@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000765, author = {逸見, 昌之 and ヘンミ, マサユキ and HENMI, Masayuki}, month = {2016-02-17}, note = {申請論文の概要は以下の通りである。一般に統計モデルの母数(パラメータ)は多次元であり,多くの場合には推測の対象とされる興味ある部分と局外母数と呼ばれる興味のない部分に分割される。本論文では,興味ある母数の推定精度に,局外母数のもたらす影響について考察している。
 標準的な統計的漸近理論によると,母数の推定に最尤推定を用いる限り,局外母数が存在するときの興味のある母数の推定精度は,局外母数の真値が既知であってその情報を用いた場合の母数の推定精度を上回ることは起こり得ない。ところが驚くべきことに,最尤推定でないある特別な推定の場合には,例え局外母数の真値が既知であっても,その母数を推定することによって興味ある母数の推定精度を上げることがあり得ることがRobins et al.(1992)によって報告されている。疫学研究における因果推論モデルにおいては,興味ある母数(因果パラメータ)の他に,交絡要因を調整する目的で傾向スコアと呼ばれる潜在的関数関係がモデルの中に組み込まれる場合がある。この傾向スコアは通常未知なのでデータから推定する必要があるが,その真値が仮に既知であっても,それを推定することによって興味ある母数の推定精度を上げることができることをRobins et al. は示している。このモデルを含む,いわゆるセミパラメトリックモデルの場合には,最尤推定は必ずしもいつも用いることができる推定方法ではないため,Robins et al. の指摘は理論的にもまた実際的にも重要である。
 学位申請論文で行ったのは,この推定精度の逆転現象を推定関数法(最尤推定は特別な場合として含まれる)という一般的な枠組みで定式化し,射影推定関数の方法と推定関数の分解という2種類のアプローチによって逆転現象が起こるメカニズムを明らかにし,またそれが起こるための条件を与えたことである。
 申請論文は全6章から構成されている。第1章は序説として,歴史的な背景と論文全体の構成が説明されている。第2章はまず,統計的因果推論における1つの基本的枠組であるRubin(1974)の因果モデルとそれにもとづく傾向スコアについての基本事項が要約され,続いて傾向スコアにまつわる推定精度の逆転現象の例がRobins et al. の結果を交えていくつか紹介されている。さらに,因果推論と欠測データ問題との関わりに触れ,欠測データ問題における逆転現象の例についても述べている。第3章では,本論文で用いるセミパラメトリックモデルと推定関数についての基礎的事項がまとめられている。特に,本論文で行う推定精度の逆転現象の解明の鍵となる2つの概念,射影推定関数と推定関数の直交分解がそれぞれ推定関数の標準化と推定関数の最適性という,推定関数に関する基本概念と関連づけて,詳しく述べられている。第4章は本論文の中心的な部分である。まず第1のアプローチである射影推定関数の方法によって推定精度の逆転現象のメカニズムが解明されている。射影推定関数とは,推定対象となる母数についての真のスコア関数を推定関数の張る線型空間に直交射影したものである。射影推定関数の与える推定量ともとの推定関数の与える推定量は同じものであるが,射影推定関数を考えることによって,推定量の漸近分散がその関数のノルムの2乗の逆数という幾何学的な量として表される。興味ある母数とともに局外母数も推定する場合は,興味ある母数に対応する推定関数と局外母数に対応する推定関数の張る線型空間において,興味ある母数の推定量の漸近分散が射影推定関数の言葉で幾何学的に表現される。一方で,局外母数が既知である場合の推定量の漸近分散は,興味ある母数に関するスコア関数をその線型空間の部分空間に直交射影して得られる射影推定関数のノルムによって表現できるため,射影推定関数を通して推定量の漸近分散を扱うことにより,推定精度の逆転現象を直感的,幾何学的に把握することが可能となる。申請論文では,その考察を押し進めることにより,推定精度の逆転現象の条件を与えることに成功している。また,射影推定関数を用いた逆転現象の幾何学的理解にもとづいて,局外母数の推定により興味ある母数の推定量の漸近分散がどの程度まで小さくなるかについても議論がなされ,特に統計モデルから定まる,漸近分散の下限への到達可能性についても言及されている。第4章の後半は,本論文の第2のアプローチである推定関数の分解による方法が論じられている。興味ある母数に対する推定関数をAmari and Kawanabe(1997)が導入した情報スコア関数の空間とその直交補空間へ射影することによって,推定量の漸近分散が推定関数のそれぞれの空間への射影のノルムの2乗和に分解される。ある十分条件の下で,直交補空間への射影のノルムが,局外母数に対する推定関数によって縮小されることが証明できる。これは推定精度の逆転現象を意味する。ここで考えている十分条件は射影推定関数の方法で得られる条件よりも強いものであるが,実際に見られる逆転現象のほとんどの例はこの条件を満たしており,冒頭で触れたRobins et al. の例は,この十分条件の特別な例題となっている。冒頭でも述べたように,推定精度の逆転現象は主にセミパラメトリックモデルにおいて見られる現象であるが,パラメトリックモデルにおいても興味ある母数に対して最尤推定を用いない場合には,逆転現象は起こり得る。第5章では,そのような例として一般化線型モデルにおける散らばり母数の推定について議論されている。続いて,第4章で理論的に得られた結果が数値実験によって検証されているが,比較的少数のサンプル数であっても平均2乗誤差の意味で逆転現象が起こっていることが示唆されている。最後の第6章では得られた結果の要約等が述べられている。, 総研大甲第741号}, title = {GEOMETRY OF ESTIMATING FUNCTIONS AND CAUSAL INFERENCE}, year = {} }