@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000728, author = {庄司, 功 and ショウジ, イサオ and SHOJI, Isao}, month = {2016-02-17}, note = {本論文の目的は、与えられた確率微分方程式を満たす連続時間確率過程を利用した統計モデルを離散データから推定し、あるいは、推定されたモデルに基づいて検定を行なう等の統計的推論を容易に行なえる方法を提案することにある。
 連続時間確率過程に基づく統計モデル(以下単に連続モデルと称する)は、実に様々な分野に用いられている。特に、経済学の分野では、不確実性下の経済モデルとして連続モデルがよく用いられている。例えば、ファイナンスでは、証券の時系列変動を表わすモデル、オプション価格モデル、多期間最適化モデル、金利期間構造モデルといったような連続モデルが数多く提唱されている。しかしながら、幾つかの例外を除いて、これらの連続モデルが実際に用いられていることは少ない。その最大の理由は、モデルが、連続時間で表現されている一方で、実際に観測されるデータが或サンプリング間隔を持った離散データであって、両者を結び付けることが極めて難しいという点にある。
 本論文で提案する方法は、正に、この両者を結び付けるものであり、これによって、既存の連続モデルを実用化し、あるいは、モデルの改良や新たなモデル作りを促すことができる。
 確率微分方程式のパラメータを離散データから推定するという試みについては既に幾つかの方法が知られている。例えば、線形確率微分方程式のパラメータ推定については、P.C.B. Phillips(1973)やBergstrom(1983)によって詳しく調べられている。しかし、経済学の分野では最近になってダイナミックモデルにおける非線形性について関心が集まり、非線形モデルでダイナミックスを表現しようとする試みがなされている。こうした事情を背景として、非線形確率微分方程式のパラメータを離散データから推定することが要請されているが、これには、離散近似モデルから擬似的な尤度を構成し、最尤法で推定するといった方法、尤度比に基づく最尤法(吉田、1992)、最小2乗法(Prakasa Rao,1983)や一般化モーメント法(Hansen,1981,Hansen and Scheinkman,1995)が知られている。
 こうした方法の中で、局所線形化法(尾崎,1985)による非線形確率微分方程式のパラメータ推定について、最近、良好な数値実験結果が得られるようになってきた。更に、局所線形化法は、推定はもちろんのことシミュレーションにも利用できる便利な方法として注目されている。しかし、局所線形化法はこのような利点があるものの、導出される離散近似モデルに幾つかの問題点が含まれている。本論文では局所線形化法に含まれる問題点を解消した新たな局所線形化法を提案する。
 オリジナルな局所線形化法と新たに提案する方法とは、確率微分方程式のドリフト関数を線形近似するというアイデアは同一であるが、その線形近似の方法が異なるため、導かれる離散近似モデルに違いがある。前者は、近似に際して幾つかの前提を設け、適用可能なドリフト関数に制限がある。他方、後者は、その様な前提を除外し、より広範な確率微分方程式に適用可能である。
 本論文では、新たに開発した局所線形化法を理論的並びに数値的な側面から評価した。まず第1に、離散近似モデルのとしての良さ(rate of convergence)を、1ステップ先予測誤差と数ステップ先予測誤差の二つの視点から評価した。それによると、1ステップ先予測誤差のrate of convergenceはEuler法やRunge-Kutta法よりも改善された。また、数値実験からも収束の速さが確認された。一方、数ステップ先予測誤差のrate of convergenceについては、今回の解析結果に関する限り、既存の方法と同じであるが、数値実験の結果によると、新局所線形化法に基づく離散近似モデルのほうがEuler法を大きく上回っていることがわかった。
 第2に、新局所線形化法を多項式型の非線形確率微分方程式を適用し、離散データから実際にパラメータが推定できるかを調べた。その際、Euler法とオリジナルな局所線形化法を比較の対象として用い、推定のパフォーマンスの違いを調べた。同時に、サンプリング間隔が推定にどのような影響を及ぼすかについても調べた。実験結果によると、すべての場合で、新旧の局所線形化法による推定が、Euler法のそれよりも上回っていた。そして、ドリフト関数の非線形性が著しいときほど、オリジナルな局所線形化法よりも新局所線形化法がパフォーマンスが良いことがわかった。そして、このような傾向は、サンプリング間隔が大きくなるに従って顕著になることがわかった。推定のパフォーマンスに関する新局所線形化法の優位は、1000回の実験を通じても確かめられた。
 第3に、新局所線形化法から得られる推定量の性質を調べるためにモンテカルロ実験を試みた。ここでは、先に用いた比較方法に尤度比法と一般化モーメント法を新たに加え、5つの方法に基づく推定量のfinite sample performanceを比較した。また、先の数値実験と同様にサンプリング間隔が推定にどのような影響を及すかについても調べた。その結果、すべての場合について、新局所線形化法に基づく推定量が最もバイアスが小さく、特に、分散の推定にたいしてバイアスが小さいことがわかった。新局所線形化法とその他の方法との差は、サンプリング間隔が大きくなるに従って大きくなることがわかった。
 第4に、新局所線形化法と情報量規準AICを用いることによって、連続モデルの当てはまり具合を極めて容易に評価できることを示した。金融の時系列データとして日、米、独の短期金利を用いて、短期金利の連続モデルを対象としだモデル選択を行った。その結果、分散が状態(state)に依存するモデルの説明カが高いことがわかったが、これは、経験的に知られている事実にうまく符合する。また、本方法によれば、ドリフトの非線形性も容易に検証することができ、その検証結果によると、独の短期金利ではドリフトの非線形性が認められた。また、木材価格のデータに対しても同様な分析を行い、モデル選択が容易に行えることを示し、同時に、通常用いられている価格モデルの説明力は必ずしも高くないことがわかった。
 最後に、本論文では、多次元の連続モデルに適用できる新局所線形化法も開発し、これを金融時系列データに対して用いた。また、Euler法から導かれる推定量と尤度比法から導かれる推定量との結びつきを調べ、前者のconsistencyを証明した。, 総研大甲第168号}, title = {Estimation and Inference for Continuous Time Statistical Models}, year = {} }