@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000661, author = {矢吹, 亮太朗 and ヤブキ, リョウタロウ and YABUKI, Ryotaro}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {近年、光によりその巨視的秩序状態をコントロールすることの出来る新たな物質が発見され、大変に注目を集めている。この現象は、絶縁性固体中に僅か数個の光子を入射することによって、数百サイトにも及ぶ励起ドメインを自己形成し、最終的に準安定な巨視的励起状態を形成するという顕著な非線型性を示す。しかも、光により誘起される新たな秩序状態は物質によって種々であり、誘電的、磁気的及び、構造的な巨視的秩序が形成されることが実験によって確認されている。これらの光により誘起される巨視的秩序形成現象は、総じて「光誘起相転移(Photoinduced phase transition: PIPT)」と呼ばれている。PIPTに共通する特徴として、相転移効率に対する励起光強度、波長の極めて非線型な依存性が挙げられる。特に、励起光強度依存性には閾値が存在し、ある強度を超えるまでは相転移が起こらない。一方、結晶に吸収される全エネルギーを同一にして、異なる波長の光を照射した場合を比較すると、その波長に依存して相転移が起こる場合と起こらない場合が存在することが確認されている。また、一部の金属錯体や有機ポリマーでは、2種類の波長の光によって、異なる2つの相が双方向的に切り替わる現象も報告されている。こうした特徴から、PIPTが起きる物質は非線型動力学の研究対象として興味深いだけでなく、その性質を利用した次世代記憶媒体等への応用も期待されている。このようにPIPTに関する多くの興味深い現象が次々と発見される反面、その非線型性をもたらす動力学的機構については、実験的にも、理論的にも未解決の問題が数多く残されている。理論的な側面について述べると、これまでの研究の多くは、格子振動を古典的に扱い、基底状態の断熱ポテンシャルのみを考慮するものであった。この方法は、ある程度の大きさのドメインが形成された後の系の振る舞いを調べるのには好都合であるが、PIPTの初期緩和動力学の研究には十分でない。なぜなら、光により生成された高い励起状態からの緩和過程においては、頻繁に非断熱遷移が起きるからである。つまり、その物質に巨視的多重安定性が備わっていたとしても、PIPTの成否は確率的に決まるのである。従って、初期緩和過程において励起状態が効率良く増殖・拡大する条件を明らかにすることが不可欠となる。そこで、我々は格子振動も含めて系の構成要素を演算子として扱い、量子的動力学計算に基づいてシミュレーションを行った。PIPTの初期緩和動力学の研究は溝内らによって始められ、彼らは1次元多励起子モデルを用いて相転移効率が光励起状態に極めて敏感に依存することを確かめた。しかし、彼らの理論は1次元系に留まった為、如何にして励起状態が増殖・拡大するかを示す空間パターンの時間発展については未だ明らかにはなっていない。そこで、我々は2次元系における空間パターンの形成過程をシミュレートした。更に、その特徴を数学的に定量化して解析することにより、励起子が効率的に増殖する条件を調べた。その結果、光励起後に生成された励起子は、その緩和過程の極めて初期の段階において励起子間相互作用の異方性を反映した特徴的空間パターン(樹状構造)を示すことが明らかになった。その後、励起子は樹状構造を埋めるように自己増殖し、最終的には塊状のパターンが形成されることが示された。更に、我々は異方性の強さに対する増殖効率の定量的な比較を行った。その結果、励起子間相互作用の異方性が効率的な励起子増殖の条件になることが明らかとなった。, application/pdf, 総研大甲第651号}, title = {光誘起相転移におけるパターン形成のダイナミクス}, year = {} }