@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000762, author = {佐藤, 忠彦 and サトウ, タダヒコ and SATO, Tadahiko}, month = {2016-02-17}, note = {マーケティングにおいて,スーパーマーケットで販売されるブランドの売上には,通常値引き販売と呼ばれる価格プロモーションと小売業の店頭における特別陳列の実施が強く影響することが知られている。通常,店頭で獲得される販売データであるPOS(Point Of Sales)データでは,販売点数,販売金額,来店客数のデータは取得できる。そのため,通常売価に比較して値引きがどの程度されていたか,すなわち価格プロモーションの有無に関してはPOSデータから簡単に情報が取得できる。一方,特別陳列実施の有無については小売店舗毎に調査により収集しない限りはデータが入手できない。しかし,特別陳列実施の有無により大きく売上は変動し,需要予測などを行う際には特別陳列実施時の構造を販売点数及び売価などの通常獲得できるデータから的確に捉えることが,予測精度の向上の視点からは非常に重要である。また,特別陳列を実施していたかどうかを販売点数,販売時点での売価及び来店客数のデータから判別できれば,施策の効果を踏まえてマーケティングに関する意思決定を行うためには非常に重要な情報となる。
 本研究の目的は,上記に示したような消費財マーケティングの実務上の問題意識に基づき,POSデータのみを用いて小売業の店頭で実施される特別陳列実施の有無を推定するモデルを開発し,そこから得られる推定結果を実務上どのように活用すべきかについて方向性を提示することである。
 本論文は全10章で構成される。第1章では,流通をマクロ経済学的な見地から概観し,本研究のベースであるマーケティングの実務上の課題を議論している。さらには,その内容を踏まえて本研究の動機と目的を述べている。
 第2章には先行研究のレビュー結果を示している。レビューは3つの視点で行っており,一つ目はマーケティング分野で数多く行われている販売促進活動(Sales Promotion,以降SP)の効果測定に関する研究,2つめは本研究で提案されるモデルのベースである状態空間モデルに関する研究,最後にマルコフ切換モデル(Markov Switching Model,以降,MSモデル)に関する研究である。
 第3章では,はじめに一般状態空間モデルを紹介している。次に,3つ種類のMSモデル(マルコフ切換分布モデル(Markov Switching Distribution Model,以降MSDモデル),マルコフ切換回帰モデル(Markov Switching Regression Model,以降MSRモデル),マルコフ切換2変量モデル(Markov Switching Bivariate Model,以降MSBモデル)を提案しそれらのモデルが一般状態空間モデルのフレームワーク内で表現できることを示している。最後に状態推定のために利用した計算アルゴリズムである非ガウス型フィルタ・平滑化(Kitagawa,1987)に関して説明し,尤度の構成法,情報量規準などについても言及している。
 第4章では,第3章で提案した3つのMSモデルを用いて数値実験を行い,教師データを必要としない提案MSモデルを用いた判別の特性に関して検証している。そこではMSBモデルの判別力が他の2つのMSモデルに比べて有意に高いことが示された。
 第5章は,第3章で提案された3つのMSモデルを,マーケティング分野で活用されている実際のPOSデータ(4商品)へ適用し,観測されない特別陳列実施の有無の判別を行い,本研究の目的に対するMSモデルの有効性を検証している。その結果,数値実験と同様にMSBモデルの判別力が他のMSモデルよりも判別精度が高いことが示された。また,MSBモデル内で状態数の違いで判別力を比較すると,今回分析対象としたいずれの商品でも3-状態MSBモデルの判別精度が高いという結果になった。
 第6章では,MSモデルを用いた判別分析の有効性を別の視点から論じるために,教師データが存在すると仮定した問題設定の非線形判別分析と提案MSモデルの判別精度を比較し,本提案モデルの有効性を検証している。具体的には教師データがある場合の問題設定の判別モデルとして,最近汎化能力の高さから注目を浴び数多くの研究がなされてきている,サポート・ベクター・マシンの一種と考えることが出来る動径基底関数ネットワークを用い,教師データが存在しない問題設定の判別モデルとして5章で最も判別精度が高かった3-状態MSBモデルを用いた。その結果提案モデルの判別精度の良さが確認された。
 第7章では,本研究で提案したMSモデルを用いて推定されるデータのマーケティング上の実務課題への応用結果が示してある。具体的には2つの分析がなされており,1つ目は特別陳列実施の効率性の検証であり,2つ目は動的な視点でのブランド診断とSPの評価である。それぞれ解析の背景・モデルが述べられた後,分析結果を述べている。
 第8章は,第3章に示したモデルの拡張の方向性を述べ,実際のPOSデータへ適用することで検証している。具体的には,競合商品のデータを同時に取り扱うことを可能にする多変量MSモデルを提案し,実際のPOSデータへ適用することで検証を行っている。また,判別精度をさらに向上させるための拡張の考え方とさらなるモデルの拡張も議論し,そのモデルに関しても実際のPOSデータへ適用し検証を行っている。
 第9章は本研究のまとめを述べ,併せて本研究で用いたモデルが他のマーケティングの諸問題へ適用可能かどうかに関して議論している。
 最後に第10章には,本論文に関連する流通関連用語が用語集の形式でとりまとめられている。, 総研大甲第738号}, title = {マルコフ切換モデルによる観測されない特別陳列実施の有無の統計的推測法に関する実証研究}, year = {} }