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アイテム
水素-電子結合系における物性に関する研究
https://ir.soken.ac.jp/records/256
https://ir.soken.ac.jp/records/2561c9f5761-81ee-46f9-b16e-71a8187a10bb
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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要旨・審査要旨 / Abstract, Screening Result (396.0 kB)
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本文 / Thesis (16.5 MB)
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2010-02-22 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 水素-電子結合系における物性に関する研究 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | Studies of Electron-Proton Interractions inSolids | |||||
言語 | en | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者名 |
岡庭, 香
× 岡庭, 香 |
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フリガナ |
オカニワ, カオル
× オカニワ, カオル |
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著者 |
OKANIWA, Kaoru
× OKANIWA, Kaoru |
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学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 総合研究大学院大学 | |||||
学位名 | ||||||
学位名 | 博士(理学) | |||||
学位記番号 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 総研大甲第11号 | |||||
研究科 | ||||||
値 | 数物科学研究科 | |||||
専攻 | ||||||
値 | 08 機能分子科学専攻 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 1992-03-16 | |||||
学位授与年度 | ||||||
値 | 1991 | |||||
要旨 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 固体物性における水素結合の重要性はこれまでに様々なところで議論されてきたが、その研究は静的な性質に関するものが多く、動的な性質に関しては未解決の問題が多く残されていた。本研究論文は、水素結合中の水素(プロトン)の静的な問題ばかりでなく動的、さらには電子との相互作用によって誘起される新たな性質について、実験的立場から検討すること、および水素結合を利用した固体物性の制御、新しい機能性をもつ分子システムの基礎的知見を得ることを目的としている。以下に本論文の構成にしたがって要点をまとめる。 第1章は序論として水素結合のこれまでの研究について述べてある。水素結合はHugginsにより1920年頃に導入された分子間力に関する概念である。初期の理論では、静電的な相互作用のみが水素結合に寄与しているとされていたが、1950年代にMullikenにより水素結合が2分子間の電子移動にも寄与している可能性が指摘され、後にこのことは実験的に確認された。このような背景をもとに、水素結合している2つの分子は電荷移動(CT)錯体と全く同じ思想のものであると議論されている。また水素結合に関する赤外振動スペクトルは、水素結合をX-H・・・Yと書いたときにX-Hの振動とX・・・Yの振動が結合したものとして議論されている。この解析は気相と液相ではある程度の定性的な解釈を与えているが、固体内における強い水素結合に関してはほとんど成功していない。 このような状況のもとで、三谷らはキンヒドロン結晶において赤外分光法により水素結合と系の電子状態が極めて強く関係し合っていることを見出した。この事実は水素結合を用いて固体の電子状態を制御しうる可能性があることを示唆している。この考え方に基づいてこれまでにいくつかの物性開拓がなされているが、本研究はこれらの研究に続くものである。 第2章にはあとの章で度々参照される1次元物質の一般的性質に関する既成の理論の概略を述べている。 第3章では擬1次元ハロゲン架橋金属錯体における赤外振動スペクトルの解析により、この物質に特有な混合原子価状態が、鎖間の水素結合に強く影響されていることを明らかにしている。この物質群は1次元のモデル物質として幅広く理論、実験両面から研究されているが、これまでの研究では系の物性が1次元鎖上の金属、架橋ハロゲンの変位によってのみ決定されているという立場から、水素結合や配位子の効果は考慮に入れられていなかった。鳥海らはある一連の錯体に関して、混合原子価状態の位相が隣り合う鎖間で一致していることをX線構造解析によって明らかにした。このことは鎖間に水素結合を介した電子的な相互作用が存在していることを実証している。 これら鎖間に秩序のある錯体について極低温での水素振動スペクトルを見ると、NHと帰属される2つのピークが著しく先鋭化し、そのピークは鎖軸と垂直な方向に強く偏向していることが分かった(Hvバンド)。このNH振動に関して赤外活性な振動モードは2種類あり、一つは鎖軸に平行、一つは垂直な方向の偏光依存性をもつ。鎖軸に垂直な偏光の場合、水素が光の電場によって振動させられると、配位子の窒素原子の上に電荷のゆらぎが誘起され、大きな双極子モーメントをもった振動子が生じる。窒素原子は金属と配位結合しているので、Hvバンドの波数は金属の原子価数に強く依存することになる。これまでにX線構造解析とXPSから架橋ハロゲンのずれと混合原子価状態の間に線形の関係が示されている。同様の比較をHvバンドの分裂の大きさと架橋ハロゲンのずれに対してみると、やはり線形の関係が得られ、Hvバンドの分裂が確かに混合原子価状態を表していることを見出した。 第4章ではカラム間に水素結合をもつ分離積層型CT錯体、1,6-ジアミノビレン(DAP)-TCNQについて考察している。この物質は室温での電気伝導度が高い(10S/cm)にもかかわらず、その活性化エネルギーが大きい(0.24eV)という極めて特異的な電気伝導性を示す。また、このように常温での伝導性が高い割には電気伝導度の異方性が小さく積層軸方向と水素結合方向は1桁しか伝導度が違わないという特徴をもつ。赤外のCN振動、X線構造解析によるとDAP-TCNQの電荷移動量ρは1に非常に近いと考えられる。また粉末の電子吸収スぺクトルを見ると、1eV付近にCT遷移に帰属される吸収がみられ、電子相関が重要なMott-Hubbard的な描像でとらえることができる。またDAP-TCNQの室温における電気伝導度はK-TCNQのそれと比べてみると、7桁以上も大きい値を示す。このことはDAP-TCNQがintrinsicなキャリアーをもっているためと考えられ、DAP-TCNQのρは1に非常に近いが1より僅かに小さいことが推定される。赤外の偏光反射スペクトルの測定から1次元格子系が二量体化していく傾向が観測された。また偏光反射スペクトルによれば、DAP-TCNQでは上で述べたCT励起と帰属される1eV付近のバンドの低エネルギー側に二つの電子的な遷移と考えられるバンドが観測された。このような低エネルギーのバンドはK-TCNQには見られないものである。すなわちこの二つのバンドはHubbardギャップの間に生じたミッドギャップ状態の存在を示唆している。DAP-TCNQのように電子相関の強い1次元系で、このようなミッドギャップ状態が見られたということはこれまでに例がなく、また非常に興味深いことである。 DAP-TCNQの特異的なρは、電子の非局在性が水素結合によりカラム間にも生じていることに起因すると推察される。同時にこの水素結合の効果は、電気伝導の異方性が小さいことの原因となっている可能性が高い。 第5章では中性分子性結晶DTPP(1,4-dithioketo-3,6-diphenyl-pyrrolo-[3,4]-pyrrole)を研究対象とし、水素結合が光伝導性に対してどのような効果をもたらすかということを議論している。この物質は分子内にドナー性部分とアクセプター性部分をもっており、結晶では積層軸方向(b軸)にCT相互作用、それと垂直方向(c軸)には水素結合がN-H・・・Sの形で存在する。また分子面はb軸に対してほぼ垂直に積層している。偏光反射スペクトルは、c軸に強く偏向した分子内遷移と考えられる構造が見られる。この構造とは別にc,b軸に平行な偏光に対し、近赤外領域に弱い構造が観測される。また光伝導のスペクトルを見ると、それぞれの照射光の偏光に対し、反射スペクトルに弱い構造が存在する低いエネルギー領域から非常に効率のよい光伝導が観測される。このことから、偏光反射スペクトルで見られた低エネルギーの弱い構造は分子間のCT励起である可能性が高い。また積層軸のみならず水素結合の方向(c軸)にも同程度の大きさの光電流が観測され、これには水素結合の寄与が大きいと考えられる。また光電流の電場強度依存性から、水素結合の動的挙動に起因するCT励起子の自動イオン化が起こっている可能性が指摘されている。 第6章では本研究で得られた成果を総括している。水素結合は基本的には分子間引力、電子系との静電的な相互作用、電荷移動相互作用に分けられるが、これらから誘起される効果は非常に多彩である。このように水素結合を用いた新しい物性の開拓は大いなる可能性に満ちている。本研究論文はその可能性の一部を示したに過ぎないが、これからの展開の上で非常に重要な効果を具体的に示した点に意義があると思われる。 |
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所蔵 | ||||||
値 | 有 | |||||
フォーマット | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | application/pdf | |||||
著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | AM | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa |