@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000820, author = {梅田, 晴子 and ウメダ, ハルコ and UMEDA, Haruko}, month = {2016-02-17}, note = {本論文「光学式プランクトン計測装置を用いた南極海におけるカイアシ類群集の分布に関する研究」は、光学式プランクトン計測装置(Optical Plankton Counter、以下OPCと略す)を用いて、南極海の生態系において普遍的に出現する動物プランクトンであるカイアシ類群集の分布を明らかにする事を目的としたものである。OPCは1988年にカナダBedford Institute of Oceanographyで開発された装置で、光学センサー部内の発光部と受光部の間にあるセル(断面2×2cm)内を粒子が通過する際の遮光量を計測する。遮光量に応じ、等比換算球体直径(Equivalent Spherical Diameter、以下ESDと略す)に換算し、1分毎にESD毎の粒子数及び粒子体積を記録する。南極観測船「しらせ」では、航海中、船底水深約8mから汲み上げられた海水を船内実験室のOPCに導き連続観測を行っている。
 本論文では先ずOPC力瓢動物プランクトンを定量的に捉えているかを検証した。第41次(1999-2000年)及び第43次南極観測隊(2001-2002年)の「しらせ」航海中、南極海にてOPCを通過した海水を目合0.33mmのプランクトンネットでろ過し、動物プランクトン標本を得た。顕微鏡観察の結果、出現した動物プランクトンは、カイアシ類、オキアミ類、翼足類、多毛類、毛顎類など多くの分類群に及んでいた力瓢個体数ではカイアシ類が全体の90%以上を占めていた。動物プランクトンの体サイズを計測し、個体毎の体容積を求め、ESDに換算し、OPCデータとプランクトンデータを比較した。しかしながら、OPCはESDで99μm以上を記録するが、プランクトン標本は目合0.33mmで採集されているため、OPCのデータとプランクトンデータには違いが生じる。そこで、OPCデータをESDの小さい方から順次切り捨て、そのつとプランクトンデータとの相関を調べた。その結果、OPCデータのうち、ESD552-4000μmのデータとプランクトンデータとの間で、数及び体積とも最も高い相関があることが明らかとなった。このことは、このサイズに限れば、OPCは動物プランクトンを定量的に捉えていることを示す。
 次いで、ESD552-4000μmのOPCデータを用いて、動物プランクトンの分布解析を行った。解析対象とした南緯60度以南の東経80度-110度の海域は12月中旬と3月上旬のおよそ3ケ月の間をおいて観測されている。ESD552-4000μmの範囲を便宜的に10のサイズ区分とし、各サイズ区分の個体数と個体数での組成を12月と3月の間で比較した。その結果、明らかに3月ではサイズ区分の大きいグループが増加していることが示され、この3ケ月の間で動物プランクトンが成長していることを示唆した。また、夜間と昼間との間でサイズ組成の相違を調べたところ、12月と比べ夜間が長い3月では、大きなサイズグループが夜間に大量に出現することが明らかとなった。これは、動物プランクトンが3月までに大きく成長し、遊泳力が増したことにより、日周鉛直移動を行っているものと考察した。
 更にOPCデータを用いて、カイアシ類の種類や発育段階の解析が可能かについて検討を加えた。ここでは、東経130度から150度、南緯60度から66度の海域で得られたデータを解析した。観測時期は3月上旬であり、一般的にこの時期にはカイアシ類は越冬のため表層から深層へ移動するといわれている。プランクトン標本から特にカイアシ類の2種、Calanoides acutusとCalanus propinquusについて発育段階ごとに計数・計測を行い、出現個体数のヒストグラムを作成した。発育段階毎の出現モードのESD範囲を求め、また、OPCデータから同じESD範囲のデータを抽出し、相関関係を調べた。その結果、Calanoides acutusとCalanus propinquusのコペポダイトV期については、種毎のサイズの違いに基づきそれぞれを区別することが可能である事が示された。しかし、Calanoides acutusとCalanus propinquusのIV期については、区別することが困難であったので、両種を合計した形で評価した。ヒストグラムに基づくOPCからのESD範囲を切り出し、これら2種それぞれのV期と両種のIV期の水平分布の解析を行った。その結果、海氷縁が夏期間に南方へ移動するのに伴い、同2種が発育段階を発展させていると同時に、表層から消失していることが明らかとなった。このことは、成長の進んだ個体が越冬のために深層へ移動したためと考察される。このように、ある特定の種及び発育段階に限定することで、OPCデータからもカイアシ類の種類や発育段階の解析が可能であることが示された。
 本研究では、従来にない新たな観測法に取り組み、これまで顕微鏡観察に頼らなければなかったカイアシ類の種や発育段階等の生物学的情報について、デジタルデータを解析することにより推定できることを示した。顕微鏡観察では人的エラーは起こりやすいがOPCでは均一な計測データが得られるため、より長期的なモニタリング観測への貢献が期待される。また、観測現場におけるカイアシ類の分布情報は、観測航海後に明らかにされることが常であったが本研究により、観測現場でほぼリアルタイムで種や発育段階の情報が得られる見通しが得られ、今後の現場発見型研究の発展に大きく貢献した。, 総研大甲第721号}, title = {光学式プランクトン計測装置を用いた南極におけるカイアシ類群集の分布に関する研究}, year = {} }