@misc{oai:ir.soken.ac.jp:00000983, author = {中村, 洋路 and ナカムラ, ヨウジ and NAKAMURA, Yoji}, month = {2016-02-17, 2016-02-17}, note = {中村洋路君の学位論文は4章から構成されている。第1章は序章で、中村君は、最近、原核生物のゲノムが複数の異なった起源をもつゲノム断片から構成されていることが明らかになりつつあること、この上うなゲノムの進化的構築過程で水平遺伝子移行が重要な役割を果たしていることなどを述べた上で、彼の学位論文の目的が、水平遺伝子移行に焦点を合わせた原核生物ゲノムの進化を明らかにすることであると述べている。
 第2章では、与えられたゲノム中の水平移行遺伝子を推定するために、ベイズの定理とマルコフモデルにもとづいた彼独自の方法(ベイズ推定法)を考案している。彼の方法では、1問題とするDNA断片が全ゲノム中のコーディング領域に存在する事後確率」が水平移行遺伝子かどうかの尺度となる。つまり、この事後確率が低いと水平移行遺伝子と解釈する。この事後確率を求めるために、DNA断片がコーディング領域に存在する条件付確率と非コーディング領域に存在する条件付確率の値が必要となり、これらの確率をマルコフ学習モデルを用いて求めている。この学習は、全ゲノムの塩基構成をもとに行っている。さらに彼は、得られた結果を統計的に検定するために、モンテカルロシミュレーションを行った。このシミュレーションでは、与えられた全ゲノム配列に対して、コンピュータ中で任意に生成されたコーディング配列の事後確率分布を求め、この分布に従って検定を行っている。水平遺伝子を推定する統計的方法は他にもある。しかし、彼の方法の優れている点は、水平移行遺伝子の供与種もつきとめることが出来ることにもある。また、水平移行遺伝子の種類を探るために、分子系統樹による解析もなされた。この方法では、予め系統関係の明らかな4種を選び、これら4種のゲノム中の遺伝子でこの系統関係に合わないものを選び出し、これらの遺伝子を水平移行によってゲノムに取り込まれた遺伝子と定義する。リファレンスとなる系統関係は、RNA遺伝子を用いて作成された。
 第3章では上記方法を全ゲノム配列が明らかになっている84種の原核生物に適用し、全ゲノム中での水平移行遺伝子の種類と割合を求めている。その結果、統計的手法で求められた水平移行遺伝子の割合は、84種の平均では12%にものぼった。これほどの大規模解析は前例のない試みであり、こうした俯敵的視点から今回初めて原核生物ゲノムの進化的構築に遺伝子の水平移行が有意に貢献していることが示唆された。また、この84種のゲノムの中で、16種で新規に見つかった61の病原性アイランド(pathogenicity islands)を含む867の遺伝子クラスターが水平移行によって獲得されたことを示唆した。さらに、水平移行遺伝子の多くは、細胞表面構造、病原性、可動因子や制御機能に関与していると論じている。このことは、生物に基本的な遺伝子は長い間保存され、種特有の性質は遺伝子の水平移行によって獲得されることを意味する。彼の方法は、水平移行遺伝子の供与種も推定することができる。その一例として、E. Coliのglfなど7種の遺伝子はStreptococcus pneumoniaeから移行してきたと論じている。また、アミノ酸生産菌であるCorynebacterium efficiensとその近縁種の全ゲノムに彼の方法を適用し、C. efficiensの水平移行による遺伝子の得失により、他の近縁種より特異な生物特性を獲得したことを示した。さらに、彼の方法は従来の方法より移行遺伝子の検出感度が高いことを確認している。彼は、水平移行遺伝子のデータベースも作成しており、これも多くの研究者に有用と考えられる。第4章はまとめである。, application/pdf, 総研大甲第683号}, title = {Comparative genomics of prokaryotes with special reference to horizontal gene transfer, and its evolutionary implication}, year = {} }