@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000835, author = {本吉, 弘岐 and モトヨシ, ヒロキ and MOTOYOSHI, Hiroki}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {積雪域は高緯度や標高の高い地域などを中心とした寒冷な地域に分布しているが、この
寒冷な気候の形成、維持に対して積雪自体の物理的性質が果たす役割は大きい。例えば積
雪はアルベドが高いため、積雪の有無は太陽放射エネルギーの地表面での吸収をを大きく
左右する。季節積雪域と通年で消雪のない氷床では、季節ごとの積雪被覆面積の変化の違
いにより、雪氷圏の気候変動に対する影響が異なる。近年の衛星搭載センサーによるリ
モートセンシング技術の高度化に伴い、積雪被覆面積だけでなく積雪物理量の推定が可能
になってきており、積雪状態の変化や地域的な降雪や積雪の特徴を調べることが可能にな
りつつある。この手法では、反射率など積雪の光学的性質に対する積雪物理量の依存性を
利用したものである。表面が平坦な積雪では、積雪物理量の中でも積雪不純物濃度と積雪
粒径が、主に可視域・近赤外域における雪面の反射率に影響を与えるということが知られ
ている。しかし、南極大陸内陸の氷床域では積雪不純物濃度が非常に低く、主に積雪粒子
の粒径が雪面の反射率を決めていると考えられるため、本論文では、南極氷床域の雪面付
近の積雪粒径に着目した。積雪粒径は降雪や降雪後の積雪の変質過程で変動するため、積
雪粒径の空間分布やその季節変化は、この地域の降雪や積雪の気候学的な特徴と密接な関
係がある。本論文では、地球観測衛星Terraに搭載されたMODIS(moderate resolution
imaging spectroradiometer)の中心波長1.64μmチャンネルのデータに対して積雪表
面近くの積雪粒子の有効半径を抽出するアルゴリズムを適用し、東南極氷床域における積
雪粒子の有効半径の空間分布を求めた。そして、この空間分布とその季節変化から、積雪
粒子の有効半径と東南極氷床域の気候的特徴との関係を調べた。

 本論文の構成は以下の通りである:

 第1章では、積雪の物理的状態とそのリモートセンシングによる観測の概略と、これま
での研究についての概要および本研究の目的について述べた。
 第2章では、本研究の理論的背景として、雪面のリモートセンシングの基礎的な概念で
ある雪面の反射率の定義、および雪面の反射特性と積雪物理量の概略について述べた。
 第3章では、本研究でデータを利用した地球観測衛星TerraおよびAquaに搭載され
た光学センサーMODISについて説明し、MODISの中心波長1.64μmチャンネルを用い
て、雪面付近における積雪粒径を推定するためのアルゴリズムについて述べた。積雪粒径
推定アルゴリズムで必要な大気上端における太陽放射の反射率を計算するための、大気-
積雪系の放射伝達モデルと、このモデルを南極氷床域に適用するための仮定について述
べ、大気上端反射率と積雪粒径の関係について説明した。
 第4章では、東南極氷床域を含むMODISのシーンデータに対し、積雪粒径推定アルゴ
リズムを適用した結果について述べた。
 2003年から2004年にかけての夏期の東南極氷床域を含むシーンデータから、波長
1.64μmチャンネルを用いた積雪粒径抽出アルゴリズムにより、積雪表面付近における
積雪粒径の抽出を行い、積雪粒子の空間分布とその季節変化を求めた。2003年、10月の
結果から、内陸部の高原域では粒径15-20μmと小さく、沿岸域に向かうに従い粒径が
30-100μm程度まで増加する傾向がみられ、標高とともに粒径が変化する特徴が見られ
た。季節変化をみると、春から夏にかけて粒径は氷床域の大部分で増加傾向を示し、逆に
夏から秋にかけては減少傾向を示し、秋には春と同程度の粒径になった。南極大陸の内陸
部のほとんどは融雪を生じない乾雪域であるが、夏に雪面付近の積雪粒径が大きくなる傾
向が示された。高度が低い地域で粒径が大きくなる傾向とともに夏期に粒径が大きくなる
ことから、積雪粒径の広域的な分布が、気温の影響を受けている可能性がある。
 昭和基地、みずほ基地、ドームふじ、南極点を結ぶルート上での積雪粒径の推定結果を
詳しく調べた。ルート上で1kmごとに求めた積雪粒径は細かい変動を示しており、みず
ほ高原における積雪粒径の変動と、1992年11月にルート上で観察される光沢雪面やサス
ツルギ、デューンといった積雪の表面形態と関係があることが分かった。また、この種々
の表面形態が示す積雪粒径が季節変化から、表面形態自体にも季節変化があることが示唆
された。この解析から、このルート上での衛星から得られた積雪粒径と積雪表面形態が関
係していることが明らかになった。
 MODISデータのドームふじ基地の近傍ピクセルから積雪粒径の時系列を求め、同時期
に地上検証のため撮影された積雪最上層における積雪結晶写真から得られた積雪粒径と比
較した。いずれの粒径も春から夏にかけて粒径が増加していくという傾向が見られた。し
かし、衛星から得られた粒径は積雪写真から得られた粒径に対し過小評価であった。
 第5章では、南極点近傍の大気上端反射率のデータの日変化や季節変化を調べる事で、
本論文で適用した積雪粒径抽出アルゴリズムを表面粗度をもつ雪面に適応した場合の誤差
について考察した。南極点近傍のMODISデータは観測時の太陽と衛星の相対的な幾何
学的条件が1日でほとんど変化がないという特徴があるにもかかわらず、得られた大気上
端反射率の時系列データでは半日周期の変動がみられる。この変動は、南極点付近の斜面
下降風の影響下で卓越風向に沿った縞模様の粗度が発達する雪面形態であるサスツルギの
影響と考えられる。本論文では、2003年10月から2004年3月にかけて、MODISによ
り取得された南極点近傍ピクセルにおける大気上端反射率の日変化と季節変化を調べた。
第3章で述べた積雪粒径抽出アルゴリズムは、平坦な雪面を仮定しているため、サスツル
ギのような表面に粗度のある雪面に適用すると誤差が生じる。このような表面粗度による
誤差を評価するため、大気上端反射率が明らかに半日周期の変動を示す期間のデータの
みを用いて積雪粒径を抽出し、粒径の1日の変動係数を求めた。変動係数は10月上旬が
もっとも大きく30%、1月が最も小さく7%程度であり、春から夏にかけて誤差が減少
していく傾向があった。1月以降は、雲による遮蔽の頻度が高く、明確な半日周期を示す
データが少なかったために、誤差の変化の傾向をみることができなかった。
 第6章では、本研究の結果および成果、今後の課題についてまとめた。

 本論文では、衛星リモートセンシングにより積雪粒径を推定を行うことで、広範囲にわ
たる積雪粒径を推定することだけでなく、積雪表面に関与する環境(温度、降水など)や、
積雪表面の形態などについての知見が得られるという事が確かめられた。アルゴリズムの
精度という観点では、地上観測による積雪粒径の評価方法や雪面反射率モデル、表面形態
による誤差などの問題点があったもが、アルゴリズムを改良し得られる物理量の精度を高
めていくことは、リモートセンシングにより雪氷圏における気候変動のわずかな兆候の検
知するといった観点からも大変重要である。, application/pdf, 総研大甲第1152号}, title = {衛星リモートセンシングによる東南極氷床域の積雪粒径の分布に関する研究}, year = {} }