@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000945, author = {杵渕, 隆 and キネブチ, タカシ and KINEBUCHI, Takashi}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {生物ゲノムの構造形成や機能発現に関与するDNA結合蛋白質は、大腸菌では約250種類が知られ、約1,000種類の大腸菌構成蛋白質の約25%を占める。それらは全てDNAに結合して機能を発揮するが、その生理機能に応じて結合様式は多様であると推定されているが、実体は不明の部分が多い。転写調節因子は、制御をする特定遺伝子の特定部位に結合して機能を発揮するが、特異的複合体形成に至る過程については、幾つかのモデルが提唱されてきた。そのひとつに、蛋白質はまずDNAと非特異的に結合し,そこからDNAに沿って一次元的に拡散する機構,いわゆる“スライディング″仮説がある。この仮説は最近、蛋白質を蛍光標識し、DNA上での一分子の動きを観察する技術を利用して支持されてきた。しかし、スライディングについては定量的実験がすくなく、しかも蛋白の種類に応じて、その意義が異なることが示唆されて、まだ明確ではない。申請者の所属する研究室では、先に大腸菌RNAポリメラーゼと、転写調節囚子CamRのDNA結合過程を解析し、CamR蛋白質では、スライディングによって特異部位へ接近し結合するが、特異部位からの解離過程ではスライディングによらないことを観察し、スライディングが結合速度のみを速め、結果として、特異部位との結合定数を高めていることを明らかにし、この現象を、「アンテナ効果」と名付けた。

   DNA結合蛋白質の特定部位結合におけるアンテナ効果を実証する目的で、大腸菌トリプロファン合成系遺伝子群の転写調節因子TrpRを研究対象として選択した。この転写因子については、従来、オペレーターを含む短鎖DNAをプローブに利用すると、特異的TrpR部位への結合は、非特異的結合に比べて高々200倍程度強いに過ぎないと報告されていた。非特異的結合部位は、ゲノムのどこにでも結合できるとすると、大腸菌ゲノムのサイズから約107も存在すると推定され、特異的部位に比べて圧倒的に多い。しかし、TrpRは、細胞内200分子程度しかなく、支配下の遺伝子のオペレーターに特異的に結合できるのは、アンテナ効果を最大限に利用しているに違いないと予測したからである。アンテナ効果を測定するために、申請者は、同じTrpR結合部位配列を1個所にもつが、鎖長の異なる多数のプローブDNAを構築して、それぞれへのTrpRの結合量を測定した。DNA結合蛋白量を測定するのに、ゲルシフト法では、DNA一蛋白質複合体分離途中にも解離が進むので、溶液中で平衡状態にあるDNA結合蛋白量を測定できる、OHラジカルフットプリンティング法を採用した。その結果、18bpから5,200bpにプローブの鎖長が増えると、結合強度が約104倍に高まることが見事に実証された。アンテナ効果は,DNAのルーピングによる、遠距離DNAの接近によっても起こる可能性がある。そこで、DNA鎖途中に、アビジンをビオチンを介して結合させて蛋白質の移動を妨害するスライディングバリヤーとし、このDNAに対してOHラジカルフットプリント法を用いて、TrpRのDNA親和性を測定したところ、TrpRのアンテナ効果が解消された。従って、長鎖DNAによる結合強度の増加は、ルーピング効果ではないと結論された。

   以上の実験の結果、転写囚子TrpRが実際にスライディングのアンテナ効果を利用して特異的DNAシグナルに結合していることが実証された。本研究の成果は、TrpRを巡る従来の矛盾を解決したことに留まらず、アンテナ効果を利用して、生物が少量の調節蛋白で特異的な遺伝子制御を出来ることを予測した、先駆的研究である。, application/pdf, 総研大甲第434号}, title = {RNA結合蛋白質のスライディングの意義}, year = {} }