@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000747, author = {二宮, 嘉行 and ニノミヤ, ヨシユキ and NINOMIYA, Yoshiyuki}, month = {2016-02-17}, note = {統計的推測理論において中心的な役割を果たしている考え方のひとつに尤度比検定がある.尤度比検定は1930年代にJ.ネイマンお上びE.S.ピアソンにより提案されたものであるが,直観的な解釈の容易さと構成方法の簡便さ,および一般的な正則条件の下での一致性,漸近有効・不偏性などといった理論的に望ましい性質を備えているため,現在でももっとも良く用いられている検定方式の一つとなっている.
 とくに尤度比検定はその検定統計量の帰無仮説の下での分布,すなわち帰無分布が正則条件の下で漸近的にカイ2乗分布に従うという性質(漸近カイ2乗性)を持つため,その棄却域の構成が容易であるという利点を持つ.またこの性質に基づいてAIC(赤池情報量規準)などのモデル選択基準の構成もなされている.しかしながらこの尤度比検定の漸近カイ2乗性が前提とする正則条件は,医学統計,地震統計,画像処理,計量経済などの分野でしばしば現れる変化点問題と総称される統計推測問題,統計モデルでは満たされていないことが多い.
 従来この種のモデルは例外的な”非正則”統計モデルとみなされ,個別のモデル毎に尤度比検定統計量の帰無分布の理論的性質や数値計算法が研究されてはきたものの系統だった方法論の展開はほとんどなされていなかった.しかし近年になって,積分幾何学(微分位相幾何学)や確率幾何学を用いて非正則統計モデルにおける光度比検定統計量の分布理論を展開しようという研究が現れ始めている.本論文の研究はこの線に沿ったものである.
 論文の前半では正規確率場の最大値の分布に関する評価問題が扱われている.変化点問題における尤度比検定統計量の帰無分布の評価は,複雑な自己相関構造を持った正規確率場の最大値分布の評価に帰着されることが多い.しかしその分布の評価は難しく,解析的導出はもちろんその数値的評価ですら困難である場合がほとんどである.しかしながら近年その裾確率を近似的に評価するためのチューブ法と呼ばれる幾何学的方法が開発され,研究が始められている段階である.
 チューブ法は正規確率場の添字集合を多様体ととらえ,その多様体の幾何学的諸量(体積,曲率等)の計算を通して確率分布を評価する方法である.そのためチューブ法においては確率場の添字集合として連続集合を想定することが前提であり,分散分析モデル,分割表モデルなどにおける変化点問題のように添字集合が離散的である場合に適用することはできなかった.本論文においては,離散添字集合に対応してある種の区分的線形な1次元あるいは2次元多様体を想定し,そのまわりのチューブ領域の体積を微分位相幾何の理論や組み合わせ論的な考察をもとに評価し,結果として尤度比検定の保守的な検定棄却域を与えることができることを示している.本論文で展開された方法は従前のチューブ法と対比して離散チューブ法とも呼ぶべき方法である.本方法はまたナイマン不等式として知られるチューブ体積の上界公式の一つの拡張とみなすこともできる.提案する諸公式のボンフェロニ法,改良ボンフェ口二法などの従来法に対する優位性が数値実験によって確認することができる.
 論文の後半では独立観測系列における変化点問題の尤度比検定の漸近理論が扱われている.時系列における構造変化の検出という問題設定は,変化点問題の中でも最も基本的なものであり,多くの先行研究が見られる.また実際上の適用場面も多い.この問題に関して,従来は主として一つの変化点を検出するための光度比検定が扱われてきた.本論文では,従来の問題設定を拡張する形で複数個存在する変化点の検出,あるいは変化点の個数決定問題を数学的に定式化し,対応する尤度比検定を扱っている.最初に検定統計量を具体的に構成し,その分布のブラウニアンブリッジによる表現を与えている.次いでランダムウォークの再生理論を用いることにより,構成した尤度比検定統計量の帰無分布の裾確率の大偏差評価に関する定理を証明している.また導かれた漸近評価の妥当性が数値計算によって確認されている.最後にこれらの結果を組み合わせることによる変化点個数決定の手続きが提案されている., 総研大甲第500号}, title = {確率場の最大値に関する分布論及び変化問題点への応用}, year = {} }