@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000942, author = {渡邉, 光一 and ワタナベ, コウイチ and WATANABE, Kouichi}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {遺伝的組換えは両親由来の遺伝子を組み換えて子孫に伝える重要な機能を担っている。また、組換えはDNAの損傷を正しく修復することにも関与している。真核生物における遺伝的組換え機構の研究は出芽酵母において進展してきた。出芽酵母の組換えはDNA二重鎖の切断(DSB:Double Strand Break)で開始する。RAD52エピスタシスグループに属する遺伝子群はこのDSBの形成とその修復に機能する遺伝子である。これらの遺伝子に変異が起ると、体細胞分裂期の細胞では、変異原に感受性になり、減数分裂期の細胞では、染色体を正確に分配できなくなるため、胞子の形成ができなくなるか、胞子を形成できても、その胞子は致死となる。このグループに属する遺伝子として現在までに、RAD50.MRE11、XRS2、RAD51、RAD52、RAD54、RAD55、RAD57の8遺伝子が同定されている。このグループに属する遺伝子のホモログは、真核生物に広く保存されており、構造的にも機能的にも似ていることから、組換えの基本的メカニズムが真核生物を通して共通であると考えられている。
 減数分裂においては、組換えが高頻度に起こるホットスポットと呼ばれる染色体上の領域にDSBが入り、その切断末端で一方のDNA鎖が消化されて3’に単鎖(ss)DNAを持つ末端が形成される。このssDNAにRad51が結合して、相同な配列を持つDNAを検索、対合して、DNA鎖を交換する。その後、相手のDNAを鋳型として、DSB形成時に消化された塩基配列が修復合成され、特異的なエンドヌクレアーゼによりDNA鎖の交叉が解消されて、組換え体が形成されると考えられている。ホットスポットでのDSB形成からssDNAの露出までにはMre11.Rad50とXrs2と共にSpo11.Sae2/ Com1が関与する。ssDNAと相同なDNAの検索から相手二重鎖(ds)DNAとの対合からDNA鎖の交換までのステップには、単鎖DNA結合タンパク質であるRPAとRad51、Rad52、Rad54、Rad55、および、Rad57の機能が関与する。
 Rad51は、大腸菌の組換え蛋白質であるRecA蛋白質のホモログであり、DNA鎖交換反応を行う。DNA鎖交換反応は、presynaptic filamentと呼ばれる、Rad51がssDNAに結合して作る特徴的なラセン構造を持つ複合体の形成で始まる。このpresynaptic filament形成では、ssDNA、RPA、Rad51とRad52の間の相互作用がpresynaptic filament形成を促進することが示されている。しかし、Rad55とRad57の組換えにおける機能はわかっていなかった。
 体細胞分裂期のRAD55とRAD57の機能を遺伝学的に解析した結果、RAD55とRAD57はRAD51の上位で機能すると予想された。そこで、遺伝的組換えでのRAD55とRAD57の役割を知るために、減数分裂期組換えにおけるRAD55の機能を調べた。rad55△変異株で胞子の形成率が低いこと、減数分裂期遺伝子内組換えの頻度が低いこと、そして、胞子の生存率が、spo13変異ではなく、rad50spo13二重変異をrad55△変異株に導入することよって回復するがspo13変異では回復しないことから、RAD55は相同組換え機構のDSB形成後の段階で働くことが示された。また、野生株を減数分裂に導入すると、極めて早い時期にRAD55の転写が誘導されるが、mRNAの発現量はRAD50、RAD52のmRNA量と比較して、極めて少ないことがわかった。
 Rad55とRad57が複合体を形成することが示唆されていたので、Rad55とRad57を酵母から精製して、これらが安定な複合体を形成することを示した。細胞抽出液からの免疫沈降実験とGST pull down assayを行ったが、Yeast Two - Hybrid法の実験からいわれていたような、Rad55とRad51の相互作用は検出できなかった。
 次に、GST RAD55とGST RAD57を大腸菌で発現させ精製した。精製した両蛋白質は単鎖DNAと二重鎮DNAに対してヌクレオチド非依存性DNAの結合活性を示した。さらに、Rad55のDNA結合領域は269aaから320aaまでの領域であり、Rad57のDNA結合領域は、350aaから380aaまでの領域であることがわかった。Rad55はC末端側がDNA結合領域であり、GS TRad55がrad55△変異株のMMS感受性を相補できなかったので、N末端側が他のタンパク質との結合領域であると予想した。Rad55、および、Rad57は、アミノ酸配列上、Walker type - Aのヌクレオチド結合配列を持ち、実際にRad55にあるヌクレオチド結合配列は、Rad55の機能に必要である。Rad55のヌクレオチド結合配列はN末端側にあることから、ヌクレオチドの結合とタンパク質間相互作用、そして、Rad55 - 57の機能の発現に相関があることを期待できる。
 GST Rad57は3’突出末端をもつ二重鎖DNAに対する親和性が高い。3‘突出末端をもつ二重鎖DNAとGST Rad57の複合体を電子顕微鏡で観察したところ、GST Rad57がDNAの末端に結合している分子が多数、観察された。また、GST Rad57と反応させた複数のDNA分子が平行に寄せ集められている様子が観察された。DNAが凝集した結果、分子間の衝突頻度が高くなり、相同なDNA分子と対合する機会が増加して、それが組換えに有利に働くと考えられた。
 Rad55の発現量が極めて少ないこととRad55とRad57が実際に複合体を形成することから、Rad55-57複合体は、ランダムにDNAに結合するのではなく、減数分裂期組換えに見られるような、3’OH末端が突出したssDNAを認識して結合すると考えた。そして、特徴的なDNA結合活性とRAD55とRAD57の遺伝学的解析から、Rad55-57複合体は3’OH末端が突出したssDNAに結合し、Rad51のssDNAへの結合の起点となり、DNAの一方の末端から効率良くpresynaptic filamentが形成されるように機能することであると予想した。, application/pdf, 総研大甲第407号}, title = {出芽酵母の相同組換えにおけるRad55とRad57の役割}, year = {} }