@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000904, author = {井上, 香織 and イノウエ, カオリ and INOUE, Kaori}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {植物種子にはタンパク質を貯蔵するオルガネラ、プロテインボディが存在する。登熟種子では、細胞内で合成された貯蔵タンパク質は液胞に蓄積してプロテインボディが形成される。これと反対に、種子が一旦吸収・発芽すると、プロテインボディは互いに融合を始め、内部の貯蔵物質を分解しながら一つの液胞へと発達していく。この液胞-プロテインボディ相互の機能的変換は、植物の種子細胞におけるダイナミックなオルガネラの変動であるにもかかわらず、その分子機構の解析はあまり進んでいない。彼女は、植物種子における液胞-プロテインボディ変換の機構には、プロテインボディの膜成分が重要な役割を果たすと考え、その主要タンパク質に着目して分子レベルでの解析を行った。また、この変換機構におけるプロテインボディ膜貫通型タンパク質の機能を明らかにすることを目的として、酵母細胞による発現系の確立を試みた。
第1章 カボチャプロテインボディ膜に存在するMP27とMP32の解析
 カボチャプロテインボディ膜には5種類の主要タンパク質MP23、MP27、MP28、MP32、MP73が存在する。種子発芽後、芽生えの成長に伴っていずれのタンパク質もその量が減少したが、その中でもMP27とMP32は急速に消失した。MP27とMP32が消失する時期に対応してプロテインボディの液胞化が起きることから両タンパク質がプロテインボディから液胞への変換に関与している可能性が考えられた。これを調ベるためにMP27とMP32のクローニングによる構造解析を行った。MP32の決定したN末端アミノ酸配列をもとに登熟カボチャcDNAライブラリーをスクリーニングし、ORFを含むクローンを得た。クローンのcDNA全塩基配列を決定したところ、予測アミノ酸配列中にはMP32のN末端アミノ酸配列だけでなく、MP27のN末端アミノ酸配列も含まれることが明らかになった。MP27のN末端側には27残基から成る疎水性が高い配列が存在することから、MP27とMP32は、シグナルペプチド、MP27、MP32の順に並んだプレプロ型前駆体として合成され、co-translational及びPosttranslationalな切断を受けると予想された。MP32の決定したN末端アミノ酸配列は、予測アミノ酸配列の親水性領域中のアスパラギン残基の次から始まっていた。一方、植物種子では、貯蔵タンパク質の前駆体分子表面のアスパラギン残基のC末端側を切断する、液胞プロセシング酵素の存在が明らかにされつつある。従って、種子の液胞プロセシング酵素が、MP27とMP32のプロ型前駆体を切断して成熟型へと変換すると考えられた。
 種子登熟期におけるMP27-MP32転写産物の量的変動とタンパク質の蓄積を、Northern blot、イムノプロットにより解析した結果、MP27-MP32転写産物の発現パターン、タンパク質の蓄積パターンとも、貯蔵タンパク質11Sグロブリンのそれと類似していたことから、登熟種子におけるMP27-MP32の転写レベルでの発現は貯蔵タンパク質の発現と同様の機構で調節されること及び、MP27-MP32は貯蔵タンパク質の合成の盛んな時期に合成されることが示唆された。
第2章 カボチャプロテインボディの膜貫通型タンパク質MP28とMP23の解析
 カボチャプロテインボディ膜の2つの膜貫通型タンパク質、MP28とMP23は免疫化学的に類似する。MP28とMP23それぞれのペプチドマップ解析を行ったところ、両タンパク質の一次構造が良く似ていることが示唆された。MP28とMP23が同じ遺伝子にコードされるのかどうかを確かめるために、MP23のN末端アミノ酸配列を決定して登熟カボチャ子葉cDNAライブラリーをスクリーニングし、2種類のクローンを単離した。このうち、一方のcDNA塩基配列を決定したところ、予測アミノ酸配列中にMP23の決定したN末端アミノ酸配列が含まれたことから、このクローンがMP23をコードするクローンであることが明らかとなった。また、もう一方のcDNAクローンについてもcDNA塩基配列を決定するとともに、MP28の内在アミノ酸配列を決定したところ、このクローンがMP28をコードするクローンであることが判明した。MP28とMP23の予測アミノ酸配列は88%相同で、他の植物種子のα-TIPと高い相同性(65%-67%)を示したことから、MP28とMP23はα-TIPホモログであることが判明した。4つの種子TIPの疎水性解析と一次構造の比較から、種子のTIPは6つの予想膜貫通領域を持つこと、予想膜貫通領域の1つ目と2つ目の間の親水性領域の配列は4つのTIPの問で著しく異なっており、MP23のこのグループはこれまで報告されたTIPの中で最も長いことが示唆された。
 一方、MP23のN末端配列は、予想膜貫通領域の1つめと2つめの間のループ内のグリシンから始まっていることから、MP23は29kDaの前駆体として合成され、N末端側の7kDaの断片がpost-translationalに切断されてMP23が生じることが示唆された。カボチャ種子登熟期におけるMP28とMP23の転写産物の量的変動を調べるためにNorthern blot解析を行ったところ、MP28とMP23の転写レベルでの発現は、貯蔵タンパク質のそれよりも早い段階で起きることが示唆された。種子登熟過程におけるMP28及びMP23タンパク質の量的変動をイムノプロットにより解析した結果、MP28とMP23の転写産物の蓄積の時期に対応して、29kDa前駆体及ぴMP28が検出された。この時期の登熟子葉を用いて免疫組織化学的解析を行ったところ、29kDa前駆体とMP28は液胞膜に局在していた。一方、種子登熱の中期まで蓄積していた29kDa前駆体の量は、登熟中期から後期にかけて減少し、それに伴ってMP23が出現したことから、29kDa前駆体のMP23への変換は種子登熟の中期以降に起きること及ぴ、MP23前駆体のMP23への変換は液胞或いはプロテインボディの膜上で起こることが示唆された。
第3章 カボチャプロテイン膜貫通型タンパク質の酵母細胞における発現
 カボチャプロテインボディ膜のMP28とMP23の液胞膜、プロテインボディ膜における生理的役割は不明である。MP28とMP23の液胞膜における機能を明らかにするために、MP28とMP23に類似したタンパク質を持たない酵母における解析を試みた。GALIプロモーターの下流にカボチャのMP23前駆体またはMP28のcDNAをつなげたコンストラクトを構築し、酵母細胞を形質転換した。形質転換体をガラクトースを含む培地で培養すると、MP23前駆体及ぴMP28のcDNAの発現誘導が見られた。発現した両タンパク質は液胞プロテイナーゼAを欠損した(pep4)株でのみ蓄積し、野生株では速やかに消失した。MP23前駆体及ぴMP28を蓄積した酵母細胞の細胞分画を行ったところ、MP23前駆体及ぴMP28は細胞内の膜画分に含まれていた。MP23前駆体とMP28の細胞内局在を調べるために、両タンパク質を蓄積した酵母細胞の蛍光抗体染色体及びプロテインA-金コロイド染色を行った結果、両タンパク質とも液胞膜へ局在していたことから、今後、酵母液胞膜におけるMP23前駆体及びMP28の物質輸送活性を解析することが可能となった。, 総研大甲第143号}, title = {液胞 - プロテインボディ相互変換に伴う膜タンパク質の変動}, year = {} }