@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000804, author = {外田, 智千 and ホカダ, トモカズ and HOKADA, Tomokazu}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {地殻中~下部が900℃以上という著しい高温条件に加熱される“超高温変成作用(Spear,1993;Harley,1998)”のプロセスの解明と,その大陸地殻形成過程の中での位置づけを明らかにすることを目的に,代表的な超高温変成岩体の1つである東南極ナピア岩体の野外地質調査をおこない,変成岩類の産状・岩石記載,及び,その岩石学的研究,特に変成作用のプロセスを考える上で重要な情報である変成岩の温度・圧力条件の定量的な解析をおこなった.
 調査をおこなったのは,ナピア岩体の中でも高変成度地域に位置するリーセルラルセン山とトナー島の2地域で,互いに約40km離れている.両地域とも斜方輝石あるいはザクロ石を伴う石英長石質片麻岩と両輝石を伴う苦鉄質グラニュライトが卓越し,ザクロ石片麻岩,ザクロ石 - 珪線石片麻岩,ザクロ石 - 斜方輝石片麻岩,珪質片麻岩,磁鉄鉱 - 斜方輝石 - 石英片麻岩,様々な鉱物組合せを持つアルミナス片麻岩類,超苦鉄質岩類などが薄層,レンズ,ブロックとしてその間に分布する.超高温変成作用の指標鉱物であるサフィリンや大隅石はMgに富む石英長石質,珪質あるいはアルミナス片麻岩中に産する.
 リーセルラルセン山地域はシュードタキライト,マイロナイトを伴う南北走向でほぼ垂直傾斜の幅約200mの大規模な剪断帯(リーセルラルセン主剪断帯)によって中央部と西部とに分けられる.中央部地域では石英長石質,珪質,アルミナス片麻岩類中に見られるサフィリン+斜方輝石+石英,ザクロ石+大隅石,サフィリン+ザクロ石+石英の鉱物共生,及び,サフィリン+石英から菫青石あるいはザクロ石が形成している反応組織に基づいて,ピーク時の変成条件を>1040℃・0.6~0.8GPaと見積もった.一方,西部地域ではサフィリン+斜方輝石+石英の共生と大隅石の産出,及び,サフィリン+石英から斜方輝石+珪線石が形成している反応組織から,ピーク時の変成条件として中央部地域と同様あるいはやや高圧の>1030℃・0.8~0.9GPaという変成条件を見積もった.さらに,中央部・西部両地域に産する石英長石質片麻岩,ザクロ石 - 珪線石片麻岩,アルミナス片麻岩中の離溶組織の発達したアルカリ長石(パーサイト,メソパーサイト,アンチパーサイト)の離溶組織形成前の鉱物組成を復元し,アノーサイト - アルバイト - オルソクレイス三成分系ソルバス(Fuhrman and Lindsley,1988)に適用してその平衡温度を見積もったところ,1100℃以上で安定であるという結果が得られた.以上から,リーセルラルセン地域の変成温度は1100℃以上に達しており,また剪断帯を挟んだ西側(西部地域)は東側(中央部地域)と比べてより深部で変成作用を受け,その後の剪断帯の活動によって同じ深度に並置したと考えられる.こうした東西方向での圧力の変化は,レイナー岩体の形成時にナピア岩体の南西部地域が逆断層の発達を伴ってより深部が露出したという解釈(Harley and Hensen,1990)を支持する.
 トナー島北部に産するアルミナス片麻岩中の離溶組織の発達したアルカリ長石(パーサイト,メソパーサイト,アンチパーサイト)の鉱物組成を上記と同様の手法で解析したところ,1100℃以上というリーセルラルセン山の試料とほぼ等しい平衡温度が得られた.また,アルミナス片麻岩中のザクロ石 - 斜方輝石の元素分配(Harley,1984a,b;corrected by Fitzsimons and Harley,1994)を用いてその平衡温度を見積もったところ1000℃以下の冷却期の温度しか得られなかったが,最高到達温度(~1100℃)での圧力条件を見積もると0.8~1.1GPaというリーセルラルセン山と同様かあるいはやや高圧条件となった.このことは,ナピア岩体の高変成地域で少なくとも40km離れた2地域で,その変成条件が中~下部地殻の深度で1100℃を越えていたことを示している.
 ナピア岩体の超高温変成作用の時期として提案されている28 - 29億年前(Harley and Black,1997)と25億年前(Grew and Manton,1979;De Paolo et al.,1982)という2つの年代の是非を検討するために,電子線マイクロプローブを用いて超高温変成岩中のモナザイトとジルコンの結晶中に含まれるU,Th,Pbの定量分析をおこない,それらの元素の量比に基づく年代測定(CHIME法:Suzuki et al.,1991;Yokoyama and Saito,1996)をおこなった.その結果,全11試料から得られた有効年代値のほぼ全てが24~25億年前あるいはそれより若い年代を示し,3粒子(5分析点)からのみ27~29億年前という年代値が得られた.また,25億年前の年代値を示すモナザイトとジルコン粒子のいくつかは超高温変成作用の指標鉱物である大隅石中に包有されている.以上の結果から,28 - 29億年にも何らかの熱イベントが認められるものの,超高温変成作用の時期として25億年前説を支持する.
 これまでに提案されているナピア岩体の超高温変成作用の熱源・テクトニックプロセスを有限微分法による深さ~温度分布の熱モデル計算(Peacock,1989)を用いて検証したところ,以下のような結果が得られた. (1)大陸衝突に伴う地殻の厚化とそれにともなう加熱(Ellis,1987;Harley,1989,1991)だけでは1100℃まで加熱するのは困難.(2)高温マグマ(例えばアノーソサイト)の地殻中部への貫入(Sheraton et al.,1980;Grew,1980;Hensen and Motoyoshi,1992)の場合は,1500℃に達するような高温のマグマが必要であり,その場合でも1100℃に達する領域はマグマの近傍に限られる.(3)リソスフェア下部の熱境界層の剥ぎ取りによるマントルアセノスフェアからの加熱(Harley,1998)の場合,1100℃まで達することは十分に可能である.上記の結果に加えて,石英長石質の岩石が固体のままで超高温変成条件に達するためには,それに先立つ脱水作用・無水化のプロセスが必要である.
 以上の考察に基づいてナピア岩体の形成発達過程をまとめると,まず石英長石質の岩石の脱水作用がおきた後,マントルアセノスフェアを熱源とする超高温変成作用が約25億年前におこり,中~下部地殻(0.6~1.1GPa)が1100℃以上の高温条件に加熱されたと解釈される., application/pdf, 総研大甲第431号}, title = {Thermal evolution of the ultrahigh-temperaturemetamorphic rocks in the Archaean Napier Complex, East Antarctica}, year = {} }