@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000868, author = {船越, 誠 and フナコシ, マコト and FUNAKOSHI, Makoto}, month = {2016-02-17}, note = {   本論文は、情報サービス産業の市場競争と企業の生産性の関係について、経済学の分析手法を用いて実証分析し、さらに、情報サービス産業の中でも唯一国際競争力のあるゲームソフト産業においても同じ枠組みで分析し、学術的に新たな知見を提供する。
   現代の情報化社会では、そのインフラを構築する情報サービス産業が重要な位置づけにあり、情報学にとっても非常に深い関係のある産業である。そして、この産業の発展には企業の生産性向上が必要不可欠であり、企業の生産性向上はイノベーションにより引き起こされ、イノベーションは市場の競争状況に大きく左右される。
   本論文では、市場競争を表す指標として、競争政策執行の現場や学術的研究においても広く利用されているハーフインダ一ル指数と、2003年に公正取引委員会で開発され直接シェアの変動から競争の程度を測定するシェア変動指標という二つの指標を用いている。また、企業の生産性を表す指標として、労働や資本を含むすべての生産要素を投入量とした場合の産出量との関係を示す全要素生産性を用いている。全要素生産性は、主に企業のイノベーションによる技術進歩を表しているため、本論文の生産性指標とし最も適した指標といえる。
   また、情報サービス産業のデータは、日本の情報サービス産業に属する企業について最も広く詳細なデータが得られる統計として、経済産業省の指定統計である特定サービス産業実態調査の2000年から2005年の6年間のパネルデータを利用している。そして、ゲームソフト産業のデータは、日本のゲームソフト販売のデータを最も広く詳細に長期にわたって収集しているマーケティング会社であるエンターブレイン社から、1997年から2005年までの9年間のパネルデータを、特定サービス産業実態調査のデータと企業レベルで連結することにより利用している。
    本論文の分析の結果、情報サービス産業では、従来の製造業の先行研究と同様に競争が激しくなると企業の生産性を向上させる結果となったが、ゲームソフト産業では、ハーフィンダール指数を競争指標とした場合、競争の激しくかつ寡占的な産業では、もともと激しい競争がさらに激しくなることにより寡占度が下がる結果、企業の生産性が低下するという新たな実証結果が得られている。そして、シェア変動指標による競争では、競争が激しくなると生産性を向上させる結果となった。
   これらの結果は、データの制約や指標及びモデルの限界など様々な考慮すべき要因はあるものの、情報サービス産業全体では、競争が企業の生産性を向上させるという従来の基本認識と一致することを示している。また、ゲームソフト産業では、コスト構造により限界費用がほとんど0とみなせるため、ソフトの当たり外れによりマーケットシェアが大きく変動することと、コスト構造に加えてゲームソフト開発費の高騰やソフトの当たり外れのリスクなどの要因により、規模の経済性が効きやすい産業でもあることが想定される。よって、このような特徴を持つ研究開発型の産業では、同様な産業の実証分析の蓄積が前提ではあるものの、ハーフィンダール指数で示される寡占は企業の生産性の向上に必要であることが、本論文により定量的に実証されたものと考えられる。さらには、このような産業においては、市場における競争状況を示す指標としてハーフィンダール指数のような静学的な指標だけでなく、シェア変動指標のように直接競争を測定する指標も必要であるという競争政策上の示唆が得られている。
   本論文の構成は、第1章では、序論として、この研究の目的と意義、情報サービス産業についての競争と生産性に関する研究の意義について述べ、さらに、情報サービス産業及びゲームソフト産業の概要について述べ、最後に研究手法の概要と本論文の構成について述べる。
   第2章では、先行研究として、競争と生産性の理論、実証の先行研究について述べ、そして、本論文と比較するために製造業の競争と生産性について実際の研究事例について述べ、さらに、情報サービス産業・ゲームソフト産業の各産業についての先行研究について述べる。
   第3章では、データ及び変数の説明として、使用するデータ、データの加工、変数として利用する各種指標、市場競争指標について述べる。
   第4章及び第5章では、情報サービス産業及びゲームソフト産業の実証分析として、静学的モデルの分析及び動学的分析のそれぞれの実証分析方法とその分析結果について述べる。
   第6章では、第4章と第5章の分析結果のまとめとして、市場競争と企業の生産性の関係についての実証的なまとめを述べ、さらに、その理論的な解釈及び業界の特徴から推測される解釈などについて述べる。そして、各種コントロール変数についての分析結果から推測される解釈について述べる。最後に第7章では、本論文の総括と今後の課題について述べる。
   本論文の成果は、日本の情報サービス産業における市場競争と企業の生産性について、実証的な分析結果を得ることにより、市場競争と企業の生産性の実証分析の蓄積に貢献したこと、それに伴って学術的に新たな知見が得られたこと、今後の競争政策上の新たな示唆が提供できたことである。, 総研大甲第1153号}, title = {情報サービス産業における競争と生産性の定量的分析}, year = {} }