@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000830, author = {荒井, 頼子 and アライ, ヨリコ and ARAI, Yoriko}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {本研究は、衛星リモートセンシングデータを用いて、南極海洋生態系の基礎生産者である植物プランクトンについて、海氷域における夏季のブルームの発生メカニズムを明らかにすることを目的として、1)季節海氷域におけるクロロフィル濃度の空間分布と時間変動、2)季節海氷域におけるクロロフィル濃度と変動と海氷密接度、海面水温および海上風速との関係に関する研究を行った。
 研究海域および期間は、60-70°S、10-60°E および1997年11月-2004年4月のそれぞれ11月から4月の期間とした。使用した衛星リモートセンシングデータは、SeaWiFS、AVHRR およびSSM/Iにより観測されたデータで、それぞれ、クロロフィル濃度、海面水温および海氷密接度と海上風速の物理量プロダクトを用いた。
月平均クロロフィル濃度分布は、2002年を除き、1月に高いクロロフィル濃度を示す傾向が多くみられたが、2001年12月から2002年4月には海域全体で常に低いクロロフィル濃度を示した。60°Sから65°S、10°Eから50°Eの海域において、1998年および2002年の経度方向におけるクロロフィル濃度の変動は小さかった。その他の年では、クロロフィル濃度は西側で高く、1999年、2000年、2001年、2003年および2004年において、それぞれ、0.12~0.79 mgm-3、0.27~0.97mgm-3、0.08~0.45 mgm-3、0.12~0.50 mgm-3、0.10~1.23 mgm-3を示した。また、65°Sから70°S、10°Eから50°Eの海域において、2003年の経度方向におけるクロロフィル濃度の変動は小さかった。1998年、1999年、2001年および2004年において、クロロフィル濃度は西側で高く、それぞれ0.34-0.78mgm-3、0.27-1.83mgm-3、0.14-0.84 mgm-3および0.24-0.98mgm-3を示した。一方、2000年および2002年におけるクロロフィル濃度は東側で高く、それぞれ0.18-0.59mgm-3および0.14-1.64mgm-3を示した。
 外洋テストエリアの月平均クロロフィル濃度の時系列では、1月に急激にクロロフィル濃度が増加して0.8mgm-3以上の濃度を示し、その後減少する傾向が、1998年から1999年、1999年から2000年および2003年から2004年において見られた。また、2000年から2001年および2002年から2003年においては、それぞれ1月と2月に月平均クロロフィル濃度の増加が見られたが、増加量は少なく、0.5 mgm-3以下の濃度を示した。一方、1997年から1998年および2001年から2002年においては、常に0.3mgm-3以下の値を示し、変動は見られなかった。
 沿岸テストエリアの月平均クロロフィル濃度の時系列では、急激なクロロフィル濃度の増加が、1999年から2000年、2000年から2001年および2003年から2004年おいて、それぞれ2月、12月および1月に見られ、0.6 mgm-3以上の値を示した。また、1997年から1998 年および1998年から1999年においては、それぞれ1月と2月に月平均クロロフィル濃度の増加が見られ、それぞれ、0.5mgm-3および0.35 mgm-3の月平均クロロフィル濃度の値を示し、2002年から2003年においては、11月に最も高い月平均クロロフィル濃度を(0.37mgm-3)示した。一方、2001年から2002年においては、常に0.25mgm-3以下の値を示し、変動は見られなかった。
 クロロフィル濃度の増加は、氷の衰退による融解水の生成と季節変化に伴う太陽高度の増加が、水塊の成層化と植物プランクトンの光合成に必要な太陽放射量の増加を与え、夏季の植物プランクトンブルームが生じた結果であると考えられる。このことは、海氷域におけるアイスエッジブルームの発生スキームと一致する。しかしながら、本研究では、海氷が後退しているのにも係わらず、クロロフィルの増加が見られない年が多く見られた。クロロフィル濃度の変動が殆ど見られなかった年には、海氷密接度は12月と1月に高い密接度が見られた。従って、海氷に覆われる面積が広く、十分な太陽放射が水中に取り込まれないために、植物プランクトンブルームが制限されていると考えられる。また、ブルームの発達進まない時の表面水温は、外洋テストエリアで3℃、沿岸テストエリアで2℃以上の値を示していた。本研究で用いられた衛星光学センサにより測定された表面水温は、表皮層の数mmの水温であり、表面水温の結果は極表皮層の値を反映していると考えられる。本研究海域における海上風速と海面水温の関係を見ると、外洋テストエリアにおいて、海上風速と表面水温の間には負の関係が見られ、1月の傾きの絶対値が最も大きい値を示した。一方沿岸テストアリアでは、海上風速と表面水温の関係が明確ではなかった。海氷の融解後の海域においては、海上風速が弱い時には表皮層は安定しており、太陽放射の影響を受けやすく、その結果、海上風が弱いほど水温が上昇しやすくなると考えられる。また、海上風の影響に加えて、外洋域においては、12月には融解水が及ぼす水温の低下への影響があり、沿岸域では海氷が全て融解せず、常に融解水の影響を受けていると考えられる。
 海上風は、表層を攪乱することで鉛直混合を引き起こすが、その時間と強度が少ない場合には、表皮層の水温の変動を左右する要因となると考えられる。夏季の短期間に広い海域で海氷の衰退と発生が生じる南極海季節海氷域においては、開放水面が数ヶ月である。その結果、風速の弱い年には融解水と表皮層との混合が不足することにより、海面水温が上昇し、アイスエッジブルームに代表される植物プランクトンに対して、光・熱阻害を与える環境となり、その結果、クロロフィルの増加が抑えられていると推測される。これは、季節海氷域が広く、開放水面となる期間が短い海域における特徴的な要因であると考えられる。, application/pdf, 総研大甲第902号}, title = {衛星リモートセンシングデータを用いた南極海季節海氷域におけるクロロフィルの分布に関する研究}, year = {} }