@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000671, author = {島雄, 大介 and シマオ, ダイスケ and SHIMAO, Daisuke}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {人類が患う代表的な関節疾患として関節リウマチ、変形性関節炎、神経障害性関節症、感染性関節炎等が挙げられる。中でも関節リウマチはあらゆる年齢の人に起こり得る慢性、自己免疫性、炎症性の関節疾患であり、病因は未だわがっていない。また、初期には手足の関節に発症することが多く、やがて全身の関節へと播種していく。手指に発症した関節リウマチが進行すると関節破壊が起こり、「箸が使えなし」、「顔が洗えない」等日常生活に重大な支障を来たすため、人生の質(quolity of life:QOL)を左右する疾患の中の1つに挙げられる。最近開発された生物学的製剤(サイト力イン阻害剤)を早期に使用することで、画期的な効果が得られるとされているが、重篤な副作用の危険もあるため、関節リウマチの早期確定診断法の確立が望まれている。現在、関節リウマチの診断には、臨床所見(手指の朝のこわばり、腫れ、疼痛)、血液検査(リウマトイド因子)、X線画像診断(骨びらん[侵食1)により総合的に行われている。しかし、従来のX線写真では関節軟骨、健、軟部組織に関する情報が少ないため手遅れになる前に関節リウマチを検出するのは困難であった。最近、超音波やMRIにより関節滑膜や健鞘の炎症が観察でき関節リウマチの画像診断能が向上しつつあるが、空間分解能が低いため、初期に好発する手指の厚さ0.5mm程度の関節軟骨の精密描写にまでは至っていない。もし、手指の関節軟骨損傷の程度を詳細に観察できる画像法が開発されれば、関節軟骨の状態による早期における関節疾患の鑑別法が確立され、関節リウマチの早期確定診断にも新たな知見を与えることになるであろう。
 そこで本研究では、通常のX線写真では描出できない関節軟骨の精密描写を目指して、被曝線量の低減を図ることができる高エネルギーx線を用いた暗視野法の開発と手指の関節軟骨欠損の描出のだめの同手法の最適化を行った。この手法は、被写体で屈折したX線を検出して画像とするものであり、屈折X線の検出にはシリコン製の薄板で作製した角度分解アナライザーを用いている。このアナライザーは、X線のフラッグ回折を利用して屈折X線を分離させる光学素子であり、走査することなく広い2次元視野が得られる点を重視してラウエ配置を採用した。これにより前方回折X線上に被写体で屈折を受けたX線による画像が得られる。ここで鍵となる操作は、入射X線エネルギーとアナライザーの厚さの調整である。X線回折の動力学的理論によると、アナライザーでのX線吸収を無視した場合、ブラッグ条件下での前方回折X線の反射率は、X線エネルギーとアナライザー厚で表される関数の余弦の2乗で与えられ0~1の間を振動する。被写体で屈折を受けないX線で構成される背景照明を抑制すると同時に、屈折角の程度に応じた濃淡を大きく付けた暗視野像を得るには、ブラッグ条件下で前方回折X線の反射率が0になるように入射X線エネルギーとアナライザー厚を調整しなければならない。最終的な画像データ取得時においては、1.2mm厚のアナライザーに対して、15°前傾による実効的アナライザー厚と36.0keVの入射X線エネルギーの組み合わせを暗視野法の条件とした。
 被写体は、御献体より切断した近位指節間関節とした。現在のところ、X線暗視野法では投影像のみが取得可能であるため、観察対象となる関節軟骨の描写には最適投影方向の検索が重要となる。これに対しては診療用X線CT装置による3次元CT画像を利用し、骨構造の重なりによる影響が最小となる軽度屈曲下における斜位像が最適であると判断した。初期実験において、X線暗視野法により関節軟骨が鮮明に描出されることが確認できたが、当手法は皮膚面の皺等によるX線の屈折にも敏感であり、これらによる画像コントラストが関節軟骨像に重なり、誤診を招きがねないアーチファクトとなり得ることが判明した。また、アナライザーの角度位置に微小量のオフセットを与えることで、画像コントラストの著しい改善が見られた。
 次の実験においては、皮膚面の凹凸による画像コントラストの抑制を図るとともに、このX線光学系における骨、軟部組織によるX線の屈折の程度の把握を目的とした。前者に対しては、試料を水中に入れ撮影することで皮膚面の凹凸部でのX線屈折率変化率の低減化を図り、達成することができた。後者に対しては、骨、軟部組織のそれぞれを透過したX線の回折強度曲線を測定し、それらの半値幅を被写体がない状態で測定したものを比較した。これらの半値幅は被写体がない状態では0.14角度秒であったのに対し、骨では0.65角度秒、軟部組織では0.26角度秒であった。この結果より入射X線は、骨では0.5角度秒程度、軟部組織では0.1角度秒程度の屈折を受け角度発散すると評価した。
 さらに次の実験においては、アナライザーの角度位置に±0.04、±0.08、±0.12角度秒のオフセットを与えた画像とオフセットのない場合の画像を取得し、関節軟骨の描写能を比較した。高角側にオフセット与えた場合は関節軟骨の描写能が低下したのに対し、オフセットなしの場合と、低角側にオフセットを与えた場合で高い描写能を示した。特筆すべきは、後者では関節軟骨の描写のされ方に違いが見られたことである。-0.04角度秒のオフセット時には軟骨自体が描写され、0、-0.08、-0.12角度秒のオフセット時には軟骨の輪郭が描写された。これらは、低角側への微小量のオフセットにより、関節軟骨の表面でのX線の屈折量の連続的な変化が回折強度曲線の低角側の勾配に対応した濃度変化として検出されたのに対して、それ以外ではX線の屈折量が急激に大きくなる輪郭部のみを検出した結果と考えられた。, 総研大甲第943号}, title = {Development of X-Ray Dark-Field Imaging for Early Clinical Diagnosis of Arthropathy}, year = {} }