@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000800, author = {一谷, 修也 and イチタニ, ノブヤ and ICHITAN, Nobuya}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {エアロゾルは大気中を浮遊している多成分の粒子であり、大気中の反応過程や地球の気候への影響を考えるうえで、非常に重要な大気成分である。エアロゾルの変動は、太陽から地球への放射収支に直接影響を与え気候変動と密接に関係している。
 エアロゾルは、降水などによって極域の氷床や氷河に取り込まれる。取り込まれたエアロゾルは、取り込まれた当時の大気に関する多くの情報を有している。これまでに、南極大陸やグリーンランド氷床の中央部で掘削された雪氷コアからは、過去数千~数十万年にわたる気候や大気環境の指標となるシグナルが抽出されている。雪氷層に含まれる有機物、主要な化学成分、金属元素などは、これらの指標シグナルとして古環境を推定する重要な要素である。その中でも金属元素の研究は、ここ数年急激に注目されてきた分野である。
 金属元素は地球上に偏在しており、エアロゾルを通して地球上を移動している。地球環境中の金属元素は、エアロゾルの起源や移動・反応過程と強く関連を有している場合が多い。例えば、エアロゾル中の3価の鉄は、海洋上で硫酸エアロゾルや海塩粒子と光還元反応し2価の鉄になる。この2価の鉄は海洋中の植物プランクトンの増減を通してCO2の収支に影響を与えると言われている。しかしながら、エアロゾル中の金属元素の起源や輸送過程についての研究はまだ充分ではない。
 南極大陸やグリーンランド氷床中の金属元素は非常に微量である。従来、金属元素の定量を行うためには濃縮等の前処理が必要であり、非常に複雑な操作を要した。しかし、誘導結合プラズマ質量分析装置や黒鉛炉原子吸光分析装置のような微量元素測定装置の実用化は、雪氷層中の金属元素の定量の前処理法を簡便化した。この為、近年雪氷層に含まれる微量元素の定量が数多く試みられている。
 本研究では、降水中の金属元素や主要化学成分の濃度変動を解析し、大気中での降水と大気に含まれる金属元素と主要化学成分の相互関係を明らかにした。そして、降水及びエアロゾル中の金属元素の輸送過程の解明を行った。
 冬期・春期には地面が全て雪で覆われる季節雪氷地域である北海道東部内陸域で、降水及びエアロゾル試料を採取した。降水試料中の金属元素は誘導結合プラズマ質量分析装置で測定した。化学主成分はイオンクロマトグラフ装置で測定した。
 エアロゾルはフィルターに採取し前処理を行い、金属元素を測定した。前処理方法として純水抽出法、希硝酸抽出法、分解法の 3種を比較検討した。その結果、希硝酸抽出法が検出感度、検出精度、処理操作の点から最も適している方法であることを明らかにした。希硝酸抽出法によって処理したエアロゾルは、誘導結合プラズマ質量分析装置で測定した。
 降水中に含まれる金属元素には以下の特徴があった。
 1)降水中に含まれる化学物質は、 SO4,NO3,Cl,NH3,Na,Caが主であり、重金属元素は極めて微量である。降水中の重金属は、金属元素及び陰イオン全体の重量パーセントにして5%以下であり、Al,FCを除けば1%以下である。
 2)冬期と夏期の降水中の各種金属元素濃度の割合はほぼ等しい。降水の形態や各金属元素の起源や輸送過程に関わらず、降水中の金属元素濃度は大きくは変化しない。
 3)降水中の金属元素の起源は、Na,K,Mg,Srが海洋起源、Li,Be,Ca,Rb,Al,V,Mn,Fe,Baが地殻起源、その他の元素は人為起源である。
 降水中の金属元素と大気中のエアロゾルに含まれる金属元素の関係では、以下の特徴があった。
 1)降雪中の各種金属元素濃度と大気中のエアロゾルに含まれる各種金属元素濃度は非常に良い相関を示している。降雪中とエアロゾル中の元素の起源は、Ca,Vを除いて全ての金属で一致した。
 2)エアロゾルとして大気中に存在している元素濃度は、降水前後に比較して降水時には低下している。すなわち降水時に金属元素濃度は一時的に減少した。
 以上、冬期(降雪)と夏期(降雨)の降水中の金属元素の特徴とエアロゾル中の金属元素の特徴を比較検討した。その結果、降水中とエアロゾル中の金属元素濃度比はほぼ等しく、エアロゾル中の金属元素が降水に取り込まれ降水濃度に反映している事を示している。
 降水開始時の金属元素濃度の変動について詳しく解析した。降水開始時の各種金属元素の濃度は、初期に高く経過時間と共に濃度が減少していた。この事実は全ての金属元素に共通の特徴である。しかし、各種金属元素の降下量(降水強度×金属元素濃度)の変化では、以下の様に経過時間と共に降下量が減少した金属元素と大きく変化しなかった金属元素に区分された。
 a)降下量が大きく変化しなかった金属元素 :Li,Be,Na,K,Mg,Ca,Sr,Cs
 b)降下量が減少した金属元素 :Al,V,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Ga,As,Rb,Cd,Ba,Pb
 金属元素が降水に取り込まれる過程には、降水が降下する前に取り込まれる Rainoutと降水が降下中に取り込む Washoutの2種類がある。降水時間経過とともに降下量が減少した金属元素では、Washoutによってエアロゾル中の金属元素が大気から降水に取り込まれ大気濃度が減少した影響が大きい。降下量が大きく変化しなかった金属元素は、主としてRainoutによって降水中に最初から溶け込んでいたものと考えられる。
 また降水中の金属元素濃度は、降水強度に対して依存性のあるものと無いものに区分される。
 A)依存性が無い金属元素 :Li,Be,Na,K,Mg,Ca,Sr,Cs,Co,Ni,Cu,Rb,Cd
 B)依存性がある金属元素 :Al,V,Mn,Fe,Ga,As,Ba,Pb
 A)のLi~Csの金属元素は、主としてRainoutによって取り込まれ、降水中に最初から溶け込んでいる。その為、金属元素濃度は降水強度の変化に対して、ほとんど変化を示さなかった。A)のCo~Cdの金属元素は、降水初期時では、主としてWashoutによって取り込まれるが、初期時が過ぎると降水に溶け込みやすい為、降水強度に対する依存性を示さなかったと考えられる。 B)の金属元素は、比較的降水に溶け込み難くい為、金属濃度は降水強度の増減に依存する。
  以上、降水中の金属元素の降水経過時間に対する濃度変動と降水強度に対する依存性を検討した。その結果、降水中に含まれる金属元素の移送過程の特徴が明らかとなり、その過程の違いによって金属元素が分類できた。
  降水中の金属元素の濃度はエアロゾル中の濃度を反映している。降水中の金属元素は 大きく8種に分類でき、それぞれ特有の起源や物理的及び化学的特徴を示し移送過程が異なっている。, 総研大甲第399号}, title = {北海道東部内陸域における降水及びエアロゾルに含まれる 各種金属元素の挙動}, year = {} }