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  1. 020 学位論文
  2. 先導科学研究科
  3. 21 生命体科学専攻

中国雲南省西北金沙江・瀾滄江上流のリス族に関する民族生態史的研究

https://ir.soken.ac.jp/records/1215
https://ir.soken.ac.jp/records/1215
5ed6103f-180d-477a-ac91-d9cf4995e250
名前 / ファイル ライセンス アクション
甲912_要旨.pdf 要旨・審査要旨 (389.6 kB)
Item type 学位論文 / Thesis or Dissertation(1)
公開日 2010-02-22
タイトル
タイトル 中国雲南省西北金沙江・瀾滄江上流のリス族に関する民族生態史的研究
タイトル
タイトル An Ethno-Ecohistorical Study of the Lisu Ethnic Minority in Upper River Basin of Jinshajiang and Lancangjiang, Northwestern Part of Yunnan Province, China
言語 en
言語
言語 jpn
資源タイプ
資源タイプ識別子 http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec
資源タイプ thesis
著者名 何, 大勇

× 何, 大勇

何, 大勇

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フリガナ カ, ダイユウ

× カ, ダイユウ

カ, ダイユウ

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著者 HE, Deyong

× HE, Deyong

en HE, Deyong

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学位授与機関
学位授与機関名 総合研究大学院大学
学位名
学位名 博士(学術)
学位記番号
内容記述タイプ Other
内容記述 総研大甲第912号
研究科
値 先導科学研究科
専攻
値 21 生命体科学専攻
学位授与年月日
学位授与年月日 2005-09-30
学位授与年度
値 2005
要旨
内容記述タイプ Other
内容記述 中国雲南省西北部の金沙江と瀾滄江上流域では、豊かな自然・生物多様性と民族・文化多様性が現出しており、2003年に「怒江」流域を含め、「三江並流」として世界遺産に登録された。「三江並流」地域は、古くから人類学的調査研究地域として注目されてきた。<br /> 本論文は中国雲南省における金沙江と瀾滄江に挟まれた領域の山地に居住しているリス族を対象に、フィルード・ワークに基づき、生業複合の構成、生態環境利用の変容・転換、資源管理に焦点を当て、民族と環境との相互作用の実態を解明し、民族生態史の視座から分析したものである。本研究の主な成果は、以下の4点に集約できる。<br /><br />1 リス族と生態環境との関係性を生業複合の変容・転換(transition)に着目した記述<br />2 環境移行帯(2,000~3,700m:自然と文化の多様性が見られる)における生業複合の動態の解明<br />3 環境保全と資源管理の新しいモデル“生態統括(eco-governance)”の提唱<br />4 民族生態史(ethno-ecohistory)の提唱<br /> ・伝統的な生業複合の構成(subsistence complex composition)とその変容、<br /> ・現在における生態環境利用の転換(use of eco-environmrnt in transition)とその動態の分析から、<br /> ・将来における持続的資源管理(sustainable resource management for future)のための民族生態史の研究の重要性を提言した。<br /> 本研究課題の全体の主な内容は以下に示すとおりであり、本論文は5章から構成されている。<br /> 第1章では、民族生態史という概念を検討し、先行研究と研究課題、研究手法について述べる。<br /> 第2章では、研究対象であるリス族の生態環境と調査地の概況について記述する。自然環境の特性、土地利用と土壌浸食、リス族の地理分布と人口概況、歴史文化について概述し、研究地域としての金沙江上流域(長江の上流域)と瀾滄江上流域(メコン河の上流域)の選定理由を説明する。<br /> 第3章では、リス族の行う生業活動全般(農耕・牧畜・採集・狩猟・養蜂・漁撈活動) の記述・分析を行い、民族生態史の具体的な例を提示する。ここでは生業複合の構成と生態環境利用の変容・転換を検討し、3つの居住空間における山地の高度差を利用した生活様態について詳述する。さらに、リス族と棲み分けているイ族、チベット族にも言及する。<br /> 農耕に関しては、耕地把握、栽培作物戦略、労働交換の慣習、耕地での定着種・在来種の維持、家庭菜園での新品種と在来種の動態についての分析を行った。山地で行われてきた自給的畑作に加え、1950年代以後から国家政策として開発的稲作が導入された。土地分配が行われ、家族(個人)経営の稲作が低地の河川周辺地域で開始された。1980年代以後には、収穫量を向上させる目的で、山地の畑地と低地の水田に新しい種が導入され始めた。それでも、さまざまな定着種・在来種が依然として持続的に維持されていることは注目に値する。リス族は土着の多様な定着・在来種を家庭菜園で栽培し、必ずしも商品化・均一化に全面的に流されていたわけではない。一方で、多くの新品種の導入も試み、家園菜園は有用植物の選別と保存の空間となっている。<br /> つぎに、牧畜における放牧システムについて記述・分析を行った。リス族は、家畜の個体認識を行い、季節的移牧を行う。管理は共同放牧が主で、その結果、個人による資源浪費的な自由放牧が回避され、労働力も有効に分配されていることがわかった。共有の放牧地は村落共同体の慣習的管理体制のもとに、持続的に利用されている。リス族だけではなく、イ族、チベット族などの少数民族も、村単位の規制による類似した管理体制を持っていることも明らかにできた。<br /> しかしながら近年、リス族とイ族とが棲み分けている共同牧場において大きな変化が起こっている。市場経済の影響で、従来の放牧家畜であるヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ以外に、イ族が経済価値の高いヤクを導入し始めた。ヤクの摂食量は大きく、また個人飼育であるため、牧草地の荒廃が生じている。<br /> 採集活動においても変化が見られる。薬草については、伝統的に利用される薬草と商品として利用される薬草の種類が異なっている。商品となる薬草の需要拡大から、特定の薬草(紅豆杉、ヤマノイモ(Dioscorea spp.)など)の乱獲が起こっている。また、同様に市場経済の浸透によって、キノコ類(とくに松茸)が乱獲され、野生ランとともに絶滅の危機状態が生じてきた。 <br /> 狩猟はリス族の生業活動の中で特別な地位を占めている。単に生業経済のためだけでなく、文化的にも重要なのである。しかし、中国政府は1998年に狩猟の全面禁止政策を実施したために、伝統的な狩猟による肉の獲得や交易が行なわれなくなった。その結果、生活経済に占める狩猟の地位は低下したが、一方で文化的な意義は強化される傾向にある。リス族のスポーツとしての弩弓競技を続けるなかで、狩猟技術の存続を図っており、さらに弩弓競技を生かして、地域の観光開発につなげようとしている。<br /> 第4章では、対象地域の生態環境の危機にかかわる要因を分析し、今日に至る生態環境の保全にかかわる政策的資源管理の転換点(天然林保護プロジェクト・退耕還林(草)・自然保護区など)について考察した。ひとつの事例として中国国家1級保護動物の〓金絲猴の保護活動をとりあげ、持続的資源管理の解決方策を模索するための政策統括について論じた。<br /> 一方、国家政策ではない保護活動の事例として、禿杉「神樹」信伸に着目し、少数民族による自主的な資源管理(ESRM=ethnic self resource management) について言及した。<br /> 国家による退耕還林(草)、生態観光、生態移民などの政策転換にたいして、少数民族の自主的資源管理に注目したのは、国家政策は画一的・一元的であり、その運用にあたって地域の固有性・多様性にきめ細かな配慮を欠くため、往々にして十分な効力を発揮できないからである。時には地域住民の反発を買うことすらある。一方、少数民族による自主的な資源管理は、多様な地域特性を経験的に理解したものであり、地域社会の生業活動と矛盾することも少ない。<br /> 国家政策と地域住民の自主的管理は、二項対立的なものではない。むしろ車の両輪のごとく、補完的に機能させるべきであろう。<br /> 第5章は、結論である。すでに断片的に触れているが、リス族の生業複合の構成(農耕・牧畜・採集・狩猟・養蜂・林業)とその変化(生態史)の実態から、伝統(土着)的な生態学的知識(TEK)と科学的な生態学的知識(SEK)との競合・対立・融合の相互関係を明らかにした。生態環境利用の変容。転換と持続性についての問題へ、あらたな視点を導入しようという試みである。新しい資源管理と複雑化した環境問題に対応していくために、地域的固有の知識が一つのとントになることを指摘した。<br /> まず、実効的な資源管理を実施するためには、TEKに集約される伝統的知識への再評価が必要である。そのうえで提唱したいのは、健全な伝統利用、資源共生化、政策統括の3 者を統合的に進める生態統括(eco-governance)の理念である。<br /> つぎに、雲南省西北地域における民族間(漢・チベット族)の文化的エコトーン(移行帯・接点域)における共生的棲み分けと生態環境との複合関係の研究を民族生態史の課題として提起した。<br /> 最後に、民族生態史の研究意義を、生物多様性と文化多様性との相互作用として論じた。生物多様性と文化多様性との複合関係を相互作用プロセスの中で、形成されたさまざまな履歴こそが民族生態史そのものであるともいえる。<br /> 以上のように、環境と人類との関係を解明する研究では、人類学(民族学)と生態学や環境学との共同研究が進んでいるが、どのように議論を深めるかについての展望や細分化した研究はまだない。本研究は、環境保全と持続的発展の課題を究明するために、新たな研究分野である民族生態史の理念を提唱した。本研究で示した生態統括と民族間の文化的エコトーン(移行帯・接点域)に関する研究視点を、今後多くの事例を通じてさらに深化させることが最重要の課題である。
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Ver.1 2023-06-20 16:06:48.106469
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