の厚内クラッド素管を引抜き法で伸管して長尺のクラッド管を製作する方法を筆者は提案した。この章ではこの製作試験に関して詳細に述べた。そして、この方法の問題点や経済効果を示した。
 第9章「爆着クラッド管の試作」この章ではクラッド法の比較検討の目的で行ったHIP接合とは別のクラッド法の爆着によるクラッド管の接合試験について説明した。
 第10章ではKEKが独自に開発したハイドロフォームによるクラッド空洞の製作について述べた。そして試作した空洞の低温測定の結果を示した。二オブ管の溶接欠陥や表面欠陥が原因していると思われる低い性能であった。これに関して、性能向上のための二オブ管の肉厚増量と溶接改善をしたクラッド管を現在準備中である。
 第11章ではクラッド材の圧延性、機械的性質等を調査した結果について報告した。これにより、二オブを銅で包むことにより銅の伸びに追従して二オブが伸びて、二オブ単独よりも成型性が向上することが判った。
 第12章では二オブと銅のクラッド管をハイドロフォーム法で加工した場合の9セル空洞の製作コストは溶接構造の従来法の1/3であることを示した。
 第13章では本論文のまとめと今後の課題について述べた。, application/pdf, 総研大乙第110号}, title = {ニオブ・銅クラッドシームレス超伝導高周波加速空洞の研究}, year = {} }