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/\u003eの発熱により自己熱分解が可能で、「自燃性を有する」と言われる。また、密度が約1.3g/cm\u003csup\u003e3\u003c/sup\u003eと\u003cbr /\u003e高密度で優れていること、可燃限界圧が約6気圧で、常圧では燃焼せず安全であること、高エ\u003cbr /\u003eネルギー物質とはいえ、ゴム材であるので火薬指定されておらず、運搬、貯蔵などの運用コス\u003cbr /\u003eトが大幅に低減されること、がメリットとして挙げられる。GAPは高い燃焼速度で自己熱分解\u003cbr /\u003eし、燃料過多の低燃焼温度のガスを排出する。このため、ガスジェネレータ(GG)用の燃料と\u003cbr /\u003eして有望視されている。また、従来の不活性ポリマと比較して完全燃焼させるのに必要な酸素\u003cbr /\u003e量を軽減することが可能であるため、ハイブリッドロケット用の固体燃料としての利用も期待\u003cbr /\u003eされている。GAPはポリマの末端水酸基(OH基)の数によってdi-ol、tri-ol、tetra-ol GAPの3\u003cbr /\u003e種類が存在する。Tetra-ol GAPは従来のdi-ol GAPと比較すると、硬化に架橋剤が不要であり、\u003cbr /\u003e機械的特性が良く燃焼残渣も比較的少ない。また、硬化状態でGAPの含有率が向上するため、\u003cbr /\u003eより高エネルギーである。従って、Tetra‐ol GAPは従来のGAPに比べ、GG用燃料やハイブリッ\u003cbr /\u003eドロケット用燃料としてより適している。これらの燃料としてGAPを用いるためには、GAPの\u003cbr /\u003e燃焼特性を詳細に把握する必要がある。GAPの自己熱分解は、アジド基の分解に伴う急激な発\u003cbr /\u003e熱や、燃料過多組成に起因する燃焼残渣の発生、といった複雑な反応系を有していることから、\u003cbr /\u003e先行研究の実験データには、ばらつきが多く信頼できるデータが少ない。過去にBecksteadらが\u003cbr /\u003eGAPの燃焼のモデル化を行っているが、GAPの燃焼に多く発生する燃焼残渣についての記述が\u003cbr /\u003e不十分であり、GAP特有の高燃焼速度、圧力依存性や、温度場を表現できていない。したがっ\u003cbr /\u003eて、GAPの燃焼機構については依然として不明な点が多く、詳細な反応機構が明確にされてい\u003cbr /\u003eない。そこで、本研究は、信頼性のあるデータの蓄積を行い、燃焼残渣の分析などを通して、\u003cbr /\u003eGAPの燃焼機構の構築を行うことを第一の目的とする。\u003cbr /\u003e 近年、安全性が高く、安価で、環境負荷が少ない新しいロケットとしてハイブリッドロケッ\u003cbr /\u003eトが注目されているが、性能は固体並で運用の煩雑さは液体並という点から、「固体と液体の悪\u003cbr /\u003eい点を併せ持つロケット」と評され、実用には至ってこなかった。そこで本研究では、従来の\u003cbr /\u003eハイブリッドロケットの問題点を根本から解決できるハイブリッドロケットシステムとして、\u003cbr /\u003eGAPの有する高性能(自燃性、高密度など)、高い安全性に着目し、GAPをGGとして利用し\u003cbr /\u003eたガスハイブリッドロケットを提案している。ガスハイブリッドロケットは、固体燃料の燃焼\u003cbr /\u003e圧を用いて酸化剤を加圧するため、従来のような重く複雑な酸化剤噴射システムが不要であり\u003cbr /\u003e構造的に単純になる。また、酸化剤と、固体燃料からの不完全燃焼ガスを二次燃焼室で混合拡\u003cbr /\u003e散させて完全燃焼させるため、高い燃焼効率を得ることが可能であり、高比推力、低環境負荷\u003cbr /\u003eの理想的な推進システムが実現できる。そこで、本研究では、GAPの燃焼ガスと酸素を用いて、\u003cbr /\u003e混合比、燃焼室形状などをパラメータとした燃焼実験を行い、GAPガスハイブリッドロケット\u003cbr /\u003eの燃焼特性を把握し、本ロケットシステムの設計指針の取得を第二の目的とする。\u003cbr /\u003e まず、GAPの燃焼モデル構築に必要な各基礎燃焼実験を示した。特に、燃焼周囲圧力が5MPaで約14mm/secという高い燃焼速度であること、圧力指数が0.44であり燃焼速度が圧力に強く依存していることを明らかにした(一般的な固体推進薬では5MPaで約7mm/sec、圧力指数は0.35である)。また、線径2.5μmのS型超極細熱電対を用いて温度場を測定し、最終到達温度と断熱火炎温度の間に1〜10MPaの圧力領域にて約400Kの違いがあることを明らかにした。燃焼残渣の解析では、1〜10MPaでは高粘度成分の燃焼残渣(High Viscosity Material : HVR)と黒いスス状の燃焼残渣の2種類が発生することを、また7MPa以上の高圧領域ではさらに黄色い燃焼残渣も発生することを確認した。赤外分光により、HVRはわずかにアジド基(‐N\u003csup\u003e3\u003c/sup\u003e原子団)を有しており、黄色い燃焼残渣はHVRとほぼ同成分であることがわかった。これらの結果から、HVRは溶融したGAPからアジド基が脱離したものであり、黄色い燃焼残渣はHVRの分子鎖が小さくなったオリゴマ(低重合体)であることが示唆された。\u003cbr /\u003e 各種実験結果を基にGAPの燃焼を固相、気液2相領域、気相領域の2相3領域に分け1次元\u003cbr /\u003e的にモデル化を試みた。また、本モデルで考慮されている気液2相、気相中での化学反応、支\u003cbr /\u003e配方程式について示した。固相中は予熱帯で化学反応は考慮されず、気液2相中ではボイド率\u003cbr /\u003e\u0026Phi;が固体表面からの距離とともに変化し、固相と気液2相の境界で\u003ci\u003e\u0026Phi;=0\u003c/i\u003e、気液2相と気相の境\u003cbr /\u003e界で\u003ci\u003e\u0026Phi;=1\u003c/i\u003eと定義した。気液2相中の現象は、液相・固相それぞれの寄与を重ね合わせた形を1\u003cbr /\u003e次元で記述した。燃焼反応モデルの数値計算にはCHEMKINを改造したものを用いた。本モデ\u003cbr /\u003eルの計算結果は、温度の立ち上がりと最終到達温度が実験結果に一致せず、線燃焼速度も実験値に比べ非常に高くなった。これはGAPの不完全燃焼性が反映されていないためと考え、GAP\u003cbr /\u003eから発生する燃焼残渣の挙動をモデルに取り入れた。GAPの燃焼では燃焼残渣が熱エネルギー、化学エネルギーを持ち去ると考え、ボイド率をパラメータ化したBlow Off Mechanismをモデルに適用した。これにより、温度履歴の立ち上がり、最終到達温度は実験値と良く合い、線燃焼\u003cbr /\u003e速度と圧力依存性もよく再現出来た。\u003cbr /\u003e 次にガスハイブリッドロケットの燃焼実験装置を示し、燃焼実験から得られた燃焼特性につ\u003cbr /\u003eいて示した。まず、GAPのGG試験として単体で\u0026Phi;60mm、\u0026Phi;80mmモータの燃焼実験を行った。\u003cbr /\u003eどちらのモータでも燃焼特性に差異は見られなかった。燃焼効率は70〜85%の範囲にあり、燃\u003cbr /\u003e焼圧力が低い領域では燃焼効率が低下し、圧力が高くなるにつれて上昇傾向にあることがわか\u003cbr /\u003eった。 次に、\u0026Phi;80mmモータに二次燃焼器を付設し、ガス酸素を用いてガスハイブリッドロケッ\u003cbr /\u003eトとして作動させた。本実験では二次燃焼室の燃焼効率が98%に達し、高い燃焼効率を得た。\u003cbr /\u003e推力の制御方法については、性能計算の結果から、酸素の質量流量を変化させ推力を制御する\u003cbr /\u003e方法と、GAPの燃焼速度を組成の工夫により制御し、異種の組成の組み合わせにより発生ガス\u003cbr /\u003e量を変化させ推力を制御する方法を提案した。ガス酸素の質量流量を変化させたところ、二次\u003cbr /\u003e燃焼圧力は非常に良い応答を示し、酸化剤と燃料の混合比の急激な変化による燃焼振動は観測されなかった。これにより酸素の質量流量変化による推力制御が可能であることを実証した。\u003cbr /\u003eさらに、GAPに質量割合30%のポリエチレングリコール(Polyethlene 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GAPの燃焼に関する研究-燃焼機構の解明とハイブリッドロケットへの応用-
https://ir.soken.ac.jp/records/1421
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名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2010-03-24 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | GAPの燃焼に関する研究-燃焼機構の解明とハイブリッドロケットへの応用- | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者名 |
和田, 豊
× 和田, 豊 |
|||||
フリガナ |
ワダ, ユタカ
× ワダ, ユタカ |
|||||
著者 |
WADA, Yutaka
× WADA, Yutaka |
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学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 総合研究大学院大学 | |||||
学位名 | ||||||
学位名 | 博士(工学) | |||||
学位記番号 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 総研大甲第1229号 | |||||
研究科 | ||||||
値 | 物理科学研究科 | |||||
専攻 | ||||||
値 | 11 宇宙科学専攻 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2009-03-24 | |||||
学位授与年度 | ||||||
2008 | ||||||
要旨 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 近年、高エネルギーポリマの開発が進み、分子構造中にアジド基(N<small>3</small>基)を有する多様な高分<br />子化合物が合成されている。このようなアジ化ポリマの中でGlycidyl Azide Polymer(GAP)が注<br />目されている。GAPは基本的にポリエーテルで、分子内に酸素分子を有する。繰り返し単位内<br />に1つずつ存在するアジド基は分解の際に窒素分子を放出し多量の熱を放出する。GAPは、こ<br />の発熱により自己熱分解が可能で、「自燃性を有する」と言われる。また、密度が約1.3g/cm<sup>3</sup>と<br />高密度で優れていること、可燃限界圧が約6気圧で、常圧では燃焼せず安全であること、高エ<br />ネルギー物質とはいえ、ゴム材であるので火薬指定されておらず、運搬、貯蔵などの運用コス<br />トが大幅に低減されること、がメリットとして挙げられる。GAPは高い燃焼速度で自己熱分解<br />し、燃料過多の低燃焼温度のガスを排出する。このため、ガスジェネレータ(GG)用の燃料と<br />して有望視されている。また、従来の不活性ポリマと比較して完全燃焼させるのに必要な酸素<br />量を軽減することが可能であるため、ハイブリッドロケット用の固体燃料としての利用も期待<br />されている。GAPはポリマの末端水酸基(OH基)の数によってdi-ol、tri-ol、tetra-ol GAPの3<br />種類が存在する。Tetra-ol GAPは従来のdi-ol GAPと比較すると、硬化に架橋剤が不要であり、<br />機械的特性が良く燃焼残渣も比較的少ない。また、硬化状態でGAPの含有率が向上するため、<br />より高エネルギーである。従って、Tetra‐ol GAPは従来のGAPに比べ、GG用燃料やハイブリッ<br />ドロケット用燃料としてより適している。これらの燃料としてGAPを用いるためには、GAPの<br />燃焼特性を詳細に把握する必要がある。GAPの自己熱分解は、アジド基の分解に伴う急激な発<br />熱や、燃料過多組成に起因する燃焼残渣の発生、といった複雑な反応系を有していることから、<br />先行研究の実験データには、ばらつきが多く信頼できるデータが少ない。過去にBecksteadらが<br />GAPの燃焼のモデル化を行っているが、GAPの燃焼に多く発生する燃焼残渣についての記述が<br />不十分であり、GAP特有の高燃焼速度、圧力依存性や、温度場を表現できていない。したがっ<br />て、GAPの燃焼機構については依然として不明な点が多く、詳細な反応機構が明確にされてい<br />ない。そこで、本研究は、信頼性のあるデータの蓄積を行い、燃焼残渣の分析などを通して、<br />GAPの燃焼機構の構築を行うことを第一の目的とする。<br /> 近年、安全性が高く、安価で、環境負荷が少ない新しいロケットとしてハイブリッドロケッ<br />トが注目されているが、性能は固体並で運用の煩雑さは液体並という点から、「固体と液体の悪<br />い点を併せ持つロケット」と評され、実用には至ってこなかった。そこで本研究では、従来の<br />ハイブリッドロケットの問題点を根本から解決できるハイブリッドロケットシステムとして、<br />GAPの有する高性能(自燃性、高密度など)、高い安全性に着目し、GAPをGGとして利用し<br />たガスハイブリッドロケットを提案している。ガスハイブリッドロケットは、固体燃料の燃焼<br />圧を用いて酸化剤を加圧するため、従来のような重く複雑な酸化剤噴射システムが不要であり<br />構造的に単純になる。また、酸化剤と、固体燃料からの不完全燃焼ガスを二次燃焼室で混合拡<br />散させて完全燃焼させるため、高い燃焼効率を得ることが可能であり、高比推力、低環境負荷<br />の理想的な推進システムが実現できる。そこで、本研究では、GAPの燃焼ガスと酸素を用いて、<br />混合比、燃焼室形状などをパラメータとした燃焼実験を行い、GAPガスハイブリッドロケット<br />の燃焼特性を把握し、本ロケットシステムの設計指針の取得を第二の目的とする。<br /> まず、GAPの燃焼モデル構築に必要な各基礎燃焼実験を示した。特に、燃焼周囲圧力が5MPaで約14mm/secという高い燃焼速度であること、圧力指数が0.44であり燃焼速度が圧力に強く依存していることを明らかにした(一般的な固体推進薬では5MPaで約7mm/sec、圧力指数は0.35である)。また、線径2.5μmのS型超極細熱電対を用いて温度場を測定し、最終到達温度と断熱火炎温度の間に1〜10MPaの圧力領域にて約400Kの違いがあることを明らかにした。燃焼残渣の解析では、1〜10MPaでは高粘度成分の燃焼残渣(High Viscosity Material : HVR)と黒いスス状の燃焼残渣の2種類が発生することを、また7MPa以上の高圧領域ではさらに黄色い燃焼残渣も発生することを確認した。赤外分光により、HVRはわずかにアジド基(‐N<sup>3</sup>原子団)を有しており、黄色い燃焼残渣はHVRとほぼ同成分であることがわかった。これらの結果から、HVRは溶融したGAPからアジド基が脱離したものであり、黄色い燃焼残渣はHVRの分子鎖が小さくなったオリゴマ(低重合体)であることが示唆された。<br /> 各種実験結果を基にGAPの燃焼を固相、気液2相領域、気相領域の2相3領域に分け1次元<br />的にモデル化を試みた。また、本モデルで考慮されている気液2相、気相中での化学反応、支<br />配方程式について示した。固相中は予熱帯で化学反応は考慮されず、気液2相中ではボイド率<br />Φが固体表面からの距離とともに変化し、固相と気液2相の境界で<i>Φ=0</i>、気液2相と気相の境<br />界で<i>Φ=1</i>と定義した。気液2相中の現象は、液相・固相それぞれの寄与を重ね合わせた形を1<br />次元で記述した。燃焼反応モデルの数値計算にはCHEMKINを改造したものを用いた。本モデ<br />ルの計算結果は、温度の立ち上がりと最終到達温度が実験結果に一致せず、線燃焼速度も実験値に比べ非常に高くなった。これはGAPの不完全燃焼性が反映されていないためと考え、GAP<br />から発生する燃焼残渣の挙動をモデルに取り入れた。GAPの燃焼では燃焼残渣が熱エネルギー、化学エネルギーを持ち去ると考え、ボイド率をパラメータ化したBlow Off Mechanismをモデルに適用した。これにより、温度履歴の立ち上がり、最終到達温度は実験値と良く合い、線燃焼<br />速度と圧力依存性もよく再現出来た。<br /> 次にガスハイブリッドロケットの燃焼実験装置を示し、燃焼実験から得られた燃焼特性につ<br />いて示した。まず、GAPのGG試験として単体でΦ60mm、Φ80mmモータの燃焼実験を行った。<br />どちらのモータでも燃焼特性に差異は見られなかった。燃焼効率は70〜85%の範囲にあり、燃<br />焼圧力が低い領域では燃焼効率が低下し、圧力が高くなるにつれて上昇傾向にあることがわか<br />った。 次に、Φ80mmモータに二次燃焼器を付設し、ガス酸素を用いてガスハイブリッドロケッ<br />トとして作動させた。本実験では二次燃焼室の燃焼効率が98%に達し、高い燃焼効率を得た。<br />推力の制御方法については、性能計算の結果から、酸素の質量流量を変化させ推力を制御する<br />方法と、GAPの燃焼速度を組成の工夫により制御し、異種の組成の組み合わせにより発生ガス<br />量を変化させ推力を制御する方法を提案した。ガス酸素の質量流量を変化させたところ、二次<br />燃焼圧力は非常に良い応答を示し、酸化剤と燃料の混合比の急激な変化による燃焼振動は観測されなかった。これにより酸素の質量流量変化による推力制御が可能であることを実証した。<br />さらに、GAPに質量割合30%のポリエチレングリコール(Polyethlene glycol:PEG)を添加すると、<br />GAPの燃焼速度は1/10に低下するなど、PEGの添加によりGAPの燃焼速度が抑制されること<br />を示した。この低燃焼速度の燃料を用いてΦ80mmモータによるGG試験を実施し、安定した長<br />秒時燃焼が可能であることを確認した。また、PEGを添加した燃料を用いたガスハイブリッド<br />ロケットの燃焼試験を通じ、推力制御に関する知見を得た。<br /> 本論文では、GAPの不完全燃焼性の要因として多量に発生するすべての燃焼残渣に着目し、<br />GAPの燃焼残渣の発生量を定量化するなどの詳細な分析を行った。その結果を基に、GAP燃焼<br />をモデル化し、燃焼残渣の振る舞いをBlow Off Mechanismとして表現することで、燃焼残渣が<br />GAPの燃焼に大きな影響を与えていることを示した。さらに、Blow Off Mechanismのパラメー<br />タであるクリティカルボイド率Φ<small>cr</small>と、GG試験の燃焼効率の関係について考察し、詳細反応計算<br />の結果からGAP系燃料を用いたGG試験の比推力などの性能を推算できることを示唆した。ガス<br />ハイブリッドロケットについては、酸化剤流量制御と燃料流量制御の両方で推力制御が実現で<br />きることから、最終的には両者の組み合わせにより非常に幅広い推力制御が可能になることを<br />実証した。これより、GAPを用いたガスハイブリッドロケットの実用化の可能性を強く示した。 | |||||
所蔵 | ||||||
値 | 有 |