@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000735, author = {近藤, 文代 and コンドウ, フミヨ and KONDO, Fumiyo}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {消費者が購入商品を決定する場合、様々な要因によって影響をうける。これらの要因は小売店の観点から大きく2つに分けることができる。一つは小売店が決定可能なコントロール要因であり、もう一つは小売店にとってコントロール不可能な要因である。前者には値下げなどの販売促進変数や店頭在庫量が含まれ、後者には消費者の購買行動に強く影響する環境変数が含まれる。本研究では、状態空間モデルを用い、POS販売量を環境変数であるトレンドおよび曜日変動とコントロール変数である2つの値下げ効果(ブランドの代替、カテゴリー販売量の拡大)に分解する方法を開発し、実際のデータを使った実証分析においてそのモデルの有用性を示した。マーケティングリサーチの分野において本モデル以外にも環境変数とコントロール変数を同時に取り扱ったモデルには(Smith,McIntyre,Achabal1994)の2段階のディスカウント最小2乗法などがある。
 POSデータを分析する際に直面する課題は大きい。まず、データの量が膨大で、デー夕の分類、時系列化のみでも膨大な時間が必要である。さらに、興味のある信号以外に興味のないノイズが混在し、分析者が分析の視点を見失う危険性が大きい(McCann and Gallagher(1990)等)。また、Hanssens, Paesons, and Schults(1990)は時系列、クロスセクショナルデー夕を分析する際にダイナミックモデルの設定およびデータ間隔設定に関して以下の問題をあげている。1)ラグのあるマーケティング変数効果とラグのある販売量効果の区別の仕方、2)マーケティング変数効果測定のための最良のデータ間隔の決定、3)2つの別々のマクロレベルのモデルとミクロレベルのモデルの結果の矛盾、4)マクロデータのみを使用したミクロ反応モデルのパラメーターの推定の仕方など。
 マーケット反応モデルはマーケット変数が販売量(または販売量シェア)への反応を表わすモデルである。従来のマーケット反応モデルには実務的には2つの違ったタイプのモデルがよく使われている。販売促進効果を推定し、短いデータ間隔、例えば、製品の週合計の販売量を予測する場合、エコノメトリックモデル(回帰モデル)が使われている。また、ある店舗の月間の販売金額を予測する場合、トレンドや季節性を持つ時系列モデルが使われている。そのような状況の中で、Leone(1983)がエコノメトリックモデルと時系列モデルとを合成したモデルの重要性を提唱し、Hanssens(1990)らによりETSと呼ばれた。
 これまでの主なETSモデルの文献には1)Distributed lag models(Bass and Clarke 1972)、2)伝達関数モデル(Helmer and Johansson 1977; Adams and Moriarty1981;Doyle and Saunders 1985)、3)干渉モデル(Box and Tiao 1975;Wichern and Jones 1977;Leone 1987)、4)OLSとARMA modelを組み合わせたものがある。2)-4)のモデルはARIMAモデル+説明変数のアプローチで、その短所はトレンドや周期性に関して事前に処理が必要で、2段階の分析である。このことから、マーケティングリサーチにおいて新しい統一的なETSモデルの開発の必要性が存在する。本研究のアプローチは各ブランドとカテゴリー間の階層構造および年、週、日といった周期構造を骨格とし、販売促進変数と環境変数を伴う統一的な状態空間モデルによってミクロレベルのデータを有機的に結びつけることである。
  第1章は序章で研究の動機および背景、過去の文献レビュー、POS販売量の構造分解モデルの概念を導入した。第2章では構造分解基本モデルの導入である。ここで定義した長期成分(トレンド)、曜日変動成分、短期成分(価格関数、ブランドの代替、カテゴリー拡大)の各成分を統合する構造にはBlattberg and Neslin(1990)によるセールスプロモーション(販売促進政策)に関する5つのメカニズム1)ブランドスイッチ、2)リピート購入、3)購入時期の早期化、4)カテゴリー販売量の増加、5)店舗の代替え)を考慮し、決定した。POS販売量を統一的なETSモデルとして状態空間モデルにより以下の4つに分解した。1)長期のトレンド成分、2)周期的な曜日変動成分、3)短期的なブランド代替成分、4)正味の(カテゴリー)販売量増加成分。第3章ではパラメーターの推定およびモデルの同定方法の記述で、状態空間モデルでのシステムモデルおよび観測モデルの具体的な設定を行なっている。第4章から第6章がPOSデータの実証分析で、4大ブランドとその他合計という設定で分析を行なった。第4章は2店舗の日次POSデータに関する一変量分析で、トレンドと曜日変動の抽出を行なった。さらに価格データを伴う一店舗のデータでは回帰係数は一定とし、一つのブランドの値下げがその販売量を増加させるように価格関数を決定し、さらにカテゴリー販売量の値下げ効果分析をおこなった。第5章は2店舗の日次POSデータおよび1店舗の週次POSデータを使用して多変量時変係数モデルで分析を行なった。ここでは回帰係数である値下げ効果成分も時変とし、全ての成分が時変となっているため、時変のカテゴリーモデルとシェアモデルといった従来の2本立てのモデル化の必然性はなくなった。各ブランドについてトレンド成分と値下げ成分の動きを比較すると、両者の動きは一つの例外を除いて、主に季節性を表すと考えられるようなほぼ同様な動きをしていることが分かった。その例外的なブランドでは、季節性に加えて競合関係が係数変動の要因と考えられる。第6章も多変量時変係数モデルでの分析で、値下げ効果をさらにブランド代替効果およびカテゴリー拡大効果の2つの効果、つまり、カテゴリーの内側で変化する効果とカテゴリーの外側で変化する効果に分解した。第7章は第5章で得られた値下げ効果係数の変動に関するシュミレーションを行なった。第8章は結果の要約である。第9章は今後の研究課題として具体的な実証分析は行なわなかった時間的代替成分モデルの説明である。
 この新ししいモデルはリサーチの手法として以下の利点がある。1)ミクロレベルのモデルとマクロレベルのモデルが常に矛盾がない。2)従来のETSモデルと比べてトレンドや周期性に関して事前に処理せず、直接非定常なデータを取り扱うことができる。3)トレンド、周期性、多重の外生変数成分に関するのPOS販売量の同時分解といった複雑なモデル化が可能。4)全ての成分が時間的に変化できるようになっている為、従来のカテゴリー合計のモデルとシェアモデルの2つの別々のモデルによる推定は不要。もちろん、従来のOLSの手法では不可能であった時間的変化の要素をモデルに取り込むことが可能である。5)消費者パネルデータを使ったSunil(1988)の販売量の分解とは異なり、直接に販売量の予測が可能である。
 一方、小売店側ではこの新しいモデルの応用により、価格設定や店頭在庫管理に役立つ情報がそれぞれのカテゴリーやブランドについて具体的な数値として得ることができる。例えば、本モデルにより、具体的な商品カテゴリーおよびアイテム関して、曜日変動の抽出や値引き効果の抽出が可能となった。カテゴリー合計の曜日変動を抽出することによって、何曜日にはどの位販売量があるかが分かる。また、通常より飛びぬけて価格を安く設定してもそのまま販売量増とはつながらないことが分析の中で確認されれば、実際に有効な上限の値下げレベルをモデルから決定することもできる。さらに、実証データの競合関係に関する分析から、弱いプライベートブランドの値引きは強いブランドが値引きしていない場合にのみ有効であることがわかり、プライベートブランドの値引きは他の強力なブランドが行なっていない場合のみに行なうというような戦術を取ったりすることができる。値引き効果の減衰の具体的な数値を得ることにより、適正な店頭在庫の管理に役立てることができる。また、モデル化は店舗毎に可能なため、店舗間でのパラメーターの比較も可能である。, 総研大甲第345号}, title = {State Space Decomposition of Scanner Sales into Trend, Day-of-the-Week Effect, and Multiple Exogeneous Effects}, year = {} }