WEKO3
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/\u003e法と同じく、牛胎児血清を必要としているので、培養液に添加される外来因子\u003cbr /\u003eが単独に作用しているのか、それらが血清中の成分と協調して働いているのか\u003cbr /\u003eといったことが全く不明であった。したがって、無血清条件下の分化転換系が\u003cbr /\u003e確立できれば、培養液に添加される因子や、血清中の増殖因子、細胞外基質因\u003cbr /\u003e子などが、どのように、色素上皮細胞分化に影響を与えているのかということ\u003cbr /\u003eを、より明確に追求できると考えられる。\u003cbr /\u003e そのような見地から、本研究では、ニワトリ色素上皮細胞の無血清培養法\u003cbr /\u003eを確立し、それによって、無血清条件下で色素上皮細胞の水晶体細胞への分化転\u003cbr /\u003e換を成立させることを目的とした。\u003cbr /\u003e\u003cu\u003e研究方法と結果\u003c/u\u003e\u003cbr /\u003eI.ニワトリ胚色素上皮細胞の無血清培養法の確立\u003cbr /\u003e\u0026#9312;、ふ卵9日目のニワトリ胚より単離した網膜色素上皮細胞を、イーグルMEM\u003cbr /\u003e培養液のみの、いわゆる完全合成培養液で初代培養すると、細胞は、一度はプ\u003cbr /\u003eラスチック上に接着するが、伸展は不充分で、増殖ができなかった。そのうえ、\u003cbr /\u003e細胞は短期間内に培養器底面から離脱し、培養を維持することが困難であった。\u003cbr /\u003eそこで、色素上皮細胞を、先ず、血清存在下で3?4日間維持した後に、再び\u003cbr /\u003e解離し、無血清条件下に二次培養(secondary culture)として35mm径培養器\u003cbr /\u003e1枚あたり1.0×10\u003csup\u003e5\u003c/sup\u003e個を植え継いだ。血清存在下で短期間培養することで、\u003cbr /\u003e二次培養細胞は上記の無血清培養液でも培養器に接着し、伸展することができ\u003cbr /\u003eた。しかし、この条件下では、細胞増殖はほとんど観察できなかった。さら\u003cbr /\u003eに、培養開始4日目前後で、ある細胞は丸い形となって伸展を弱め、また、あ\u003cbr /\u003eる細胞はプロテアーゼで処理された様に融解現象を起こして、最終的には培養\u003cbr /\u003e器より離脱する現象を示した。そこで、培養器よりの離脱と自己融解現象の抑\u003cbr /\u003e制が不可欠と考え、ラット肝実質細胞の初代培養系で、牛肺由来トリプシン・\u003cbr /\u003eインヒビターが細胞の融解を防ぐという事実を参考とし、色素上皮細胞に対し\u003cbr /\u003eてもトリプシン・インヒビターの効果を検討した。大豆トリプシン・インヒビ\u003cbr /\u003eターを最終濃度1.0mg/ml(培養液)で添加すると、この離脱、自己融解現象が\u003cbr /\u003e抑えられ、色素上皮細胞が、4日間を越えて維持できることを見いだした。さ\u003cbr /\u003eらに、ニワトリ卵由来トランスフェリンを0.1mg/ml(培養液)の濃度で添加す\u003cbr /\u003eることで、細胞の生理状態がより向上されることを確認した。\u003cbr /\u003e\u0026#9313;、さらに、無血清培養液に牛インシュリンを0.1unit/ml(培養液)の濃度で\u003cbr /\u003e添加し、培養器1枚当たり1.0×10\u003csup\u003e5\u003c/sup\u003e個の二次細胞を植え継いだ。その結果、\u003cbr /\u003e色素上皮細胞は増殖を始め、植え継ぎ後8日目には細胞数は1.0×10\u003csup\u003e6\u003c/sup\u003e個/培\u003cbr /\u003e養器に達した。インシュリンが色素上皮細胞の増殖に大きな役割を担っている\u003cbr /\u003eことが確認された。\u003cbr /\u003e\u0026#9314;、基質分子がコートされていないプラスチック基質は、細胞の初期接着を可\u003cbr /\u003e能にはするが、その後の細胞伸展を充分促すことはできなかった。この点を克\u003cbr 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/\u003eリンのタンパク質が存在することが確認された。以上より、無血清条件下でも、\u003cbr /\u003eニワトリ色素上皮細胞は、水晶体細胞に分化転換することが明らかになった。\u003cbr /\u003e\u003cu\u003e研究成果の考察と結論\u003c/u\u003e\u003cbr /\u003e 本研究の無血清培養系では、培養液中に大豆トリプシン・インヒビターを添\u003cbr /\u003e加することにより、長期間、色素上皮細胞を無血清条件下で維持することに初\u003cbr /\u003eめて成功した。また、生体内の色素上皮層と同様な、敷石状単層上皮構造の構\u003cbr /\u003e築には、コラーゲン基質などのコーティングが不可欠であることが判明した。\u003cbr /\u003eこのことから、色素上皮細胞の組織構築の足場として、コラーゲンなどの細胞\u003cbr /\u003e外基質分子が、大きな役割を担っていることが強く示唆された。\u003cbr /\u003e また、フェニルチオウレアとヒアルロニダーゼを含んだ無血清脱分化用培養\u003cbr /\u003e液で色素上皮細胞を培養する時には、コラーゲン基質か、フィブロネクチン基\u003cbr /\u003e質のコーティングが不可欠で、プラスチック基質上では、細胞は直ちに培養器\u003cbr /\u003eより剥がれ、維持できなかった。このことは、脱分化、分化転換を促進する試\u003cbr /\u003e薬であるフェニルチオウレアとヒアルロニダーゼが、細胞-細胞外基質接着を\u003cbr /\u003eその標的として作用していることを強く推察させる。この結果は、色素上皮細\u003cbr /\u003e胞の分化形質発現の安定化には細胞外基質の作用が不可欠であり、その変化が\u003cbr /\u003e水晶体細胞への分化転換に深く関わっているという江口らの見解を裏付けるも\u003cbr /\u003eのである。\u003cbr /\u003e 色素上皮細胞の長期間の無血清培養システムが確立し、無血清条件下の分化\u003cbr /\u003e転換が成功したことは、細胞分化形質の安定性と転換性の分子機構を研究する\u003cbr 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色素上皮細胞の無血清培養法の確立と同細胞種の分化転換性に関する研究
https://ir.soken.ac.jp/records/1294
https://ir.soken.ac.jp/records/1294dc51cc1d-ad9d-4d27-8b11-44eed789b871
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2010-02-22 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 色素上皮細胞の無血清培養法の確立と同細胞種の分化転換性に関する研究 | |||||
タイトル | ||||||
言語 | en | |||||
タイトル | Transdifferentiation of chicken retinalpigmented epithelial cells in serum-free culture | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者名 |
小阪, 淳
× 小阪, 淳 |
|||||
フリガナ |
コサカ, ジュン
× コサカ, ジュン |
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著者 |
KOSAKA, Jun
× KOSAKA, Jun |
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学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 総合研究大学院大学 | |||||
学位名 | ||||||
学位名 | 博士(理学) | |||||
学位記番号 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 総研大甲第24号 | |||||
研究科 | ||||||
値 | 生命科学研究科 | |||||
専攻 | ||||||
値 | X2 分子生物機構論専攻 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 1992-03-16 | |||||
学位授与年度 | ||||||
1991 | ||||||
要旨 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | <u>研究目的</u><br /> 脊椎動物の色素上皮細胞は普遍的にレンズ細胞への分化転換性を維持してい<br />ることが江口らによって実証され、また、色素上皮細胞の分化状態やレンズ細<br />胞への分化転換を完全に人為操作できる細胞培養系が伊藤と江口(1986)によ<br />って確立されている。この細胞培養分化転換系は、細胞分化の安定性と転換性<br />を探求する上で、優れて有用であり、現在、分化転換のしくみについて分子レ<br />ベルでの解析が進んでいる。しかし、この細胞培養<br />実験系は、一般の細胞培養<br />法と同じく、牛胎児血清を必要としているので、培養液に添加される外来因子<br />が単独に作用しているのか、それらが血清中の成分と協調して働いているのか<br />といったことが全く不明であった。したがって、無血清条件下の分化転換系が<br />確立できれば、培養液に添加される因子や、血清中の増殖因子、細胞外基質因<br />子などが、どのように、色素上皮細胞分化に影響を与えているのかということ<br />を、より明確に追求できると考えられる。<br /> そのような見地から、本研究では、ニワトリ色素上皮細胞の無血清培養法<br />を確立し、それによって、無血清条件下で色素上皮細胞の水晶体細胞への分化転<br />換を成立させることを目的とした。<br /><u>研究方法と結果</u><br />I.ニワトリ胚色素上皮細胞の無血清培養法の確立<br />①、ふ卵9日目のニワトリ胚より単離した網膜色素上皮細胞を、イーグルMEM<br />培養液のみの、いわゆる完全合成培養液で初代培養すると、細胞は、一度はプ<br />ラスチック上に接着するが、伸展は不充分で、増殖ができなかった。そのうえ、<br />細胞は短期間内に培養器底面から離脱し、培養を維持することが困難であった。<br />そこで、色素上皮細胞を、先ず、血清存在下で3?4日間維持した後に、再び<br />解離し、無血清条件下に二次培養(secondary culture)として35mm径培養器<br />1枚あたり1.0×10<sup>5</sup>個を植え継いだ。血清存在下で短期間培養することで、<br />二次培養細胞は上記の無血清培養液でも培養器に接着し、伸展することができ<br />た。しかし、この条件下では、細胞増殖はほとんど観察できなかった。さら<br />に、培養開始4日目前後で、ある細胞は丸い形となって伸展を弱め、また、あ<br />る細胞はプロテアーゼで処理された様に融解現象を起こして、最終的には培養<br />器より離脱する現象を示した。そこで、培養器よりの離脱と自己融解現象の抑<br />制が不可欠と考え、ラット肝実質細胞の初代培養系で、牛肺由来トリプシン・<br />インヒビターが細胞の融解を防ぐという事実を参考とし、色素上皮細胞に対し<br />てもトリプシン・インヒビターの効果を検討した。大豆トリプシン・インヒビ<br />ターを最終濃度1.0mg/ml(培養液)で添加すると、この離脱、自己融解現象が<br />抑えられ、色素上皮細胞が、4日間を越えて維持できることを見いだした。さ<br />らに、ニワトリ卵由来トランスフェリンを0.1mg/ml(培養液)の濃度で添加す<br />ることで、細胞の生理状態がより向上されることを確認した。<br />②、さらに、無血清培養液に牛インシュリンを0.1unit/ml(培養液)の濃度で<br />添加し、培養器1枚当たり1.0×10<sup>5</sup>個の二次細胞を植え継いだ。その結果、<br />色素上皮細胞は増殖を始め、植え継ぎ後8日目には細胞数は1.0×10<sup>6</sup>個/培<br />養器に達した。インシュリンが色素上皮細胞の増殖に大きな役割を担っている<br />ことが確認された。<br />③、基質分子がコートされていないプラスチック基質は、細胞の初期接着を可<br />能にはするが、その後の細胞伸展を充分促すことはできなかった。この点を克<br />服するため、ラット尾より抽出したコラーゲンでプラスチック基質面をコーテ<br />ィングし、その上に細胞を植え継いだ。その結果、伸展が著しく促進され、色<br />素上皮細胞は、培養器にコンフルエントの状態にまで増殖し、生体内で形成さ<br />れる色素上皮と同様な、メラニン色素顆粒に富んだ敷石状の単層上皮構造を形<br />成した。プラスチック基質上では、この様な上皮構造は全く形成されなかった。<br />II.無血清条件下の分化転換<br /> 牛胎児血清、フェニルチオウレア及び羊精巣由来ヒアルロニダーゼを添加し<br />た培養液で培養することで、色素上皮細胞は脱分化し、さらに、水晶体細胞へ<br />分化転換することが明らかになっている。そこで、無血清培養液にも、フェニ<br />ルチオウレアと、ヒアルロニダーゼをそれぞれ最終濃度0.5mM及び0.1mg/ml(<br />培養液)で添加し、無血清脱分化用培養液とした。1.0×10<sup>5</sup>細胞/35mm培養<br />器で濃度で色素上皮細胞を、コラーゲン基質上または、フィブロネクチン基質<br />上に植え継ぎ、無血清脱分化用培養液で培養した。色素上皮細胞は増殖しなが<br />ら徐々に色素顆粒を失い、一部で、細胞の重層化が見られた。培養約14日目で、<br />細胞の重層化部分より、特徴的なレンズ様体が出現した。<br /> これらのレンズ様体が含むタンパク質の検索を目的として、水晶体特異的タ<br />ンパク質であるαA-クリスタリンとβ-クリスタリンに対するモノ・クロー<br />ナル抗体を用いて、ウェスタン・ブロッティングを行なった。その結果、無血<br />清条件下で分化転換したレンズ様体にも、αA-クリスタリンとβ-クリスタ<br />リンのタンパク質が存在することが確認された。以上より、無血清条件下でも、<br />ニワトリ色素上皮細胞は、水晶体細胞に分化転換することが明らかになった。<br /><u>研究成果の考察と結論</u><br /> 本研究の無血清培養系では、培養液中に大豆トリプシン・インヒビターを添<br />加することにより、長期間、色素上皮細胞を無血清条件下で維持することに初<br />めて成功した。また、生体内の色素上皮層と同様な、敷石状単層上皮構造の構<br />築には、コラーゲン基質などのコーティングが不可欠であることが判明した。<br />このことから、色素上皮細胞の組織構築の足場として、コラーゲンなどの細胞<br />外基質分子が、大きな役割を担っていることが強く示唆された。<br /> また、フェニルチオウレアとヒアルロニダーゼを含んだ無血清脱分化用培養<br />液で色素上皮細胞を培養する時には、コラーゲン基質か、フィブロネクチン基<br />質のコーティングが不可欠で、プラスチック基質上では、細胞は直ちに培養器<br />より剥がれ、維持できなかった。このことは、脱分化、分化転換を促進する試<br />薬であるフェニルチオウレアとヒアルロニダーゼが、細胞-細胞外基質接着を<br />その標的として作用していることを強く推察させる。この結果は、色素上皮細<br />胞の分化形質発現の安定化には細胞外基質の作用が不可欠であり、その変化が<br />水晶体細胞への分化転換に深く関わっているという江口らの見解を裏付けるも<br />のである。<br /> 色素上皮細胞の長期間の無血清培養システムが確立し、無血清条件下の分化<br />転換が成功したことは、細胞分化形質の安定性と転換性の分子機構を研究する<br />上で極めて意義深いと考える。 | |||||
所蔵 | ||||||
値 | 有 | |||||
フォーマット | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | application/pdf |