@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000893, author = {村田, 武英 and ムラタ, タケヒデ and MURATA, Takehide}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {FTZ-F1は、ショウジョウバエfushi tarazu(ftz)遺伝子の発現調節領域に塩基
配列特異的に結合する因子であり、ステロイドホルモンレセプターと類似のアミノ酸
配列を持つ。FTZ-F1の生体内での機能を明らかにするためにFTZ-F1の発現パター
ンおよびトランスジェニックフライでのFTZ-F1の強制発現による影響を調べた。
 FTZ-F1には少なくとも二つのisoformが存在することがゲルシフトアッセイの結
果から明らかになっている。胚では産卵後4時間までにαFTZ-F1が、また、産卵後
12時間以降にβFTZ-F1がそれぞれ存在するが、発現部位は不明であった。そこで
抗FTZ-F1抗血清を用いた組織染色をおこなった結果、初期胚ではembryonic stage
8(産卵後3.75-4.5時間)まで極細胞を除く胚全体で発現しその後消失すること
後期胚ではembryonic stage 13(産卵後10.5-11.5時間)からふたたび胚全体
で発現することがわかった。
 1齢幼虫から3齢幼虫でのFTZ-F1の発現をウエスタンプロッティングによって調
べたところ、産卵後42-51時間および69-75時間にβFTZ-F1の発現を観察した。
この時期はそれぞれ1-2齢幼虫脱皮および2-3齢幼虫脱皮の時期にあたる。ワ
ンダリング幼虫および囲蛹殻形成後0から20時間の前蛹および蛹での発現を
ウエスタンブロッティングによって調べたところ、囲蛹殻形成後6時間から12時間に
βFTZ-F1の発現が観察された。
 以上の結果から、FTZ-F1は時期特異的に多くの組織で発現すること、いづれの組
織の発現でも核に局在することがわかった。また、FTZ-F1は転写因子であることか
ら、FTZ-F1の時期特異的な発現によって標的遺伝子の発現時期を調節していること
が考えられた。また、幼虫および蛹期の発現から、ショウジョウバエの脱皮や変態にか
かわると予想された。

 ところで、これまでにFTZ-F1遺伝子の突然変異体は得られていない。そこでFT
Z-F1の生体内での機能を明らかにするために、熱ショックでFTZ-F1を発現でき
るトランスジェニックフライ(hsFTZ-F1系統)を作成した。ショウジョウバエh
sp70遺伝子プロモータ一領域をもつFTZ-F1融合遺伝子を作成し、P-elementに
よりwhite系統に導入することによってhsFTZ-F1系統を得た。
 まず熱ショックによってFTZ-F1が誘導されるかをウエスタンブロッティングで調
べた。hsα227系統とhsα338系統では38℃60分の熱ショックによって誘導
されるFTZ-F1タンパクのレベルは熱ショック終了後2時間で最高に達し、内在性F
TZ-F1のレベルに比べ2から3倍であった。その後、約1時間の半減期をもって減少
し、4時間後には検出できなくなった。hsα332系統では38℃60分の熱ショック
によって10倍以上の発現があり、32℃では、内在性のレベルに比べ約2倍であった。
 つぎに、FTZ-F1の時期特異的な強制発現による影響を調べるために、バランサー
染色体とheterozygousにしたhsFTZ-F1系統をwhite系統とかけあわせ、F1世
代のショウジョウバエに熱ショックを与え、FTZ-F1を強制的に発現させた。強制発
現の影響はバランスされた(コントロール)成虫の出現数に対するバランスされていない
(hsFTZ-F1)成虫の出現数の比で求めた。
 3時間ごとにagingした産卵後24-108時間の幼虫に対して熱ショック(38℃
60分)を与えたところ、産卵後36-42時間の1齢幼虫および、57-69時間の2
齢幼虫でhsFTZ-F1系統の出現数が最低0.0にまで減った。この時期にはウエス
タンプロッティング法で調べた限りFTZ-F1は検出されず、本来FTZ-F1が発現
する直前にあたる。この実験から、FTZ-F1の強制発現の影響をうける時期に特異性
があることがわかった。その時期はFTZ-F1が本来発現していない時期であることか
ら、FTZ-F1は、時期特異的に発現することが重要であると考えられた。また、FT
Z-F1が本来発現していない1齢幼虫初期(産卵後24-33時間)、2齢幼虫初期
(産卵後51-54時間)、3齢幼虫初期(産卵後75-108時間)ではFTZ-F1
の強制発現の影響が少ないことがわかった。FTZ-F1が本来発現していないにも関わ
らずFTZ-F1の強制発現の影響が少なかったことに対して、FTZ-F1が転写因子
として機能できなかった可能性と、FTZ-F1は転写因子として機能したが、標的遺伝
子産物が発生に影響を及ぼさなかった可能性が考えられた。
 FTZ-F1強制発現による致死がどのように引き起こされるかを調べるために、産卵
後57-60時間の2齢幼虫に38℃60分の熱ショックを与え、その後、25℃での発
生を観察した。white系統ではほとんどが3齢幼虫を経て蛹まで発生を続けたのに対し、
hsFTZ-F1系統の多くが3齢幼虫特有のanterior spiracleの構造を示さないまま
死んだ。熱ショック後48時間の幼虫の形態をくわしく観察すると、white系統では3齢
幼虫の形態を示していたが、hsFTZ-F1系統はmouth hookおよびspiracleを二
組もっており、その形態は2齢および3齢幼虫のそれぞれの特徴をもっていた。さらに
tracheaは二重化していた。この形態から考えて、hsFTZ-F1系統は3齢幼虫への
脱皮の準備はできているが、脱皮はしていないと考えられた。脱皮ができないために致死
になるかどうかは不明であるが、この実験結果からFTZ-F1がショウジョウバエの脱
皮にかかわっていることが示唆され、正確な脱皮のためにはecdysteroidsによって誘導
される一群の遺伝子の発現順序が重要であることが考えられた。, application/pdf, 総研大甲第87号}, title = {ショウジョウバエの転写因子、FTZ-F1強制発現の発生への影響}, year = {} }