@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000828, author = {村田, 洋三 and ムラタ, ヨウゾウ and MURATA, Yozo}, month = {2016-02-17}, note = {オーロラは、太陽を源とする荷電粒子が磁力線に沿って極域の電離圏に降り込み、超高層大気と衝突して発光する自然現象である。その姿は、太陽-地球磁気圏-電離圏の電磁気的な結合過程を反映して様々に変化することが知られている。とりわけ、高緯度昼間側で観測されるオーロラは、両端が地球に繋がる閉じた磁力線と、一端が宇宙空間と繋がる開いた磁力線との境界(OCFLB:Open/Closed Field Line Boundary)域に出現する為、その様相は複雑であり、発生領域・発生条件や発生機構は未だ未解決の問題として残されている。
 本論文では、高緯度昼間側で観測されるオーロラの分類とその出現特性を詳しく調べた後、異なるタイプの2イベントに注目し、オーロラの動形態・発生条件・発生領域に関する観測事実を明らかにし、発生機構のモデル提案を行った。主た用いたデータは、高緯度昼間側のOCFLB境界付近に位置する南極の中山基地で観測された可視オーロラと、中山基地の上空を含む広い視野で電離圏電場が測定できる昭和基地HFレーダーや衛星との同時観測データである。本研究の特にユニークな点は、(1)中山基地で観測された1年分の可視オーロラの2次元画像である全天TVカメラと多色(557.7nm輝線、630.0nm輝線)掃天フォトメータを用いていること、(2)電離圏電場が測定できるHFレーダーの利点を最大限利用し、可視オーロラ観測だけでは同定が不可能な、磁気圏構造やグローバル電離圏対流との関係に注目したこと、(3)中山基地の地理的特性を活かし、磁気地方時の真昼(12MLT:磁気地方時)から夕方側(18MLT)にかけての高緯度昼間側オーロラに焦点を絞ったこと、等である。
 本論文では、主に2つの成果が得られ、それぞれ第2章と第3章を構成している。第2章では、真昼から夕方側にかけて出現する高緯度昼間側オーロラを、「コロナ型」・「反太陽方向伝搬型」・「準周期変動型」・「極方向伝搬型」・「赤道方向伝搬型」の5つの型に分類し、その出現頻度の磁気地方時依存性や惑星間空間磁場(IMF:Interplanetary Magnetic Fierd)との関係について統計的特性を明らかにした。第3章では昼間側オーロラで特徴的なPoleward Moving Auroral Forms(PMAFs) と呼ばれるオーロラには、「極方向伝搬型」と「反太陽方向伝搬型」と名付けた別の出現特性を有するオーロラがあることを見出し、それぞれについて事例解析を行い、その発生領域や発生条件などの違いを明らかにした。
 オーロラを生成する粒子の起源や電離圏に到達するまでの過程は様々である。一般に、地球磁気圏の前方では、太陽からの荷電粒子が超音速プラズマ流(太陽風)となって磁気圏前面を圧縮し、衝撃波面を形成している。ここで熱化された荷電粒子の一部は極域のカスプ領域や磁気圏側部の低緯度側境界(LLBL:Low Latitude Boundary LayerやBPS:Boundary Plasma Sheet)から磁気圏内部に侵入する。また、磁気圏の前面においては、IMFの向きによって地球磁場との相互作用により磁気再結合(リコネクション) が起こり、開いた磁力線の領域にあるプラズマが磁力線に沿って電離圏へ流入する。これまでのオーロラ研究から、630.0nm輝線の幹度が557.7nm輝線よりも強いオーロラは、高い高度でエネルギーを失う低エネルギー電子(1Kev以下)の降り込みによる効果が強く、レイ構造を伴って現れることが分かっている。一方、アークの構造をもつオーロラは557.7nm輝線が強く、加速された高エネルギー電子の降り込みによって低い高度で光る。本論文では、全天カメラと多色掃天フォトメータで観測された1年間分のオーロラの特徴を解析することにより、高緯度昼間側オーロラを以下の5つの型に分類した。
1)「コロナ型」オーロラはレイ構造をもつオーロラであり、630.0nm輝線が強い特徴を持つ。昼間側のカスプ域ではこのタイプのオーロラがもっともよく観測される。15MLTより昼間側にかけて出現頻度が高く、IMF Bzが北向きのとき出現する。2)「反太陽方向伝搬型」オーロラはレイ構造をもつオーロラであり、西側からと東側から来るオーロラが交わるところで渦を形成し、反太陽方向に繰り返し伝搬するオーロラである。IMF Bzが南向きで特にIMF Byの東向き成分が強く太陽風プラズマ密度が大きいときに出現する。3)「準周期変動型」オーロラは557.7nm輝線の強いアークであり、準周期的に光の強度が変動し、その繰り返し周期は2分~10分程度である。午後側の広い範囲で観測される。4)「極方向伝搬型」オーロラは複数のアークが極方向へ繰り返し伝搬する特徴をもつ。15MLTより夕方側で出現頻度が高く、IMF Byが東向きのときに出現する。5) 「赤道方向伝搬型」オーロラは複数のアークが赤道方向へ繰り返し伝搬するタイプである。16MLT以降で出現頻度が高く、IMFの過渡的な変動の後に10分~20分程度で繰り返し出現する。
 HFレーダーの反射ターゲットは磁力線に沿って形成される電子密度不規則構造であり、その生成過程は電場や電子密度の勾配によるプラズマの不安走性の成長率に依存している。HFレーダーの最大の利点は、ドップラー速度から電離圏対流速度(電場) が導かれ、また、スペクトル幅から各種の磁気圏境界領域を推定できることである。そのため、可視オーロラとHFレーダーとの同時観測はカスプ・極冠域のダイナミクスを時間・空間的に調べる強力な手法となつている。本論文では、可視オーロラとHF レーダーエコーを1年間にわたって比較解析した。具体的には、磁気圏のOCFLB境界を表すと考えられている電離圏のプラズマ対流の境界(FRB:Flow Reversal Boundary) やスペクトル幅の特徴的な境界(SWB:Spectral Width Boundary)が、オーロラの発生領域とどのような関係にあるか調べた。その結果、グローバルプラズマ対流とオーロラの動形態との関係から、5つの型に分類したオーロラの中でも特に興味深い「極方向伝搬型」オーロラと「反太陽方向伝搬型」オーロラに注目して詳細な事例解析を行った。過去の報告では、この両方のオーロラともPMAFsと呼ばれる同じタイプに分類されていたが、本論文では、別の出現特性を有するオーロラであることを見出した。「極方向伝搬型」オーロラの事例解析では、オーロラアークの内部の構造は夜側からの流れを示すことや、オーロラの発生領域はFRB付近の閉じた磁力線と開いた磁力線の間の領域に位置していることを明らかにした。繰り返しの様子は、低緯度側にアークが出現し、そのアーク全体が高緯度側へ移動する。その後、新たなオーロラが低緯度側に出現し、高緯度側への移動を繰り返すことを明らかにした。また、オーロラ粒子は数kevにピークを持つ逆V型構造を伴っており沿磁力線方向の加速を受けていることや、発生条件としてはIMF Bzが南向きよりもIMF Byの東向き成分が重要な役割をしていることなどが新たに分かった。本論文では、上記の観測結果を参照して「極方向伝搬型」オーロラの発生領域と発生機構の議論とモデル提案を行なった。, 総研大甲第856号}, title = {高緯度昼間側オーロラの出現特性に関する研究 - 中山基地可視オーロラと昭和基地HFレーダーエコーの比較解析}, year = {} }