@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000953, author = {牧野, 茂 and マキノ, シゲル and MAKINO, Shigeru}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {Sonic Hedgehog(Shh)は脊椎動物の様々な器官形成の局面で細胞分化、増殖、組織の極性形成をコントロールする重要な分泌性シグナル分子である。Shhの異所的発現が様々な形態異常を引き起こすことからShhの発現と、シグナル伝達は厳密にコントロールされる必要があると考えられる。通常Shhの細胞内でのシグナル伝達は膜タンパクPatched(Ptc)により抑制されており、ShhはPtcに結合してこの抑制を解除することによりシグナル伝達を引き起こすと考えられている。このモデルは主にショウジョウバエにおける遺伝学的研究から導かれたものである。ところが脊椎動物のPtc1蛋白には無脊椎動物には見られないC - 末端細胞内ドメインがあり、その機能について興味がもたれていた。
  Ptc1のマウス発生における機能についてはこれまでジーンターゲッティング法で作製されたnull型変異(ptc-)によって解析されてきた。しかしptc1-/-の個体は発生約10日の段階で致死になるため、ptc1の発生後期における機能、特に様々な器官形成におけるptc1の機能を調べることは今まで不可能であった。今回新たなptc1変異を同定し、上記の問題を追求した。
 messenchymal dysplasia(mes)は第13番染色体上にマップされている劣性マウス突然変異で、軸前側多指症の他に、頭部や胸骨の形態異常、皮膚の過形成、体重の増加など、中胚葉由来の組織の異常を示す。まずmes原因遺伝子を探索するため、日本産野生マウス由来のMSM系統を用いた連鎖解析を行った。その結果、mesはD13Mit318とD13Mit187の間1.7cMの領域にマップされ、patched1 (ptc1)と緊密にリンクしている事を明らかになった。さらにmesホモ個体でptc1遺伝子上に32bpの欠失が存在することと、ptc1ノックアウトマウス(ptc1-)とのアレリズムテストによりmesはptc1のhypomorphicなアリルであることを証明した。またC - 末端細胞内ドメインのほとんどはmesにおけるptc1の32bpの欠失により無関係な配列に入れ替わっていると推定された事からこのドメインがShhシグナル伝達に必須であることが示唆された。
 次にptc1-/mes個体をしらべる事によりPtcの器官形成期における機能を解析した。発生17日以降の肺では間葉細胞の過形成が観察された。また、ptc1-/mes個体はptc1+/+個体と比較して約1.4倍体重が増加した、特に背側や食道、気管の周りの間葉細胞の過増殖が観察された。以上より、ptc1は様々な間葉細胞の増殖抑制に関与していることが示唆された。ところがptc1-/mes個体においてShhの発現に異常は見られなかった。この結果の有力な解釈の一つはPtc1がリガンドであるShhに依存しない状態で間葉細胞の増殖抑制に関与しているとするものである。
 ptc1-/mes個体は肢芽の前端部で非常に弱いShhの発現と強いFgf4の異所的発現を起こし軸前側多指症を示す。しかしShhシグナル活性化の指標であるptc1の転写に変化は見られないことから、一般に考えられているようなShhシグナル伝達系は肢芽前端部で活性化されていないことが分かった。この結果はさらに慎重な検討を要するが、肢芽におけるShhのシグナル伝達系がFgf4転写活性化とptc転写活性化の2つに分岐しており、後者の系はPtc1mesによっては抑制されない、という可能性を示すものとして注目に値する。以上の様に本研究はShhシグナル伝達という生物学的に極めて重要な問題に対してマウス遺伝学の特性を活用して新たな重要な知見を導き出した。この成果の発生生物学への貢献は極めて大きいものであると考えられる。, application/pdf, 総研大甲第468号}, title = {Developmental genetics of mouse mutantmesenchymal dysplasia(mes)}, year = {} }