@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000647, author = {山本, 風海 and ヤマモト, カザミ and YAMAMOTO, Kazami}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {本研究では、J-PARC 3GeVRCSでビームロスを局所化し、他機器の放射化を抑制する事を目的とするビームコリメータシステムの設計を行った。設計方針としては、ビームトラッキングシミュレーションを行い、それを元に構造検討を行なった。また、その構造検討結果より、実機を作成するにあたって特に重要となる大強度ビームロスによる放射線対策の研究開発を進めた。ビームコリメータシステムの構造検討では、方式としては先頭に置かれるプライマリーコリメータと複数のセカンダリーコリメータからなる2ステージコリメーションシステムを採用した。コリメータの材質として、プライマリーコリメータは散乱角度と耐熱性より水平垂直方向でタングステン、運動量方向ではカーボンを選定した。セカンダリーコリメータはビームを吸収した際の発熱を考慮し、熱伝導性の良い無酸素銅とした。それぞれの厚みは、必要な散乱角度、エネルギー損失の値より求め、それを元にビームロスシミュレーションを行い、最終的にタングステンプライマリーコリメータは1mm、カーボンは0.1mm、無酸素銅のセカンダリーコリメータは200mmとした。
 機器配置検討としては、水平垂直方向のプライマリーコリメータとセカンダリーコリメータは入射用直線部の下流に配置し、運動量方向のコリメーション用プライマリーコリメータは入射用直線部手前のアーク部に配置する設計とした。セカンダリーコリメータの台数はビーム局所化とメンテナンス時の取り扱い易さから5台とし、コリメーションの行い易いopticsに軌道設計を最適化した。
 このように設計された3GeV RCSコリメータシステムを用いたビームロス局所化の評価については、トラッキングコードSTRUCTを用いて行った。コリメータアパーチャを変化させた際に、どの程度コリメータでの局所化効率(コリメーション効率)が変動するか確認し、最適なアパーチャ比を求めた。また、電磁石の設置エラーによるCOD、およびコリメータ自身の位置エラーの影響に関して評価を行い、セカンダリーコリメータに関しては、回転方向で5度程度、位置で1mm程度の誤差があってもコリメーション効率に影響しない事が確かめられた。ハローの成長速度の違いによるコリメーション効率依存性は、プライマリーコリメータに当たる際のインパクトパラメータを変化させる事によって確認した。ハローの成長速度が非常に遅いか(衝突位置1μm以下)十分早い場合(衝突位置30μm以上)ビームロスはコリメータにかなりの効率で局所化可能である。一方、衝突位置が1μmから30μmに相当する様な速度で広がった場合には、コリメータの次にアパーチャが狭いキッカー電磁石やバンプ電磁石でのロス量が増大する。実際のオペレーションでは、コリメータアパーチャがある程度可変な設計としており、アクセプタンス比を大きくしコリメーション効率を上昇させる事で、エミッタンス増加速度の変化に対応可能である。
 これらの検討により、研究目標の一つであるアンコントロールロス1W/mを達成する高効率コリメータシステムの達成に見込みが得られた。
 次に、大強度ビームロスの局所化による放射線対策としては、遮蔽体の設計、冷却システムの検討、真空表面処理の検討を行った。
 遮蔽体の設計に関しては、STRUCTコードを用いて得られたビームロス分布からMARSコードを用いて行った。残留放射線の影響を下げる事を目的として、遮蔽体の内側を密度が大きくγ線への遮蔽効果の高い鉄、外側を放射化しづらいコンクリートというハイブリッド構造で設計を行った。結果として、コンクリート遮蔽体の外側では残留放射線量が数百μSv/hr以下に低減され、周辺での作業時の被曝量を大幅に低減する設計とすることができた。
 冷却システムの検討は、当初ヒートパイプを使用する方向で検討を進めたが、γ線照射試験を行い、数十kGyの照射線量で内部の冷媒(水)が分解し、熱伝導の機能を失う事が判明した。そこで、熱伝導の良い無酸素銅の柱をコリメータに銀ロウ付けし、それを真空外まで伸ばしそこに取り付けたフィンを空冷する方式に変更した。熱伝導に必要な断面寸法はANSYSコードを用いて評価し、製作した先行機を用いて試験を行った。その結果、計算より冷却効率は悪いものの、強制空冷用ファンを遮蔽体外に追加すれば冷却可能である事が判明し、その様に設計を変更する事で冷却性能を確保した。
 真空表面処理の検討に関しては、大強度ビームロスによるガス放出の低減および二次電子放出対策としてコリメータブロックにTiNコーティングを行い、そのTiNの二次電子特性の測定を行った。また併せてDLCコーティングに関しても評価を行った。結果としては、TiNは水蒸気ガス吸着状態で電子ビーム衝撃を与えると、二次電子放出率の悪化が見られる事が判明した。そこで、工場で組上げた段階で十分なベーキングを行うとともに、ビーム運転開始前に真空中で十分な水の除去が可能なように、チャンバー周辺にシースヒーターを巻いた状態で設置を行なった。
 これらの研究開発結果より、もう一つの研究目標である4kWのビームロスによる放射線の影響に対応できるコリメータシステムを構築する事ができた。本研究の成果により、陽子シンクロトロンのビーム出力増強を阻むビームロスの問題を回避し、ビーム性能の向上達成を確実な物とすることができた。, 総研大甲第1093号}, title = {大強度陽子シンクロトロン用ビームコリメータの開発}, year = {} }