@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000621, author = {堀, 利匡 and ホリ, トシタダ and HORI, Toshitada}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {背景:
 1980年代に半導体記憶素子DRAMの大容量化が進み、LSI回路の微細化で線幅がサブミクロンの時代に突入した頃、従来の光リソグラフィーでは波長に起因する分解能の限界に近づいており、次世代の半導体量産技術としてX線リソグラフィーが有望視されていた。その新手法に適した新しい光源(大強度軟X線源)として、産業利用を主眼にした小型放射光源(SRリング)の研究開発が80年代中頃から民間企業の間で盛んになった。学術研究用のSRリングと異なりエミタンス等ビームの基本特性に重きを置かず、X線リソグラフィーに適した波長~1nmのフラックスが適度の指向性と共に高強度で得られ、かつ操作と保守が容易な安定した光源として小型化を目指す動きであった。従来の光に代えて半導体製造工業に導入できる短波長光源を念頭においた実用的X線源の開発である。著者が所属していた住友重機械工業(株)で開発された超小型SRリングシステムはAURORAと命名され、その理念は以下のようなものである。
・ 小さなシステムで、シンプルな構成であること。
・ 操作が容易で安定に動作し、かつ信頼性の高いものであること。
・ 制作費や運転経費など、コストパフォーマンスに優れた装置であること。
本論文では民間企業が独自に進めた小型SRリング開発の過程において、特に入射器の研究開発の経緯に焦点を絞って記述した。入射器の機種選定から初号機の製作、その改良から性能の達成、更には2号機から4号機の製作を通して安定した性能を発揮できる産業用装置として完成に至るまでの経緯について詳述する。

入射器の概要:
 SRリングにとって標準的入射器はライナックである力瓢AURORAでは加速エネルギー150MeVのレーストラック型マイクロトロンを採用した。入射系にパンチャーを準備しなくても引出電流5mAが得られ、ビームパルス幅0.1~3μsec、パルス繰り返し1~100Hzの基本仕様で、AURORAの入射器として妥当であるとの判断に基づく。汎用的な入射器のライナックに比べてコンパクトであるという大きな利点を有する。最大ビーム電流はライナックほと多くを期待できないが、〓E/Eが±0.1%と高品質である。
 基本概念はWisconsin大のSRリングAladdinの入射器100MeVマイクロトロン(後に108MeVに増強)の設計に準拠した。主たる相違点は、電子銃を始めとする前段入射系、周回部の集束系、加速管のタイプ、ビームモニター系、ビーム引出部等である。全く概念の異なるMainz大の原子核実験用CWマイクロトロン(3段カスケードで到達エネルギーが855MeV)を別にして、単段のマイクロトロンで世界最高の加速エネルギー150MeVを達成した。或いは、パルスマシーンとして最大エネルギーを有するマイクロトロンを完成したともいえる。
 住友重機械工業(株)で独自に開発したマイクロトロンでは、初期設計によるプロト機で数十μAの電流値しか得られなかったものの、改良後直ちに数mAの引出電流値を得た。その後、現在に至るまで入射器として安定に稼動し、機種選択の正当性を実証できた。改良設計に際して実施された入念なシミュレーションの内容について述べ、また電磁石など個別要素の概要についても併記する。既存のBT系を流用したため精度の面で改良の余地を残したが、引出ビームのエミタンスを測定する機会を得たので計算結果との比較も可能となった。これまで合計4台のマイクロトロンが製作され、すべて順調に稼働中である。最大引出電流を10mAに増強したHiSOR向けの入射器や、前段の入射系にフォトカソードRFガンを装備したミクロ単パンチ加速用のユニークな研究用マシンも実現している。まだ軌道計算だけで実現には至っていないが、引出エネノレギー倍増の300MeVマイクロトロンも従来の設計を延長すれば可能という結論を得ている。

まとめ:
・ 小型SRリングの入射器に適した世界最高エネルギーの150MeVレーストラック型単マイクロトロンを完成した。
・ 独自の計算コードによる綿密なシミュレーションを行い、パルスマイクロトロンの設計手法を確立した。また、引出ビームのエミタンス測定を行い、本設計の妥当性を実証できた。
・ 複数台の製作実績を積み重ねることにより、150MeVマイクロトロンをカタログ製品的な実用産業装置として確立できた。, 総研大乙第111号}, title = {小型放射光源用入射器マイクロトロンの研究開発}, year = {} }