@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000825, author = {門崎, 学 and カドサキ, ガク and KADOSAKI, Gaku}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {氷床および海氷に覆われている南極域は赤道域に対して地球の冷熱源となっており、また地球の気候システムを考える上で重要な役割を担っている。一方、雲はエネルギーバランスに多大な影響を与えている。また南極域の雲と雪氷圏との相互作用については、未だ十分な議論はなされておらず、雲の存在と雪氷圏の状態の関連を探るための研究は地球規模の気候を考える上で欠かすことは出来ない。
 衛星画像から雲を検出する研究は数多く行われている。通常、中低緯度の雲の検出には衛星赤外データが利用できる。雲と地表面の温度が異なり、それらから放射される輝度温度が異なることを利用した手法である。しかし、極域、特に冬季の南極域は雪氷面の温度が低下し、雲との温度差が殆ど無くなるために雲と雪氷面の輝度温度に差が生じにくくなる。このため南極域の通年の雲を識別するためには他の方法が必要である。この様な条件下の極域の雲の検出に有効な方法の一つとして、極軌道衛星NOAAの改良型超高解像度放射計(AVHRR:Advanced Very High Resolution Radiometer)の3.7μm帯の近赤外域(以下T3)、10.8μm帯の熱赤外域(以下T4) および12μm帯の熱赤外域(以下T5)の輝度温度データから、2つの異なる波長から求めた輝度温度の差(T3-T4,T4-T5)を算出し、T4の輝度温度に対する分布を求める方法である。その分布は、雲粒のサイズ、雲の温度・光学的厚さによって変化する。しかし、この方法でも南極内陸域の温度が非常に低いため、異なる波長帯の輝度温度差そのものの値が非常に小さくなり、雲の検出は容易ではなかった。このため、これまでの南極域の雲の検出については、限られた期間、領域における研究がなされたのみであり、年間を通じた広域の定量的な雲の検出は行われていない。
 本研究では、AVHRRデータを用い、これまでの手法の拡張を行い、南極域における通年の雲の検出アルゴリズムの開発を行った。またその結果から1997年3月から1998年1月までのほぼ通年に亘る雲の分布特性についての考察を行った。
 新たな手法を開発したことによって、雲の無い時の雪氷面上、開水面上の輝度温度差の特徴を見つけることが出来た。すなわち、雪氷面上では輝度温度(T4)が増加するに伴って輝度温度差(T4-T5)もわずかに増加することが分かった。この変化傾向は雪氷面の輝度温度(T4)が約-40℃以下ではほぼ一定の増加率で輝度温度差が増加する。一方約-30℃以上では輝度温度差は約1℃と一定である。この輝度温度差の傾向は-40℃から-30℃を境として大きく変化しており、要因は天候や場所の特徴によるものではなく、温度上昇による雪氷面の変化が放射特性に影響し起きたものと推測される。次に雪氷面上の近赤外と赤外の輝度温度差(T3-T4)と輝度温度(T4)の関係を日射の有る時と無い時で調べ、以下の結果を得た。日射が無い時は輝度温度(T4)の増加に伴って輝度温度差(T3-T4)が減少すること、日射のある時は、輝度温度(T4)の増加に伴って輝度温度差(T3-T4)は、日射の反射成分によって増加することが分かった。この増加分については、可視データ(ALB1)の変化から、見積もることが可能であった。さらに開水面上の輝度温度(T4)と輝度温度差(T4-T5)および輝度温度差(T3-T4)の関係を調べた結果、開水面上では一年を通してどちらの輝度温度差についても変化が少ないことが分かった。また輝度温度(T4)は最低で約-5℃であり、輝度温度差のばらつきが少ないことを考慮すると開水面上の雲の検出は可能である。
 またこれらの解析の中から、太陽が地平線に近い位置に存在する期間は、近赤外データに太陽光の影響、いわゆるソーラーコンタミネーションが生じていることが分かった。一つは、太陽光が放射をカウントする温度計に直接影響を与えるために生じる。一つは、太陽光がセンサーに直接影響を与えるために生じると考えられる。前者によるエラーは、温度計と放射量の補正のためのキャリブレーション係数の急激な変化を検出することによって補正可能であるが、後者の要因によるエラーの補正は現在のところ手段が無い。
 これまで述べてきたことを考慮し、雪氷面上・開水面上の雲検出のアルゴリズムを開発した。このアルゴリズムを用い、衛星データから昭和基地およびドームふじ観測拠点の雲の検出を行い、通常の地上観測によって得られた雲量と比較した。その結果、標高の低い昭和基地では雲の検出精度は良いが、標高の高いドームふじ観測拠点では雲の検出精度が落ちることが分かった。ドームふじ観測拠点では雲の観測が難しいことを考慮し、ライダー観測から得られた結果との比較を行った。ライダー観測で確実に雲と判定される雲については、衛星データでも検出が行えることが示された。この結果アルゴリズムの妥当性が示された。
 これらによって得られた南極域の雲の分布特性を調査した結果、一年を通じて南極内陸の雲量は海洋・沿岸域と比較して非常に少ないことが明らかになった。また、海洋域では雲頂が均一で厚みのある雲が少ない傾向が見られた。海氷の張り出しが進む期間は海氷域の雲は少なく、このとき海氷域と開水域の境界付近で厚みのある層状の雲が多い。開水域で大気に供給された水蒸気が海氷域付近で冷却、凝結し、雲が生成されることで他の領域と比較して雲量が多くなると考えられる。このような海氷域と開水域の境界付近に見られる層状の雲は北極域においては北極層雲として知られている。このいわゆる北極層雲は北極域のみで発生するのではなく、両極に共通した現象と考えられ、海氷と大気の相互作用の結果としてこの様な「氷縁層雲」と呼ぶべき雲が形成されていることが示唆された。また、雲量の季節変化として海氷の張り出しが進む期間は海氷上で雲が少ないのに対し、海氷の後退する期間では海氷上の雲は開水面上と同様に多い傾向が見られた。このことは、雲が増加することによって海氷の後退が促進されるといった海氷と大気との密接な関係が存在することを示唆しており、大気場の影響、海氷の密接度などが雲量を左右する要因の一つとして重要な要素であることが示唆された。, application/pdf, 総研大甲第804号}, title = {南極域におけるNOAA衛星AVHRRデータによる雲の検出と分布特性に関する研究}, year = {} }