WEKO3
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金属表面におけるメタールの反応は、化学結合の選択活性の研究には最適な系であると考えられる。これは、メタノールが三つの異なる化学結合(CH,CO,OH)を持つ、もっとも単純なアルコールであることに由来する。このため、1980年代から数々の清浄および修飾された金属表面でおこるメタノール反応の研究がなされてきた。さらに近年、金属表面におけるメタノールの反応は、燃料電池の電極表面で起こる反応として注目されている。Pt触媒を燃料電池の電極材料として用いるとメタノールはPt表面において室温で完全に解離して水素を生成するため、特に応用上重要である。このPt触媒の表面構造は、(111)表面が最安定構造であることから、(111)表面が支配的であると考えられる。したがって、Pt触媒表面でのメタノール表面反応機構を理解する第一段階として、清浄及び化学修飾されたPt(111)表面でのメタノール反応を知る必要がある。しかし、これまで多種多様な手法によって研究がなされてきたにもかかわらず、メタノールの酸化反応機構は、完全に明らかになってはいない。\u003cbr /\u003e メタノールは、水素結合を介して互いに相互作用する。Pt(111)表面における第一層のメタノール吸着構造は、メタノールの固体結晶の構造と類似した構造であることが提唱されている。しかし、振動分光および走査トンネル顕微鏡などによって、メタノールの吸着構造が実験的に証明されているわけではない。メタノールの吸着構造と反応の関係を明らかにすることは、非常に重要である。さらに反応中間体は、反応機構を理解するための重要な情報を与える。しかし、多くの酸化反応中間体が推測されるにもかかわらず、メトキシ(CH\u003cSUB\u003e3\u003c/SUB\u003eO)だけが酸素原子修飾Pt(111)表面(Pt(111)-(2×2)O)における反応中間体として確認されているだけである。\u003cbr /\u003e この論文は、赤外反射吸収分光法(IRAS),X線光電子分光法(XPS)および昇温脱離法(TPD)を用いて、清浄Pt(111)表面でのメタノール(CH\u003cSUB\u003e3\u003c/SUB\u003eOH)の吸着構造と酸素原子修飾および酸素分子共吸着Pt(111)表面におけるメタノール酸化反応機構の研究に関するものである。メタノールの被覆率を低被覆率から高被覆率に系統的に変化させて研究するためには、低温で高感度測定が可能なIRASが必要である。そこで、高感度IRASが可能な超高真空槽を設計し、実験をおこなった。\u003cbr /\u003e\u003cbr /\u003e1.Pt(111)表面におけるメタノールの吸着構造\u003cbr /\u003e Pt(111)表面におけるメタノール間の相互作用は、メタノール表面反応機構を考える上で重要である。メタノールは、水素結合によって他のメタノールと相互作用している。多結晶Pt表面に多層で吸着したメタノールの構造は、メタノール固体結晶と類似していることが報告されている。このことから、メタノール第一層の吸着構造も固体と類似した構造、すなわち、すべてのメタノールのメチル基が各々のメタノールの酸素原子を含んだ面に対してある角度を持って、互いに水素結合している鎖状構造であると推測されている。しかし、Pt(111)表面におけるメタノール第一層の吸着構造に関して実験的な証拠は得られていない。\u003cbr /\u003e 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しかし、この研究においてメタノールの被覆率に依存して、反応経路が変化することを新たに発見した。Pt(111)-(2×2)O表面にメタノール飽和吸着させると、メタノールは反応せず分子で脱離するか、一部吸着している酸素原子と反応して、メトキシを経てCO,H\u003cSUB\u003e2\u003c/SUB\u003eおよびH\u003cSUB\u003e2\u003c/SUB\u003eOを生成する。反応中間体であるメトキシの脱水素化反応により生成されると推測されるホルムアルデヒド(H\u003cSUB\u003e2\u003c/SUB\u003eCO)およびホルメート(HCO\u003cSUB\u003e2\u003c/SUB\u003e)は、検出されなかった。しかし、飽和吸着量より低いメタノールの被覆率において、メトキシの脱水素化生成物であるホルムアルデヒドが180Kで、さらに200Kでホルメートに酸化され、これが300Kまでに解離することが新たにわかった。\u003cbr /\u003e このメタノール被覆率依存性は、メタノール酸化過程において生成されるCOによって引き起こされていた。メタノールからホルムアルデヒドとホルメートを生成した後にCOを吸着させると、COの被覆率の増加に伴い、吸収ピークの強度の減少した。これは、後吸着させたCOにより反応中間体が脱離または解離していることを示している。COは、メタノールの最終的な酸化反応生成物であり、その生成量はメタノールの被覆率が増すとともに増加する。したがって、新たに検出された反応中間体のホルムアルデヒドおよびホルメートは、酸化生成物であるCOが共吸着することにより、検出できないほどに短い寿命しか持ちえなくなっていると考えられる。\u003cbr /\u003e\u003cbr /\u003e3.Pt(111)表面に共吸着した酸素分子によるメタノール酸化反応\u003cbr /\u003e Pt(111)表面に酸素分子は、150K以下で吸着することができる。この吸着した酸素分子の反応性は、酸素原子のそれよりも高いと推測される。にもかかわらず、酸素分子の反応性は、酸素原子の反応性ほど研究されておらず、完全に理解されているわけではない。近年、Pt(111)表面のメタノールは、150Kで共吸着した酸素分子の熱解離によって生成されるホット酸素原子により酸化されて、ホルメートを生成することが報告された。この反応機構において、メタノールと酸素分子の間の相互作用は必要とされない。\u003cbr /\u003e しかし、IRASにより同様の実験を低温でおこなった結果、メタノールと酸素分子が共吸着したPt(111)表面において、70Kでもホルメートが生成されていることが観測された。70Kは、清浄Pt(111)表面に吸着した酸素分子が解離する温度である150Kよりも遥かに低い温度である。この結果は、明らかにメタノールと酸素分子間の相互作用が重要な働きをしていることを示している。これにより、酸素分子の解離障壁の低下が引き起こされると考えられる。この相互作用は、Pt(111)表面に吸着したメタノールのメチル基と吸着酸素分子,O\u003cSUB\u003e2\u003c/SUB\u003e\u003cSUP\u003eδ\u003c/SUP\u003e(δ=1,2)間の水素結合によるものと想われる。この水素結合は、表面Pt原子から酸素分子への電荷移動による静電相互作用の増強によって引き起こされると推測される。\u003cbr /\u003e メタノール吸着Pt(111)表面での酸素分子の吸着確率は、表面温度が増すにつれて減少し、これに伴い、酸化生成物がホルメートからCOへの変化した。これは、酸素分子の被覆率が低い場合、メタノールは酸素分子によりホルメートへと酸化されるだけでなく、ホルメート生成と同時に表面に生成される酸素原子により酸素分子と反応しなかったメタノールの酸化反応が起こることが原因であった。\u003cbr /\u003e\u003cbr /\u003e 以上の研究から、清浄Pt(111)表面に吸着したメタノール第一層の吸着構造は、鎖状構造であることを示す実験的な結果が得られた。この鎖状構造は、160Kで崩壊が始まる。Pt(111)-(2×2)O表面に低被覆率でメタノールを吸着させたときのメタノール酸化反応中間体として、ホルムアルデヒド(H\u003cSUB\u003e2\u003c/SUB\u003eCO)をはじめて観測した。このホルムアルデヒドは、共吸着COにより不安定化されていた。酸素分子共吸着Pt(111)表面において、70Kでホルメート(HCO\u003cSUB\u003e2\u003c/SUB\u003e)がメタノールから生成された。これは、共吸着分子間の相互作用により酸素分子の解離障壁が低下して引き起こされていると考えられる。この相互作用は、メタノールのメチル基と吸着酸素分子(O\u003cSUB\u003e2\u003c/SUB\u003e\u003cSUP\u003e-\u003c/SUP\u003eまたはO\u003cSUB\u003e2\u003c/SUB\u003e\u003cSUP\u003e2-\u003c/SUP\u003e)間の水素結合によるものと推測した。", "subitem_description_type": "Other"}]}, "item_1_description_18": {"attribute_name": "フォーマット", "attribute_value_mlt": [{"subitem_description": "application/pdf", "subitem_description_type": "Other"}]}, "item_1_description_7": {"attribute_name": "学位記番号", "attribute_value_mlt": [{"subitem_description": "総研大甲第821号", "subitem_description_type": "Other"}]}, "item_1_select_14": {"attribute_name": "所蔵", "attribute_value_mlt": [{"subitem_select_item": "有"}]}, 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赤外反射吸収分光によるPt(III)表面でのメタノール酸化反応の研究
https://ir.soken.ac.jp/records/1243
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名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2010-02-22 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 赤外反射吸収分光によるPt(III)表面でのメタノール酸化反応の研究 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者名 |
澤田, 健
× 澤田, 健 |
|||||
フリガナ |
サワダ, タケシ
× サワダ, タケシ |
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著者 |
SAWADA, Takeshi
× SAWADA, Takeshi |
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学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 総合研究大学院大学 | |||||
学位名 | ||||||
学位名 | 博士(理学) | |||||
学位記番号 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 総研大甲第821号 | |||||
研究科 | ||||||
値 | 先導科学研究科 | |||||
専攻 | ||||||
値 | 22 光科学専攻 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2004-09-30 | |||||
学位授与年度 | ||||||
2004 | ||||||
要旨 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 金属表面におけるメタールの反応は、化学結合の選択活性の研究には最適な系であると考えられる。これは、メタノールが三つの異なる化学結合(CH,CO,OH)を持つ、もっとも単純なアルコールであることに由来する。このため、1980年代から数々の清浄および修飾された金属表面でおこるメタノール反応の研究がなされてきた。さらに近年、金属表面におけるメタノールの反応は、燃料電池の電極表面で起こる反応として注目されている。Pt触媒を燃料電池の電極材料として用いるとメタノールはPt表面において室温で完全に解離して水素を生成するため、特に応用上重要である。このPt触媒の表面構造は、(111)表面が最安定構造であることから、(111)表面が支配的であると考えられる。したがって、Pt触媒表面でのメタノール表面反応機構を理解する第一段階として、清浄及び化学修飾されたPt(111)表面でのメタノール反応を知る必要がある。しかし、これまで多種多様な手法によって研究がなされてきたにもかかわらず、メタノールの酸化反応機構は、完全に明らかになってはいない。<br /> メタノールは、水素結合を介して互いに相互作用する。Pt(111)表面における第一層のメタノール吸着構造は、メタノールの固体結晶の構造と類似した構造であることが提唱されている。しかし、振動分光および走査トンネル顕微鏡などによって、メタノールの吸着構造が実験的に証明されているわけではない。メタノールの吸着構造と反応の関係を明らかにすることは、非常に重要である。さらに反応中間体は、反応機構を理解するための重要な情報を与える。しかし、多くの酸化反応中間体が推測されるにもかかわらず、メトキシ(CH<SUB>3</SUB>O)だけが酸素原子修飾Pt(111)表面(Pt(111)-(2×2)O)における反応中間体として確認されているだけである。<br /> この論文は、赤外反射吸収分光法(IRAS),X線光電子分光法(XPS)および昇温脱離法(TPD)を用いて、清浄Pt(111)表面でのメタノール(CH<SUB>3</SUB>OH)の吸着構造と酸素原子修飾および酸素分子共吸着Pt(111)表面におけるメタノール酸化反応機構の研究に関するものである。メタノールの被覆率を低被覆率から高被覆率に系統的に変化させて研究するためには、低温で高感度測定が可能なIRASが必要である。そこで、高感度IRASが可能な超高真空槽を設計し、実験をおこなった。<br /><br />1.Pt(111)表面におけるメタノールの吸着構造<br /> Pt(111)表面におけるメタノール間の相互作用は、メタノール表面反応機構を考える上で重要である。メタノールは、水素結合によって他のメタノールと相互作用している。多結晶Pt表面に多層で吸着したメタノールの構造は、メタノール固体結晶と類似していることが報告されている。このことから、メタノール第一層の吸着構造も固体と類似した構造、すなわち、すべてのメタノールのメチル基が各々のメタノールの酸素原子を含んだ面に対してある角度を持って、互いに水素結合している鎖状構造であると推測されている。しかし、Pt(111)表面におけるメタノール第一層の吸着構造に関して実験的な証拠は得られていない。<br /> メタノール吸着Pt(111)表面を140Kで熱処理すると、メタノールOH伸縮振動に由来するブロードな吸収ピークが、3197と3308cm<SUP>-1</SUP>の二つの吸収ピークに分裂した。この分裂した二つの吸収ピークは、Pt(111)表面に単層で吸着しているメタノールの鎖状構造におけるOH伸縮振動間の相互作用によって生じたOH伸縮振動の同位相と逆位相の振動によるものである。このような吸収スペクトルは多層および固体結晶におけるものと類似しており、これまで推測されていたようにメタノール第一層の吸着構造も固体と類似した構造であることを実験的に観測することができた。さらに、メタノール第一層が脱離する温度付近に昇温すると、メタノール鎖状構造の崩壊が観測された。<br /> このメタノール鎖状構造の崩壊に伴い、メタノールの吸着構造の変化が起こると考えられる。メタノール鎖状構造の崩壊に伴い、メタノールのCH逆対称伸縮振動に帰属される吸収ピークの吸収強度に顕著な変化が観測された。これは、鎖状構造が崩壊した後のメタノールは、その分子面がPt(111)表面に向かって、鎖状構造のメタノールよりも、さらに傾いて吸着していると考えられる。加えて、メタノールのCO伸縮振動領域にもOH伸縮振動に観測されたピークの分裂をすることに成功した。<br /><br />2.Pt(111)-(2×2)0表面でのメタノール酸化反応中間体<br /> Pt(111)表面に酸素原子を飽和吸着させると3個のPt表面原子の間に吸着し、表面の周期構造として、Pt(111)-(2×2)O構造をとる。Pt(111)-(2×2)O表面においてメタノールは、130~170Kで酸化されてメトキシを生成する。このメトキシは、170K以上でCOとHに急速に解離する。<br /> しかし、この研究においてメタノールの被覆率に依存して、反応経路が変化することを新たに発見した。Pt(111)-(2×2)O表面にメタノール飽和吸着させると、メタノールは反応せず分子で脱離するか、一部吸着している酸素原子と反応して、メトキシを経てCO,H<SUB>2</SUB>およびH<SUB>2</SUB>Oを生成する。反応中間体であるメトキシの脱水素化反応により生成されると推測されるホルムアルデヒド(H<SUB>2</SUB>CO)およびホルメート(HCO<SUB>2</SUB>)は、検出されなかった。しかし、飽和吸着量より低いメタノールの被覆率において、メトキシの脱水素化生成物であるホルムアルデヒドが180Kで、さらに200Kでホルメートに酸化され、これが300Kまでに解離することが新たにわかった。<br /> このメタノール被覆率依存性は、メタノール酸化過程において生成されるCOによって引き起こされていた。メタノールからホルムアルデヒドとホルメートを生成した後にCOを吸着させると、COの被覆率の増加に伴い、吸収ピークの強度の減少した。これは、後吸着させたCOにより反応中間体が脱離または解離していることを示している。COは、メタノールの最終的な酸化反応生成物であり、その生成量はメタノールの被覆率が増すとともに増加する。したがって、新たに検出された反応中間体のホルムアルデヒドおよびホルメートは、酸化生成物であるCOが共吸着することにより、検出できないほどに短い寿命しか持ちえなくなっていると考えられる。<br /><br />3.Pt(111)表面に共吸着した酸素分子によるメタノール酸化反応<br /> Pt(111)表面に酸素分子は、150K以下で吸着することができる。この吸着した酸素分子の反応性は、酸素原子のそれよりも高いと推測される。にもかかわらず、酸素分子の反応性は、酸素原子の反応性ほど研究されておらず、完全に理解されているわけではない。近年、Pt(111)表面のメタノールは、150Kで共吸着した酸素分子の熱解離によって生成されるホット酸素原子により酸化されて、ホルメートを生成することが報告された。この反応機構において、メタノールと酸素分子の間の相互作用は必要とされない。<br /> しかし、IRASにより同様の実験を低温でおこなった結果、メタノールと酸素分子が共吸着したPt(111)表面において、70Kでもホルメートが生成されていることが観測された。70Kは、清浄Pt(111)表面に吸着した酸素分子が解離する温度である150Kよりも遥かに低い温度である。この結果は、明らかにメタノールと酸素分子間の相互作用が重要な働きをしていることを示している。これにより、酸素分子の解離障壁の低下が引き起こされると考えられる。この相互作用は、Pt(111)表面に吸着したメタノールのメチル基と吸着酸素分子,O<SUB>2</SUB><SUP>δ</SUP>(δ=1,2)間の水素結合によるものと想われる。この水素結合は、表面Pt原子から酸素分子への電荷移動による静電相互作用の増強によって引き起こされると推測される。<br /> メタノール吸着Pt(111)表面での酸素分子の吸着確率は、表面温度が増すにつれて減少し、これに伴い、酸化生成物がホルメートからCOへの変化した。これは、酸素分子の被覆率が低い場合、メタノールは酸素分子によりホルメートへと酸化されるだけでなく、ホルメート生成と同時に表面に生成される酸素原子により酸素分子と反応しなかったメタノールの酸化反応が起こることが原因であった。<br /><br /> 以上の研究から、清浄Pt(111)表面に吸着したメタノール第一層の吸着構造は、鎖状構造であることを示す実験的な結果が得られた。この鎖状構造は、160Kで崩壊が始まる。Pt(111)-(2×2)O表面に低被覆率でメタノールを吸着させたときのメタノール酸化反応中間体として、ホルムアルデヒド(H<SUB>2</SUB>CO)をはじめて観測した。このホルムアルデヒドは、共吸着COにより不安定化されていた。酸素分子共吸着Pt(111)表面において、70Kでホルメート(HCO<SUB>2</SUB>)がメタノールから生成された。これは、共吸着分子間の相互作用により酸素分子の解離障壁が低下して引き起こされていると考えられる。この相互作用は、メタノールのメチル基と吸着酸素分子(O<SUB>2</SUB><SUP>-</SUP>またはO<SUB>2</SUB><SUP>2-</SUP>)間の水素結合によるものと推測した。 | |||||
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