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アイテム
多重極限下赤外反射分光法の開発と擬二次元有機超伝導体の電子状態
https://ir.soken.ac.jp/records/242
https://ir.soken.ac.jp/records/242fbff1f15-b1c5-41c5-b2cb-8d6b0f1e8da1
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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要旨・審査要旨 (393.3 kB)
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2010-02-22 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 多重極限下赤外反射分光法の開発と擬二次元有機超伝導体の電子状態 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者名 |
西, 龍彦
× 西, 龍彦 |
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フリガナ |
ニシ, タツヒコ
× ニシ, タツヒコ |
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著者 |
NISHI, Tatsuhiko
× NISHI, Tatsuhiko |
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学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 総合研究大学院大学 | |||||
学位名 | ||||||
学位名 | 博士(理学) | |||||
学位記番号 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 総研大甲第920号 | |||||
研究科 | ||||||
値 | 物理科学研究科 | |||||
専攻 | ||||||
値 | 07 構造分子科学専攻 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2006-03-24 | |||||
学位授与年度 | ||||||
値 | 2005 | |||||
要旨 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | <br />1.序論<br />擬二次元有機超伝導体<sub>K</sub>(BEDT-TTF)<sub>2</sub>X (X=Cu[N(CN)<sub>2</sub>]Br,Cu[N(CN)<sub>2</sub>]Cl etc.)<br />は基底状態で超伝導と反強磁性絶縁体が隣接するモット転移の境界の極近傍に位置し<br />ており、銅酸化物高温超伝導体との類似性などから、様々な物性が盛んに研究されて<br />いる強相関物質群である。本研究で対象としたX=Cu[N(CN)<sub>2</sub>]Br(Tc=11.6K)は、<br />温度・圧力・磁場などの外部摂動や冷却速度を変化させることにより磁性・非磁性、<br />金属・非金属・超伝導が入り混じった複雑な相変化を示す。赤外分光により電子状態<br />の変化に関する知見を得、物性の起源にせまることが本研究の目的である。<br /> <sub>K</sub>-(BEDT-TTF)<sub>2</sub>Cu[N(CN)<sub>2</sub>]Br(以降<sub>K</sub>-Brと略す)は、以下の4種類の超伝導一反<br />強磁性絶縁体転移(SC-AFI転移)を示す。<br />1.BEDT-TTF分子の8個の水素基を重水素化、<br />2.80K付近の急冷(75%重水素化したもの(d[3,3]))、<br />3.磁場の印加(50%重水素化したもの(d[2,2]))、<br />4.静水圧(100%重水素化したもの(d[4,4])<br />である。<br />これらの転移の起源については、1、2、4は構造上の変化によるものであり、一見同じ<br />ように見えるが、4がバンド幅を直接制御し、1も同じくバンド幅を制御していると<br />考えられ、2はバンド幅制御の可能性が高いがポテンシャルの乱れの可能性も否定出<br />来ない。そして3は、他と全く適うメカニズムであると考えられる。このように多彩<br />なSC-AFI転移は、電子相関効果研究の格好の舞台となる。さらに、SC-AFI転移近傍<br />で、原因は不明であるがμmサイズという大きな空間的相分離の可能性が考えられてい<br />た。そのように大きな反強磁性ドメインが超伝導相の中からどのように現れ、広がっ<br />ていくのか(或いはその逆の過程も)ということも非常に興味深く、その変化を追う<br />ことで電子相関に関する重要な情報が得られる可能性があった。<br /> 以上のように、<sub>K</sub>-Brはちょうど相境界付近に位置し、電子状態がわかる光学スペク<br />トルで、このドメインを直接観測できる可能性があった。しかし、低輝度な黒体幅射<br />光源を用いた従来の装置では全体の平均的な悟報しか得られない為に、転移近傍の物<br />性に関する研究は行われてこなかった。また、圧力・磁場などの外部摂動を加えた研<br />究も、技術的困難さからほとんど行われていなかった。<br /> 以上を踏まえて、本研究では静水圧・高磁場・低温下でのモット転移近傍における<br />電子状態の変化を調べ、相分離の直接観測と起源を特定する為に、高輝度放射光を用<br />いた多重極限下赤外分光法を開発し、<sub>K</sub>-[n,n]-Br,(n=0,2,3,4)の光反射測定と2次<br />元実空間イメージング測定を行った。<br /><br />2.実験手法<br /> 微小試料及び微小領域の低温・磁場・静水圧下での測定を行う為に、高輝度な赤外<br />放射光を用いた多重極限下醸微赤外分光法を開発した。<br />SPring-8に赤外ビームライン(BL43IR)が立ち上がったのを期に、顕微赤外磁気<br />光学測定が可能な装置を建設した。この装置は、顕微鏡・超伝導マグネット・Heフロ<br />ー型クライオスタツトを組み合わせたものであり、最低温度3.5K、最大磁場14T、空<br />間分解能11μm(ピンホール有)での測定が可能になった。さらに、この装置にはダイ<br />ヤモンドアンビルセル(DAC)を装着することが可能であり、圧力も加えられる多重<br />極限下での反射測定が可能になった。本装置のテストとして、低温・磁場・圧力下で<br />複雑な相変化を示す強相関4f電子系物質のCeSbの電子状態を調べた。P=4GPaで磁<br />場と温度を変化させることにより、磁気相図に対応した変化が、反射率や光学伝導度<br />スペクトル上に擬ギャップ等の構造として観測された。これは世界初の多重極限環境<br />下での赤外分光の例である。<br /> 他方で、<sub>K</sub>-Brの圧力下での相転移に必要な10MPa以下の圧力下の測定を行う為に、<br />新たにガス式圧力セルを開発し、BL43IR及び汎用顕微赤外装置に導入した。開発した<br />ガス式圧力セルは18MPaまでの圧力を外部から連続的に制御することが出来る。圧力<br />媒体にヘリウムガスを用いることで、DACで心配される低温での圧力媒体の体積変化<br />を気にすることなく測定が可能になった。<br /> また、本研究の2次元イメージング測定は、FT-IRとサンプルステージを連動させ<br />てサンプル表面を走査しながらスペクトルを測定する手法であるが、試料上の最大961<br />点(31x31点)からのスペクトルを採る必要がある。測定・解析共に非常に時間が必<br />要であるため、LabVIEWを用いた測定・解析プログラムの開発も行った。<br /><br />3.測定結果と考察<br /> 試料は、東元大学鹿野田グループの宮川らにより電解法を用いて作成された<br /><sub>K</sub>-d[n,n]-Br,(n=0,2,3,4)の単結晶を用いた。冷却速度依存性は、90K~70Kまでを<br />17K/min(急冷)、0.05K/min(徐冷)の2種類で冷却した。二次元イメージング測定<br />は、約300μm四方の領域を12μmステップで走査し(ピンホール無)、得られた赤外<br />反射スペクトルの870cm<sup>-1</sup>~ 5000cm<sup>-1</sup>までの重心、または電子状態と強くカップリ<br />ングした<sub>V3</sub>(ag)モードの波数に注目して解析を行った。以下に各測定結果を示す。<br /> <br /> 1.重水素化率・2.冷却速度依存性<br /> すべての物質で、T=50K,B=OT,P=OMPaでは冷却速度、重水素置換量に関わらず<br />均質な絶縁体(PI相に対応)であることが観測された。一方で、4Kでは重水素化率<br />によって相変化が見られた。d[0,0]は急冷・徐冷とも均一な金属(SC相に対応)、d[4,4]<br />は急冷・徐冷とも均質な絶縁体(AFI相に対応)が観測された。部分的に重水素化し<br />た試料では、d[2,2]では徐冷で均質な金属であることが観測されたが、急冷で金属と絶<br />縁体の空間分布(相分離)が観測された。d[3,3]は、急冷・徐冷とも、金属・絶縁体の<br />相分離が観測された。<br /> 以上の結果は、電気抵抗や磁化率で見られた相転移の傾向と一致している。均質な<br />T=50Kを基準とすると、各測定点で重心の変化量はほぼ同じであった。また、この相<br />分離の空間分布には再現性が観測された。このことは、結晶中の微小な歪みが、相の<br />空間分布に影響していることを示している。また、分離した相のドメインサイズは、<br />得られた統計結果に幅があることから顕微鏡の空間分解能(約2μm、ピンホール無)<br />よりずっと小さいということは無く、モデル計算からμm程度であると考えられる。<br /> <br /> 3.磁場依存性<br /> d[2,2]の試料では、B=5Tの磁場印加により超伝導→絶縁体転移が観測された。こ<br />れは電気抵抗の測定結果と対応する。ところがB=10Tまで磁場を上げると逆に絶縁<br />体から金属への転移が観測された。これは電気抵抗など、これまでの巨視的な測定で<br />は報告されていない結果である。高磁場により再びモット転移境界を超えた可能性が<br />ある。<br /> <br /> 4.圧力依存性<br /> d[4,4]を0.7K/minで冷却すると、温度5KではAFI相にあることが知られている。<br />この物質に圧力をかけることによって超伝導状態へ転移するが、その過程の電子状態<br />の変化を調べた。圧力印加によって、絶縁相から超伝導相への転移と相の分布が明確<br />に観測された。 | |||||
所蔵 | ||||||
値 | 有 |